トライアングル
好きな人ができた。
同じクラス。
接点はたまに話すくらい。
僕は小説が好きで、
君も小説が好きらしい。
今まで、
「趣味なに?」
って聞かれて
「小説読むことかな。」
って言うと
「え?今時小説?」
みたいな目で見られたのに、
彼女は違った。
「良かったら好きな作家、教えて?」
なんてとても優しい笑顔で接してくれて。
女神にさえ見えた。
ずっとひとりでどきどきしてた。
でも、
「俺笠津さんのこと好きなんだよね!」
友達が言い出した。
笠津涼香。僕の好きな人。
「え…?いつから?」
僕は思わず口に出してしまった。
「うーん、一週間くらい前かな!協力してくれよなっ!」
今はもう6月の下旬。
僕が君と会話したのは4月の下旬。
頭の中が真っ暗になった。
「あぁ、もちろん。」
しばらく時間をおいたけど、
それしか言えなかった。
ひとりでずっとかかえてた。
悩んで悩んで、必死に悩みまくった。
そうしてある日
「あ、あの新田くん」
僕の名前を呼ぶ君の声が聞こえた。
「…っ!ど、どうしたの!?」
間があった。
「あのね、新田くん…
私新田くんのことが好きなの!」
なにもかもが真っ白になった気がした。
言いたいことなんて決まってたよ。
(僕も好きだよ。)
でもあとが怖かった。
裏切り者にされるの?
これから僕はひとりなの?
そうなるくらいなら、
この恋を諦めた方がいい。
「 ごめん…
僕、そーゆーの興味ないから。」
精一杯の嘘だった。
君は顔をゆがませて
でも、笑顔で
「返事くれてありがとう!」
そう言ってすぐ背を向けてしまった。
追いかけたかった。
でも幼い僕にはまだなにもできる気がしなかった。
声を押し殺して泣きながら
「さよなら。」
とだけ言った。