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久美と月乃

 pyupyapyoタウンは広大なビルみたいに建つ。タウンビルと呼ばれてコケやつる草などが包み、各タウンは固有の植物群落に飾られている森のようだ。

 久美はタウン内の自室で覚書きみたいなブログに今日のことを書き終えると、メールを確認する。親交のある月乃からだ。タウンの外へ出てみることは話してあり、その様子を聞きたいらしい。

「交流センターで待ち合わせか。苦手だけれどなー」

 いつも混雑する場所だから、出かけたくないが、月乃は好んででかけるらしい。たぶん保育機械のころから隣だったはずの月乃と、気の合う部分もあり、一緒なら周りは気にならない久美。


 交流センターは、タウン管理エリアを外周する場所。各地区の人とも交流できるらしいが、久美はそこまで興味もない。

 近くの二人用椅子に、ツインテールの月乃と向かう。服装は開襟シャツにホットパンツ姿。惑星メタフォーでは基本的なスタイル。ファッションも多様化してきてはいるが、慣れた服が良い。「蹴飛ばした、と。久美ならやりかねないね」

 月乃が、かいつまんで話す久美へ頷きいう。

 久美を見た目で判断すると危ない、と月乃は知っている。幼いころから走ったり跳んだり、体育系の遊びが得意だったし、運動能力も高い。


 そこへ歩いてきたのは見覚えのある7人連れ。これを友達とかいう人もいる。もっとも、13歳までの指導を共同部屋で受けた。 同級生と言ったほうが適切。

 みんなが開襟シャツにホットパンツ姿で、髪はそのまま伸ばすか、束ねたり、それぞれ違う。「久美、久しぶり」

 声をかけるのは、リーダー的な存在の亜由美。付き合いはあまりないが、知り合い程度の挨拶はする仲。そこで突っ込んだ話を持ち出すのは彩香。

「ランチボックスの会というピクニック同好会へ、入ってくれないかしら」

 こういうのは苦手な久美。

「好きなら行けば良いと思うよ」

 遠足とか怠けて行かなかった綾香が、ピクニックで自然に触れる思いになったのを喜ぶ。綾香は付き放された思いだが、いつものことか、とため息を吐く。

「勝手に行け、みたいな言い方ね。言い方を変えたら」

「考えておく。おやぶん気取りの亜由美が嫌い、と言ってたけれど」

 仲が良さそうで良かった、と思う久美。それに亜由美は余裕の表情で答える。

「陰口なんて気にしてなかったし。ほんと、久美は気にしすぎよ」

 久美は亜由美と仲も良さそうにしている綾香を、喜んでいる。しかし、綾香の顔が険しくなる。余計なことをいうな、と言いたいらしい。幼いころは喧嘩していたし、そういう付き合いもあるのだろう。

「いろいろだから」

 月乃が間を取り持つ。

「それより、新しいポテトプリンが開発されたみたい」

 スイーツはみんなが好きだ。

 和やかに、いつか食べに行こうとなる。

「久美はプリンが好きだったよね」

 亜由美が、たまには参加して、と誘う。あまり一緒に歩くことはない。

「ポテトチップで良いや。試験が終わったら。一緒に行くよ」

 プリンは巨大アメーバーを思い出しそうで遠慮したい。二十歳の試験が、もうすぐあるし、区切りとしてみんなで集まるのは久美も楽しみにしている。人間関係の距離感が、他の人とちがうのだ。

「今日は月乃と話があるから。いつかまたね」

 久美は話すこともないと思う。亜由美はちょっと困った表情だが、いつかまた、は会いたい前向きな気持ち。これが久美のやり方、と割り切ったように頷く。

 月乃がみんなと何か話して、頷き笑い合う。綾香も、今は成長したよね、と自己弁護するふう。 お互いに波風立てずに話を合わせるのが人間付き合いらしいが、久美には苦手だった。意見が対立して、相手を理解し合う仲が欲しいのだが、少年初期の知り合いにはいない。6歳までの幼少期から月乃は知っているし、ぶつかり合うというより、溶け合う部分が多くて親交も深まってきている。


 久美と二人で座ると、さっそくと月乃が話す。

「加工所へ蛸の足を持って行ったとか。面白いことがあったみたいね」

 服を取り寄せたりしたことはメールで話してある久美。

「ヒューマノイドと話し合う必要があるから。武器は必要なのよ」

 あれは喧嘩、と突っ込みはしないで、月乃はテーブルの端末をいじり、モニターへ久美のブログを表示させる。

「魔女は、この杏樹とかいう人か。なるほど」

 イラスト描写画面で似顔絵を描きだす。

「もうちょっと若い感じかな。それなのに威張って喋る」

 久美は文章で伝わらない部分を補うように話す。それで、プライドの高い魔女の王女らしい絵ができる。性格など、キャラの設定で風貌も変わるだろう。

 久美も月乃は手先が器用でイラストや似顔絵を幼いころから描いていて、アニメも手掛けているのを知っている。

 月乃は久美が調べた生物や習慣で、予想や創作で短いアニメ動画を作っている。持ちつ持たれつ、情報を共有したいのが月乃。久美が一番に足りない部分を持っている。

「こんな感じか。ハニャーが7本足なのは特徴になるねー」

 描画へ夢中になる月乃。この自分の世界へ入るのは久美と同じ。

「あの、巨大アメーバーは手ごわい。近づけない」

 久美は経験したことを改めて話す。二人は別々のことをしているようで、ちゃんと理解している。

「運動能力は高い久美だから。捕まる前に振り回しちゃえば」

「柔らかかったけれど、外側から千切って行けばね」

 腕を回転させて、穴を掘るように、と思う久美だが、月乃には提案もある。

「回転。3回転ぐらいできるでしょ。遠心力で振り切れる」

「何回もすると、ふらつくけれどねー」

 久美は月乃が描くトリプルアクセルの4コマ漫画に、納得する。

「こんな高くは跳べないけれど。なるほど走ってから」

 網をブランコにするより、走って跳んだほうが良いか、と考える。そのまま3回転でも、急な時に効果的か。

 はたから見ると、話が通じてない雰囲気だが、幼少期からの付き合いで、分身みたいに理解し合っていた。


 それより、と月乃は二十歳の試験について話しだす。難しくはないが、仕事を選ぶときの参考になるらしい。21歳からは仕事に就かなければ、13歳までのように、共同部屋へ戻って、住むことになる。

「久美は開拓管理で、タウンの外へ出るのを企んでるでしょ」

「杏樹がいるから、厄介だけれどね。月乃は絵を描くと思ったけれど」

 タウン管理の生活保全部で働くらしい月乃。

「多くの人を観察できるし。絵を描くヒントになるのよ」

 どの仕事にしてもロボットに任せて、人間はいるだけだから、自由に遊ぶ人もいる。

「大人の仲間入りは憂鬱だよねー。付き合いが面倒らしい」

「久美は自由にやれば良いよ。それをやれないから、普通は」

「タウンの生活が普通じゃないと思うの」

「そりゃ、そうだよねー」

 月乃もタウン生活への皮肉をアニメにしているが、気づかない者もいるらしい。

 二十歳の試験は、今まで何をしてきたか、判断するためだ。個室を与えられてネット学習で、個人の興味に任せて勉強するのが14歳からの少年後期。ゲームと遊びに夢中になる者もいるし、とっくに専門的な知識や免許を持つ者もいる。人生の境目となる、かなり重要な時期でもあった。


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