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エピローグ 夢のような世界
数ヶ月後。
街の古本市、100円コーナーの片隅。
一冊の絵本が、静かに置かれていた。
表紙は厚紙に、金文字で「あなたのための絵本」。
若い女性が、何気なく手に取った。
表紙を開くと、最初の1ページだけ、美しい水彩の挿絵があった。
彼女がずっと描きたかった、理想の絵。
柔らかな光に包まれた部屋。
優しい花が咲き乱れ、穏やかな空には虹が広がっている。
挿絵の下に、小さな文字で文章が書かれていた。
「これは、あなただけの物語。
次のページから夢のような世界が広がります」
女性は目を輝かせた。
ページをめくると、真っ白。
残り12ページ、すべてが雪のように白い。
スケッチブックなのだろうか?
続きを書く、ではなく、世界が広がる、というぼかした表現に、どことなく違和感がある。
しかし、目の前に広がる挿絵の魅力の前では、それは些細な事だった。
女性は胸に手を当て、呟いた。
「これ……私のための絵本だ……」
外の風が、静かに吹いた。
物語がまた、始まった。




