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アホタレと美乙女戦士たちの戦い

 タウンの建物の周りは5メートル幅の芝生で覆われる。テラスみたいな場所で、久美たちは椅子に座り仕事前の雑談をする。自由の利く仕事なので久美も参加することが多い。

「コスプレに興味があったの」

 亜由美が、いつものように久美の服へ尋ねる。

「仕事着だけれど。しつこいね」

「だからさあ。くにゃ、って正体を知りたいの」

 そこは誤魔化す久美。月乃は知らない顔で外を見ている。この前の翼竜が来た騒ぎで、ほとんどばれてもいる。

 タウンの外へ出ては、奇想天外なことをするアニメがあるらしい。作者とモデルが誰か知りたい亜由美。とっくに予想は付いているという表情で月乃を窺いみる。

「月乃ってことは、すぐ予想できるって、知り合いなら」

「隠してるわけじゃないよ。ただねー、かなり脚色しているというか、想像」

 久美の経験をアニメにしているらしい。モデルの本人から聞いてみたいのだ。

 久美も鬱陶しい、と思いながら、心地よい空間を感じている。

「自然界って、人間社会よりは安全だね」

「奥が深いねー」

 綾香がオレンジジュースを飲んでいう。 喉かな朝の時間。


 畑の方でなにか騒ぐ声。

 鳥の羽ばたく音。

 アホタレが来た。

「頻繁に来るよね」久美は立ち上がる。

 人を襲うという事例も発生しているから、ただ事ではない。杏樹の不安は予想より早く訪れた。 悲鳴と、追い返そうとする叫び声。

「がううっ」

 アホタレは畑を踏み荒らしては、逃げる人々へ嘴で攻撃する。時間はない。久美は一歩道路へ出ると左手を挙げる。

「カムライタウエー。クイックリ」

 グライダーはすぐに低空で飛んできた。アホタレの頭上で、ちょっと上がるが、久美の頭上の低空で停まる。

「ががっ」

 警戒するアホタレ。構っている暇はない。グライダーの座席が、すー、と降りてきて、久美が座ると、すー、とグライダーへ吸い込まれて行く。

「やっぱり」

 同級生たちは立ったまま、唖然と眺める。


 久美は先ずアホタレを追い返そうと考えて、首の届くぎりぎりまで突進させる。

 そしてグライダーの機首を、ぐぃっ、と上昇させる。

 アホタレも自分より大きなモノが攻撃するのに危機を感じ、羽を広げると羽ばたく。

「逃がさないから」

 後を追う久美。上空から追いつくと、排出口から、準備していた漆を落とす。アホタレの背中へ上手く乗っかった。

 アホタレは嫌がるように身体をくねらせるが、野生では命あっての物種。スピードをあげて飛ぶ。

「追っ払っても、また来るよね。これじゃ」

 なんとか仕留めたい。

 山脈を越えて、砂漠へ向かうアホタレ。

 岩場に群がるアホタレたち。すぐ近くの砂地ばかりの土地へアホタレが舞い降りると、ひっくり返り背中を擦り付ける。猫が日向でやっているような感じだ。痒いのを砂で洗い落したいらしい。

「短剣と鞭で仕留められるか」

 グライダーから降りて考えるが、ゆっくりしている暇もない。アホタレが片方の羽を支えに起き上がる気配。

 久美は殺獣スプラッシュ銃を取りだして構える。今はアホタレも油断している。

「頭か首か」

 狙いやすい首元を狙って撃つ。ぷしゅっ、水流が勢いよく噴き出してアホタレへかかる。驚くが、奇声をあげて苦しみだすアホタレ。

「うへぇっ」

 久美も吐き気がして、気分がわるくなる。やっぱり、簡単に使うわけにはいかないらしい。


  アホタレは足から崩れて倒れる。 

 しばらく安静にする久美。ハニャーが砂地で足を伸ばしながら遊んでいるのが、なんとなく和ませる。


 空から空気を割く音がして、魔進が降りて来る。

「深追いは禁物だよ」

 杏樹が跳んできて言う。

「なんとかしないと。人間にも被害が出ているの。杏樹が何といっても、ここで、アホタレを退治するからね」

「無茶だねー。百頭を相手にどうする。それを考えてからにして。今回はタウンの外だと言ってられないのはわかるが」

 まさに人類の危機。アホタレとの生存競争なのだ。

「そうか。迷ったときは」

 久美は両手を広げて見上げる。太陽が眩しい。大きな声で呼びかける。

「サンシャイン、コラボレーション」

「何、それ」

 杏樹が尋ねる。久美は聞かないふり。そのままで居ると、やがて閃く。

「月乃がアニメで使っている台詞。真似してみたの。うん。有った。アホタレを始末する方法を見つけた」

「ふーん。なるほど」

 杏樹は何かの解答を待つような表情。久美も杏樹が言っていた考えを思い起こす。

「私のアイデアが絶対いいから。なんと。あのアミバだよ。アホタレをみんな食べさせちゃえ」

「ご名答。さすが本家クニャ」

 杏樹はアミバを使おうと考えていたらしい。

「そういう呼び方はねー。ただでも童顔なのに」

 いがいと気にしてはいる久美。


 しかし、お喋りをしている暇はない。久美はアミバの場所を探すより、と考える。

「杏樹。まだアミバはいるんでしょ。持ってきてくれない」

「10匹、20匹じゃ、埒があかないよ」

 普通のアミバは小さい。大型生物を消化するには時間もかかるし、その間に振り落とされる。 久美は短剣を取って構える。

「それでも良い。タウンへ来たのを一頭づつ片づける。もう、決着をつける。私のいうことに従ってもらうよ」

「それを仲間へ言えば良いのにね。だから、良いことを教える前に、誰が強いか決めよう」

 杏樹も剣を取る。

 その二人の間へ棒が突き刺す。アーチェリーの矢だ。上を見上げる二人。通り過ぎたグライダーが降りて来るが、また近づく一機が低空で留まり、座席が降りてくる。イーシナゲルだ。

「また遊んでるの。そろそろ準備できたわよ」

 即時翻訳カードは胸ポケットでいつもオンになっている。

「急だから。ちゃんと予定を立ててよ」

 ユミヤが駆けつけて言う。最初のグライダーに乗っていたらしい。状況を飲み込めない久美。しかし、柔軟な考えをする。

「ちょうど良かった。アミバを集めたいの」

「準備万端。もうすぐ網をかけに来るから」

 さすがに久美もついていけない。杏樹は説明する。

「ほかの仲間はアミバを集めてタウンのアホタレを駆除する準備をしていたの。それを久美が突っ走るから、急いで駆け付けて、作戦を実行することになっている」

「内緒にしてたのね」

 半ば気分を害した久美だが、杏樹は、それがどうした、という顔。

「久美にだけは、と言ったからね。ほかの人には教える」

「出し惜しみする人は嫌いだー」

 それどころではない、とユミヤ。

「始めましょ。久美、Start exterminatingを押して」

 端末を差し出す。

「私が。良いけれど。駆除開始でしょ」

 駆除着手の合図だ。久美も早く処理したい、気軽に押した。今は経緯の説明より先にやることがある。


 アホタレの群れへ10機のグライダーが横一列で近づく。網目の荒い鉄だろうか、垂れ下げる。ぐーん、と網の長さは伸びてアホタレたちへ覆いかぶさる。アホタレたちは慌てるが網にひっかかり飛ぶのを邪魔される。

 次の10機がアホタレの頭上を通過してアミバをまき落とす。

 また10機が来てアミバをまき散らす。網を被せた10機も参戦。アミバの薄い緑で一面が覆われる。


 シーナゲルがユミヤに合図する。

「行こうか。危ないけれど、弱っているはずよ」

 久美は話を聞いている間にも、アホタレが網から抜けるのを見つける。

「この阿保たれが」

 短剣を構えて走り出す。苦しそうに羽を動かすアホタレ。近づくが足はよろよろとして、中へ入りにくい。

「首しかないでしょ。今ならやれる」

 杏樹がいうと、思い切りアホタレの首元へ切りつける。

「ジャンプしたら良いじゃん」

「手本を見せたの」

 しかし、話している間はない。逃げ出す数も多い。久美は対抗する。ジャンプして、逃げるアホタレの尻を切りつける。ここも羽は少ないようだ。糞をするための出っ張った肉部分があるのを発見する。

「お尻だよ。後ろからやっちゃえ」

 大声で叫ぶ。

「これは楽だね」

 ユミヤが答える。

 グライダーから降りた仲間も参戦。

 動くアホタレの姿はもういない。

「自然界も科学も使い方が良ければ、役には立つね」

 久美は短剣を収めて言う。脊椎動物の赤い血が岩場の砂に染み込む。

「こりゃ、凄いや」

 戦争はお互いに血を流すもの。緊急治療スプレーを使う仲間もいる。

「人間同士でやっちゃったんだ。地球の人類は」

 久美は、何のために戦争をしたか知らない。ただ、間違いなく、同じ人類の誰かが血を流すのが戦争だと思う。


 杏樹がいつの間に惑星調査チームに取り入ったか、久美は分からないが、当然のように振舞い、輪になり何か話している。

「久美。もう一回、あれをして」

 杏樹が近づき言う。みんなも興味深そうに久美を囲む。

「みんな大変だったね」

 みんなが、返り血を帯びて、赤い模様が見える。

「久美もだよ」

 イーシナゲルが足を曲げながら言う。

「捻挫でもしたんだね。腫れている」

 久美が近づくと、暑いところが好きなハニャーがイーシナゲルの赤く腫れた足首へ足を伸ばして包む。

「へえっ。ここでこんなに冷たい」

 イーシナゲルは、薬より即効性がある、と驚くが、笑顔で言う。

「それより。あれ。手を広げてナントカ」

「知っているのね。あのアニメ人気があるのかしら」

 月乃のファンなら、と両手を広げる。短剣を持ちすぎて怠い。深呼吸で気合を入れて、大きく両手を挙げて開く。

「サンシャイン、コラボレーション」

 すると周りも真似て両手を広げて唱える。

「Sunshine collaboration」

 ちょっと正確な意味ではないが、ちゃんと英語に翻訳しているし、久美より上手な発音だ。

 それは置いておいといて、久美は閃くなにかを感じる。

「使われてない土地」

 どこでも動植物はいる。この砂漠か。北極、南極。どっちにしても住みやすそうにない。

「タウン。えっ。有るのかな」

 捨てられたタウンなら有る。しかし、使われてない、となれば。

「あっ。有った」

 叫ぶ久美だが、杏樹にばれてはいけないと、黙る。決まれば探しに行きたい。グライダーを呼ぶ。

 たまらずユミヤが声をかける。

「久美。ちょっとは休憩したら。何かあるときは連絡してよ」

「わかった。正直なところ、汚れた服も着替えたいしね」

 話しながらも自分のグライダーへ釣り上げられて行く。


「まったく。あれがリーダーで良いのか」

 杏樹が尋ねる。イシナーグは笑顔で答える。

「久美は先駆者。気遣いもできるしね。私たちはリーダーのあとを追う」

 それなら、と杏樹は魔進を呼ぶと跳び乗る。

「また翼竜とかが来るかもしれない。一番厄介な人間の未来は任せる」

 言うと、魔進はぐいっ、と上を向き、手足を収めると浮き上がり、しゅーっ、と大空へ飛んでいく。惑星メタフォーの太陽が、大地を熱く見守っていた。


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