表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕方なく「イケメンで高身長な異国の王子様」を俺は演じる。  作者: 蓮太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

通じ合った心。

嘉隆と零は、気持ちを隠しつつも、一緒に過ごす時間が増えていった。


いつもと変わらない放課後。


「零。」

嘉隆は、零に手を差し出し、荷物を受け取ろうとした。


「あ、ありがとう。」

零が荷物を渡そうと、荷物に手をかけた。


「九鬼くん!」

見慣れない女子が、廊下から嘉隆を呼び、手招きしている。


「何?」

嘉隆は、廊下へ向かって歩き出した。


「あっ。」

零は、見覚えのある顔につい声が出た。


「なに?」

嘉隆は振り返った。

「・・・何でもない。」

「そう。」

俯く零を気にしながらも、嘉隆は女子の元に向かう。

(あの子、美人で有名な子・・・佐藤唯さとうゆいだったか。告白とかじゃないよね?)

零は心配そうに、嘉隆の背中を見つめた。


「で、何かよう?」

嘉隆が問いかけると、唯は嘉隆の腕を掴み引っ張った。

「えっ?何?」


「ちょっと場所変えよ。屋上いこっ!」


「ここでいいだろ?もう帰りたいからさ。」


「大事な話なの。」

唯は、嘉隆の腕を引き歩き出した。

「ちょっと待っててくれ。」

嘉隆はため息混じりに振り向きながら、零に告げて歩き出した。


「まずい、まずい、まずい・・・絶対告白だよね?」

零はブツブツ言いながら、誰もいない教室をクルクルと歩き回る。

「無理!ダメだと思うけど・・・見に行こう。」

零は二人を追いかける様に教室を出た。


嘉隆は、唯に腕を引かれ校舎の屋上に連れてこられた。

唯は、嘉隆の腕を離すと振り返り、嘉隆を見つめた。


「ハァハァハァ。」

走って追いかけてきた零は、屋上に出るドアから二人を盗み見る。

(・・・私・・・何してるんだろ。)

零は虚しい気持ちで二人を遠目に見つめている。


「九鬼くん。」


「話って、何だ?」


「分かってるでしょ?」

唯は、少しモジモジしている。


「もしかして、告白か?

悪いけど、君とは付き合ったりするつもりはない。」


「ち、ちょっと!気持ちを伝える前にふるのやめてくれる?!」


「もう、いいか?」


「嫌。」

唯は、嘉隆の腕に絡みつき、胸元を押し当てながら嘉隆を見つめる。


「悪い。」

嘉隆は、平然と答え目をそらした。

「何で?こんなに頑張ってるのに。

もしかして!西園寺さんの方が大きいから?」


「何をいってんだ!」

嘉隆は顔を赤くしている。


「変態。」


「ほっとけ。」



「あ、あいつは何を言っているのだ!」

零は自分の胸元を見ながら、一人で顔を赤くして呟いている。


「あーぁ。言うつもり無かったけど・・・嘘の・・・。」


「何だ?」

俯きながら呟く唯に、嘉隆が問いかける。


「嘘の婚約者に本気になった?」


「そんなところだ・・・・何でそれを?」



「私、九鬼の事いいなーって思って、色々聞いて回ったら、婚約者がいるとか言うから、先生に聞いたの。

九鬼くん、田舎の島出身だよね。」


「・・・そうだけど。」


「この事、広まったら嘘つき呼ばわりされて、仲間外れだよ?西園寺さんも。」


「おのれ、あいつ、脅しとは卑怯な。

・・・待て、嘉隆は私に本気なのか?」

零は、心配そうに見守りながらも、心の整理に戸惑っている。


「別にいいよ。

今もちやほやされてるだけで、二人で仲間外れみたいになってるし。」


「あー!そうですか!もう、いい!」

唯は、落胆した表情で走り去っていった。


「好きな相手、脅すなよ。」

嘉隆は、頭を抱えて呟いた。


「西園寺さん。私、ふられたー。」

ドア越しに見ていた零は、突然向かってきた唯に焦って、ドアの横の壁に背中を当てて隠れたつもりだったが、唯には気付かれていた。


「そ、そうか。」


「余裕だね。・・・違うか、ここにいるんだもん。心配だったんだね。」


「・・・。」


「私、どんな手を使っても諦めないから!」

そう言い放つと、唯は階段を走って降りて行った。

「・・・はぁ。」

零は、色々な感情が混じり合い、ため息をついて座り込み、膝を抱えた。


「零、盗み聞きするならもう少し上手く隠れろよ。」

うずくまる零に、嘉隆は声をかけた。


「よし・・・たか。色々と聞きたい事がある。」


「う〜ん。先に言っとく。」


「・・・?」

零は無言で嘉隆を見上げた。


「零の気持ちは分からないけどさ、俺は零が好きみたいだ。でも、今は告白したり、付き合ったりするつもりは無い。」


「なんで?」


「ふ、ふられたら零のごはんが食べられなくなる。」


「・・・ふらない。」

零は、顔を赤くしてうずくまりながら答えた。


「ごめん。一番の理由は・・・俺が男だから。」

(家が隣、親はいない、いつも一緒。こんな状況で付き合ったりしたら・・・俺の理性がもたねー!)


零はまた俯き、何か考えていたが、

ハッとした様に、顔を赤くした。

「そ、そうか。」


「か、可愛く話す練習はやめたのか?」


「・・・忘れてた。」

悲しいのか、嬉しいのか、恥ずかしいのか。複雑な表情で、零は嘉隆に微笑みかけた。


(か、可愛い。)

嘉隆は初めて見た零の表情にドキッとした。

「零。」


「何?」


「帰ろ。」

嘉隆は座り込んだままの零に手を差し出した。

「うん。」

零は嘉隆の手を取り、立ち上がると嘉隆の腕にしがみついて嘉隆を見つめた。

「れ、零?」


「これくらいはいいでしょ?」


「べ、別にいいけど。」


「ふふっ。唯に先を越されたから上書き。ここは私の居場所だから。」


「・・・ぁ、あぁ。」

(この感じで来られると非常にまずいな。)

嘉隆は、この瞬間から先が、不安だっだか、心が通じ合った事を嬉しく感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ