7匹目 3
「さぁ,そなたの叔父が心配しているはずだ。早く出発するとしよう」
「うん」
「待て!俺はまだお前を認めていないぞ」
叫ぶカイロスを私はじっと見た。
「何だよ。睨んだって認めないぞ」
「別に睨んでいたわけではない。ただその髪や目を「貴様も不吉だと言いたいのか!」」
「別にそんな事は思っていない。そもそも何故人間が黒を忌み色と嫌うのかが分からぬ」
地球でも葬式では黒を着るが黒を嫌うことはない。アジアに行けば黒髪黒目の者がほとんどだった。ファミリーにも黒髪黒目の者がいたし,私には黒髪黒目の者を嫌う事にどうしても納得がいかない。まぁ,これは私が前世の記憶を持っているからだろうけど。
「人間は黒い宝石や黒い服,黒い毛皮などは嫌っておらん。むしろ好むものもいる。それなのに何故黒髪黒目の者は嫌うのか全く分からん。色は色だ。それ以上でもそれ以下でもない。ただ黒を持って生まれたからといって不吉を招くわけがない」
「それは・・・」
「それにそなたの髪も目も美しい」
「へっ!?」
困惑したようなカイロスにそう言うと顔を真っ赤にしてあたふたしだした。
「クックック」
「か,からかったのか!」
あまりの慌てぶりに可笑しくて笑うと赤い顔のまま怒鳴られた。
「いいや,本当にそう思っただけだ。我は銀色が一番好きだが次に好きなのは黒色なのだ」
「黒が?」
「ああ。黒は落ち着くのだ。特にそなたのように深い漆黒は静かな夜を想わせるから特に好きだな」
「~~~~っ!」
正直に話すとカイロスは今度は耳どころか首まで赤くした。
「俺は?」
「何だ?」
「だから,その・・・」
「ん?ああ,そなたの髪も綺麗だな。明るすぎず,暖かな陽射しの様だ。瞳の色も森を想わせる深い緑だから我は好きだぞ」
「そっか」
拗ねたような顔をしたライナスにそう言ってやれば嬉しそうに微笑んだ。
「カイロス」
「気安く名前を呼ぶな」
「ああ,すまぬな。では,ボルテール」
真っ赤な顔で睨まれても全く迫力はないが私はすぐに謝った。気安く呼ぶなと言っておきながら自分は相手を名前で呼ぶなんて,気付かないうちに神獣という事で偉くなったつもりにでもなっていたのかもしれない。気をつけよう。
「何だ」
「そんなに敵視しなくても我はそなたらに危害をくわえる事はない。ライナスの叔父に会えば証明してくれるであろう。それじゃ,行くぞ」
「あ,おい,待て」
ボルテールが何か言いかけていたが無視してレドニアス公爵家へ転移したのだった。
今回は長かったので3ページに分けてみました。




