8匹目 2
「あ,そう言えばライナス。何故そなたはあの森に我がいる事が分かったのだ?そなたはあの森がどこだったか知らなかったはずであろう?」
感動的な空気を無視して私は気になった事を聞いた。ボルテールが睨んできたけど気にしない。私は自分のやりたいことをやりたいようにやると決めている。それは前世からの事なので今更変えようがない。
「あ,えっと,誘拐の実行犯である魔法使いから聞き出したんだよ」
「そうか。ん?そう言えばあの魔法使い転移を使ったのだから頂上まで辿り着いた事があるのか?あの森はあの程度の男では頂上まで登る無理なはずだが・・・」
「あの男は飛行魔法で飛んで行ったんだって。飛べば途中にいる魔物は関係ないからね」
「なるほど。自分の強さを証明するためなら地道に登らねば意味がないが,頂上に行きたいだけならば関係ないからな。ん?でも,そなたは普通に登って来ておったな。そなたは魔力量も多いし,風属性も持っているようだし飛んでくる事も出来たのではないか?」
「いいや,飛行魔法は魔力コントロールが難しいんだよ。魔力量は足りてるけど覇王の森の頂上まで飛べるほど俺は魔力コントロールがまだ上手くないんだ。だから俺は気配を隠す魔法や結界なんかを使ってあまり魔物に遭遇しないように登ったんだよ。覇王の森の奥の魔物と戦えるほど強くもないしね。ちなみに,フェンリルにとっては弱かったのかもしれないけどあの男は一流の魔法使いだったんだよ」
「あんな相手との力量差すら理解できない者が一流とは人間は弱いなぁ」
「そりゃあ,ルナに比べればね」
「ところで,何故ルナがここにいるんだ?」
「ライナスが会いに来たのだが色々あってここで世話になる事にしたのだ」
「ここで世話にって・・・」
「心配するな。他の者には子犬らしく振る舞う。毛の色も魔法で変えられるしな」
「だが,ライナスは来月から全寮制のアルテナ魔法学園に行くぞ。今は中等部を卒業して高等部の入学まで学園は休みだからここにいるだけだ。入学後は長期休暇しか帰ってくる事は出来ないぞ」
「何,そうなのか?」
「あ,うん。カイロスも一緒に通っているよ」
「ふむ。よし,ならば我も一緒に通うとしよう」
「あ,ちょっと待て,ルナ!」
そう言って人化の魔法を使おうとしたらロイが慌てたように声をかけてきた。
「お前,何をする気だ?」
「人化の魔法を使おうとしただけだが?」
「・・・服を用意させるからそれまで待て」
「心配いらぬ。人化の魔法は服を着た状態で変化するのだ。あまり細かな変化は出来ないが見た目の年齢は変えれるからな。服を着た状態で変化しなければ面倒なのだよ。まぁ,服は一種類しかないがな。我は魔法を弄って亜空間に入れてある服から好きな物を着れる様にしてあるから関係ないが」
「そうなのか。それにしてもフェンリルっていうのは本当にどんな魔法も使えるのだな」
「まぁな。それで,もう変化して良いのか?」
「ああ,構わない」
ロイから了承を貰い私は人化の魔法を使った。




