表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕方なく「イケメンで高身長な異国の王子様」を俺は演じる。  作者: 蓮太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/12

特訓。

「嘉隆っ。朝ごはんは何が食べたい?」


(何なんだ・・・そんな顔で、そんな話し方されたら・・・。)

破壊力バツグンな零の言動に、嘉隆はドキドキさせられている。


「れ、零。」


「なぁに?」

零は、微笑みながら首を傾ける。

「そ、その・・・その話し方は?」


「だから〜、可愛く話す練習。」


「そ、そうか。・・・で、でも何でまた突然?学校で誰かに嫌味でも言われたか?」


「違うよ・・・バカ。」

零は、小さく呟くと、照れた様に俯いた。

(私は嫌味を言われたくらいでは、話し方を変える努力をしないのくらい分かるだろ。)


「じゃぁ何で?」

嘉隆は、このまま可愛く話されると、色々まずいと焦っている。

なんとか理由を突き止め、辞めさせようと必死に考える。


「秘密。」

顔を赤くして、俯き、膝を抱えながら言う零を見て、嘉隆はドキドキが止まらない。

「そ、そうか。」


「・・・変?嫌?」

零は、嘉隆に向き直り、少し寂しそうに問いかけた。


「・・・変・・・じゃない。嫌・・じゃない。」


「良かったー。」

零はニコッと微笑んだ。


「朝ご飯作るね。何がいい?」


「零、疲れてそうだし、すぐできるのでいいよ。」


「そ、そうか。」

零は思考をめぐらす。


「話し方が戻ってるけど?」


「ゔっ。考え事をしようとすると、話し方まで気が回らなかった。」


「あはははっ!」

嘉隆は、元に戻った零を見て、安堵の表情を浮かべる。

「わ、笑うなよ。」

零は、少し寂しそうに俯いた。


「わ、悪い。」

嘉隆は、戸惑っから解放された安心感で、つい笑ってしまった自分に反省した。

「そ、その。元に戻ったら言ってほしい。私、頑張ってみたいから。」


「お、おぅ。」

嘉隆は、また可愛いモードに入った零に、ドキドキしながらぎこちなく答えた。

「じゃぁ、朝ご飯、作るね。」

零は、嘉隆に微笑むと、立ち上がりキッチンに向かった。


(零・・・どうしたんだ・・・このままでは非常にまずい。この心の中の気持ちに気付いてしまった上に、突然あんなに可愛く振る舞われてしまったら・・・抱きしめたい・・・抱きしめて、頭を撫でたい・・・あー!!!頭がおかしくなりそうだ!)

嘉隆は、目を見開き、零を見つめている。

振り向いた零は、嘉隆の様子がおかしくなっているのに気づいた。

「よ、嘉隆?どうしたの?顔が少し恐いよ?」

不思議そうに、嘉隆を見つめる。

嘉隆は、我に返ると顔を伏せた。

「い、いや。何でもない。」

顔を伏せたまま、嘉隆の混乱した頭の中は、ぐるぐると渦を巻く台風の様に荒れている。

(ダメだ。零の全てが可愛い。可愛いすぎる!見られない。目を合わせられない・・・いやっ、ダメだ。零の性格上、やると決めたら辞めないだろう・・・慣れなければ。)

嘉隆は俯きながら覚悟を決める。


カタっ。

テーブルにものを置く音で、嘉隆は顔を上げた。

「・・・わぁ!」

顔を上げると、零の顔が至近距離にあり、嘉隆が思わず叫ぶと、零も少し驚いた様子で、距離を取った。

「ど、どおした?」

嘉隆は、ごまかす様に問いかけた。

「ずっと下向いてるから、どうしたのかと思って。体調悪いの?」


「だ、大丈夫。いたって健康だ。」


「・・・そう。」

零は少し顔を赤くして、呟いた。

ハッとした様に、零はテーブルに視線を移した。

「そうだった。ご飯できたよ?

お茶漬けにしてみた。」


「あ、ありがとう。」

変な空気の中、二人はいただきますをして、食べ始める。


「えっ?!何だこれ!」

嘉隆は目を輝かせながら零を見た。

「お茶漬けだけど・・・美味しくなかった?」

零は不安そうに問いかける。

「うまい!お茶漬けってお茶かけるだけじゃないのか?!」


「・・・良かった。」

嘉隆が喜んでいるのを見て、零は嬉しそうだ。

「出汁茶漬けだよ?お茶の代わりに出汁をかけたの。」


「なるほどな〜。」

嘉隆は、目を輝かせて器の中を見つめる。

出汁をかけたご飯の上に、皮がパリッと焼かれた鮭がのっている。

「おかわりあるよ。」

零は、嬉しそうに微笑む。

「本当か?!」

嘉隆は、嬉しそうにお茶漬けを流し込んだ。


「ごちそうさま。」

嘉隆は満足気に立ち上がり、キッチンで洗い物をしている零に食器を手渡した。

「うまかった。」

嘉隆が笑いかけると、零は嬉しそうにする。

「良かった。」

微笑む零を見て、嘉隆はまた、ドキッとさせられた。


朝食の後、二人はベッドに背をもたれに、並んで読書をしている。

英語で書かれた、論文の様な本。

二人の通う学校で、理解できるのはこの二人くらいだろうか。

「なぁ、零。」


「この仮説、面白くないか?」

嘉隆は、呼んでいた本を零に差し出した。

零は、自分の読んでいた本を閉じ、嘉隆の本に目を移した。

零は、本を持たずに、嘉隆の持つ本に顔を近づけている。

自然に距離が近づく。

「・・・。」

嘉隆は、零の髪の香りにドキッとしている。

「確かに。面白いな。」

零が嘉隆の顔の方を向くと、顔と顔の距離がものすごく近い。

「・・・。」

二人は見つめ合ったまましばらく固まった。

「は、話し方が戻ってたぞ。」

嘉隆は、顔を赤くして、零と反対側に顔を向けた。

「そ、そうだね。考え事をすると元に戻っちゃう。」

零も顔を赤くして俯いた。


幸せで甘酸っぱい様な空気に耐えかねた嘉隆は、立ち上がり零を見た。

「零、買物行こうか。」

「うん。」

(うんって言って微笑むなよ・・・可愛い・・・耐えられずに「買物」というカードを早くも切ってしまったが、まだ午前中。俺の精神は今日1日持つだろうか・・・。)


いつもと変わらない週末。

二人は毎週、買い出しに一緒に出かけている。

変わったのは、二人の心。

それから、零の振る舞い。


近づいた様な離れた様な二人は、

可愛く話す特訓と可愛く話す零に耐える特訓に1日中励むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ