1-2 神と白い空間
『昔々あるところに。ってね』
刹那、視界は白く染まる。
俺は白い空間にいた。そこは無限に広がる空間だった。直立しているが、本当に立っているのかも怪しい。
俺は5分ほど真っ直ぐ歩いた。が景色は全く変わらず、今度は本当に歩いていたのか不安になった。
(どうしたものか……)
腰を下ろして少し休憩することにした。
(俺がここにいるってことは、他の奴らも同様にこの空間にいるのか?)
「やっと落ち着いたかい?」
唐突に後ろから声をかけられる。変な声はあげなかったものの勢いよく振り返る。
その反動で首を痛めてしまったのは内緒にしておこう。
「だれ?見たいな顔をしているね。僕は…」
「神様だよ」「神様だろ?」
後ろにいる少年。もとい神様は少し驚いた表情をしていた。
いや、驚くほどじゃないでしょ。状況を考えなさいよ。神様以外考えられないでしょうが。
「あまり驚いてないんだね」
「驚く?あんたが神様ってことにか?それともこの空間のことにか?それとも転生のことにか?」
「全部だよ。君はこんな訳のわからないことになってるのに随分冷静だね」
「訳のわからないことって自覚してるなら、こんな茶番はやめてほしかったね」
俺は立ち上がってお尻の汚れを叩く。いや、汚れてるかわからないけどとりあえず叩いてみた。
「茶番?何を言ってるんだい?君はこんな展開を望んでいたじゃないか。だから僕が手を貸してあげたのに」
「は?だったらこの3000人弱を巻き込んだ異世界転生は俺のせいって訳か?」
「いや、もともと誰かを転生させなければいけなかったんだけど、ちょうどいいところに異世界に夢見る少年と少女がいたからさ」
「あっそ……。俺と……ん?少年と少女?ってことは、神羅のことか…。あいつ本当に同じこと考えてたのか」
正直、神羅が俺の気を惹くために嘘を付いたのかと思ってたが……自意識過剰だったようだ。俺、ハズ……
「うん、君の思い込みだね!」
「心読んでんじゃねぇぇえええ!」
心を読まれた!さすが神!腐っても神!
「腐ってないし」
また読まれた。だがツッコまないからな。絶対ツッコマまないからな。
「まぁいい。それより、俺らを異世界に呼んだ理由はなんだ?まさか世界を救えとか言うんじゃないだろうな。そんなお願いするならチートをよこせチートを」
俺は異世界転生もののラノベに出てくる「チート」を要求した。
「いや、別に世界を救えなんて思ってないよ。ただの暇つぶしだよ」
…………本当にいたよ。ニート顔負けの暇神が。
暇つぶしに異世界に呼んで、俺たちの行動を監視して楽しむって言う神々の御託か。腹立つな。
「百歩譲って転生はいい。だがこのまま送られても俺ら凡人には何もできないぜ」
「百歩譲って転生はいいんだね。やっぱり君は面白いな」
「まぁなんだかんだ言っても、男の子だし?ハーレムとか英雄とか好きだし?」
俺は厨二病なのかもしれない。いや、違うだろう……。違うと信じたい。
「もちろん。このまま送ったりしないよ。このまま異世界に送っても、速攻でその辺のゴブリンに殺されてBAT ENDだし、女の子なんてオークに犯されて一生オモチャにされるだろうしね」
こいつサラッとエゲツネぇこと言いやがった。ゴブリンに殺されるのは嫌だけど、女の子可哀想過ぎるでしょ。
「君たちにはそれぞれ自分にあった武器と職業。そして初期ステータスを渡すつもりだ」
チートはくれないらしい。期待したのに……。
あれ、待てよ?もし俺に合った職業が農家だったら……武器とか農具とかになるの?シャベルとか鎌とか……。
「まぁ話しは最後まで聞きなよ。当然その程度じゃ満足できないよね?そのために、ある試練を用意しました!」
「し、試練!?」
俺は満面の笑みで、瞳を輝かせながら聞いた。
「な、なんだい?試練がそんなに好きなの?」
「いや、だって、なんかかっこいいじゃん?」
あ、だめだ。終わった。俺は厨二病だ。認めよう。俺は厨二病なのだ。
「君は厨二病だね〜」
「わかってるよ、そんなの!いちいち心の中を読むな!」
こいつに言われると凄い腹がたつのは何故だろう。
「とにかく!その、試練ってやつを教えてくれ」
「それは異世界に行ってからのお楽しみ〜」
誰か神を殴っていい許可をくれ!
「まあまぁ、そんなに怒んないでよ。これから君が行く異世界の説明を始めるからさ」
怒らせてんのはテメェだろ!っていうのは心の中で押さえ込み
「わかった説明してくれ」
素直に聞くことにした。
「うん、任せれたよ。それじゃ、これから向かう異世界についてだけど……」
これから行く異世界は当然、剣と魔法のファンタジーな世界だ。
別にそこで何がして欲しいとかじゃなくて、ただ単に楽しんで生きていけばいいらしい。
でも、楽しい異世界ライフを送る前に試練がある。
その試練は受けても受けなくてもいいが、その試練に合格すると「チート」をくれるらしい。でも、死ぬ可能性もある。
楽しい異世界ライフを送るにはチートは必須アイテムだ!
次に説明されたのはステータスだ。
「向こうの世界では『ステータス』と念じるだけで目の前にステータスが浮かび上がる。少しやってみな」
と言われたのでやってみた。
心の中でステータスを唱えたら目の前に自分のステータスが出てきた。
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《浅見 龍人》
種族:人間
性別:男
年齢:17
職業:
レベル:1
適正魔法:???
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MP:100
攻撃力:100
防御力:100
俊敏力:150
M攻力:100
M防力:100
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《装備》
武器:・
防具:・
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《スキル》
固有:
通常:
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これが俺のステータスだ。敏捷力だけ少し高いのは元の世界で足が速かったかららしい。
ってことは力の強い奴は攻撃力が高いのか。
オール100が初期ステータスと言っていた。
武器や防具、スキルがないのはまだ何もしてないからだ。
魔法適正はそのまま、自分の得意な魔法を表す。魔法を使うときはMPを消費する。
レベルは魔物や人を殺すと手に入る経験値で上がる。
「スキルについてだが、通常スキルは3つしか手に入れる事ができない。レベルアップごとにもらえるスキルポイントを使って取得するんだ。固有スキルはその人の天性の才能の事。天才はいっぱい取得できるが、凡人はゲット取得する事ができない。また、固有スキルはその人だけしか使えないスキルさ。どちらも魔法とは異なりMPを消費しないで使える、とても優れた能力だ」
確かにとても使える。RPGゲームでもMPは命取りになるから使わないで済むならそれに越したことはない。
「装備についてだが、装備は「武器」と「防具」に分かれている」
武器と防具にはそれぞれ階級があるらしく「一般」「希少」「伝説」「神器」「夢幻」と5段階に分かれている。
「一般」はその辺で手に入る武器。
「希少」はモンスターなどが時々ドロップする。
「伝説」は様々な武道を極めし者が手にする数少ない物。
「神器」は簡単には手に入らない。国で保管されていたり「迷宮」の奥深くに眠っている。
「夢幻」は手に入れる方法すらわかっておらず、ある特別な儀式などでしか手に入れることができない。
これが装備についてだ。
「当たり前だがステータスはレベルと比例して上がる。まぁ説明はこんなものかな」
ふむ……長い。とても長い。まぁ何とか理解できたが、正直不安だ。
「それじゃあ、早速転生してもらうね?」
「え!?もう!?ちょっとタンマ!質問とかあるし!」
「いってらっしゃーーーい」
「テメェ!覚えてろよ!」
俺は再び光に包まれ、目の前が真っ白に変わる
はい!次回はちゃんと異世界に飛びます!主人公最強の予感です!
よろしくお願いします。