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仕方なく「イケメンで高身長な異国の王子様」を俺は演じる。  作者: 蓮太郎


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7/29

初めてのお泊り。

「零、おはよ。」


「おはよう。」


嘉隆と零は、玄関の前で挨拶を交わし、零は荷物を差し出す。


そして、学校に着けばおはよう地獄からの、クラスメイトの質問地獄。


いつもの様に二人は、王子様とお姫様を演じる。


学校が終わり、決まり事の様に嘉隆は自分の家で着替えた後、零の家に行く。


そして、零の作った晩御飯を堪能する。


「あー!今日もうまかった!零は料理上手いな〜。」

嘉隆は幸せオーラを全開に放っている。

「あ、ありがとう。」

(今日はそんな幸せそうなお前にプレゼントがある。

ふっふっふ。昨日を超える地獄を思いついた。さぁ存分に苦しむがいい。)

零はニヤニヤとしている。


「どうかしたのか?」

俯いた零を嘉隆が覗き込む。

「い、いや。その。」


「また肩こりか?」


「そ、そうだ。」

(自ら墓穴を掘るとは、マヌケな奴め。)

零はニヤニヤとしている顔を隠す様に、俯きながらシャツのボタンを外し始めた。

嘉隆からは、照れているような仕草に見えていた。

嘉隆は昨日と同じ様に、零の後ろに立った。

(こっ、こいつ!下着を付けてない?!)

嘉隆は、煩悩が爆発しそうになるのを堪えながら口を開いた。

「お、お前。下着は?」


「そ、その。昨日肩の部分のが邪魔だっただろ?だから・・・外した。」


「は、外すなよ。」


「い、いいから。頼む。」

「・・・。」

(ダメだ!ダメだ!ダメだ!俺にはできない!無理だ!もう、その、頭がクラクラと・・・・?)

人間と言う生き物は、追い込まれすぎると、稀に冷静になる。

(待てよ。零、こいつ・・・これはまさか?!宣言無しの報復じゃないのか?

そもそも、肩を揉むのに服を着てようが着てなかろうがどっちでもいいだろ!

いや、むしろ普通は服を着たままだ。

やられた・・・とんだ辱めを・・・ふっふっふ。ここからは俺の番だ。

男と二人きりでこんな事をしたんだ。俺の煩悩の半分を叶えさせてもらうぞ!そして同時にお前を辱める方法を今思いついた。さぁ!反撃の時間だ!)


「どうしたんだ?」

中々肩を揉んでくれない上に、黙っている嘉隆に、零は問いかける。

「いや、何でもない。」

(この沈黙さえも作戦に組み込む。

我ながら、自分が恐ろしい。)

嘉隆は、零の肩を揉み始める。

「・・・あっ。」

(わざとらしく変な声を。だが、もう騙されないぞ。とは言え、晩御飯のお礼はしっかりしないとな。)

嘉隆は、律儀に零の肩を揉み続けた。

零が満足気にしだすと、嘉隆は手を止めた。

「ありがとう。楽になった。」

ドスッ。

零がシャツのボタンに手をかけようとすると、それを静止させるかの様に勢い良くベッドに座り、わざとらしく俯き、呟く。

「父さん、母さん・・・。」

零は、振り返り心配そうにする。

「ど、どうした?」


「いや、父さん、母さん、島のみんなに会いたいなと急に。」


「ホームシックと言うやつか?」

零は、ボタンを止めるのを忘れ、はだけた胸元に気づかないまま、嘉隆を心配そうに見つめる。

「寂しいな。」


「わ、私が・・・いるのだが?」


「そうだな。ありがとう。」

嘉隆は俯いたまま動かない。

「何かしてやれることはあるか?」

嘉隆は、俯いたままニヤッとした。

「小さい頃、俺が泣いてると、母さんが俺を胸元に抱き寄せて、頭を撫でてくれた。心臓の音が聞こえて落ち着いたな。」


「わ、私にそれをしろと?」

零は顔を赤くする。

「いいよ。こう言う気持ちになる事が、たまにあるんだ。そのうち治る。」

嘉隆は俯いたまま答えた。

顔はニヤついている。

(これは流石にやりすぎか?やっぱりやめておこう。)

嘉隆は我に帰り、顔を上げた。

だが、遅かった。嘉隆の視界には、零の胸元が。

「ど、どうだ?」

嘉隆は、零に抱きしめられながら動揺している。

(や、柔らかい!いい匂いがする!やばい!不味い!やりすぎた!)

嘉隆は後悔しながらも、ドク、ドクと聞こえる零の鼓動に安らぎを感じた。

(こ、このまま、ずっとこうしていたい。)

下心も煩悩も超越する幸福観が嘉隆を包みこんでいた。

しばらくそのまま、二人は黙って停止していた。

(嘉隆、こんな事をさせやがって。

・・・私は何故こんな事を?

不思議だ。嘉隆は男だぞ?私はいったいどうしてしまったんだ?

・・・こんな事をして嫌ではない・・・これはまさか・・・恋・・・なのか?)

零は、嘉隆への気持ちに気づいてしまった。

(俺は、零に何をさせているのだろう。

最近の俺はおかしい。こんな事他の女子にさせようと思うか?

・・・思わない。させようとしたんじゃない?して欲しかった・・・のか?

零に対する特別な感情。

これは・・・恋・・・なのか?)

嘉隆も自分の気持ちに気づいた。


「よ、嘉隆。どうだ?」


「うん。満たされた。」


「そ、そうか。」

零は、嘉隆から離れると、恥ずかしそうに胸元を隠した。

「零、ごめん。変な事させて。」

嘉隆は反省していた。

そして、報復はもうやめようと誓う。

「いや、大丈夫だ。嘉隆以外にはしたくないが、お前になら嫌だと思わない。」


「あ、ありがとう。」

(どういう事?零も俺の事?)


「あ、明日は休みだな。」


「そ、そうだな。」


「そ、その、まだ寂しいなら今日は一緒にここで寝るか?」


「・・・そ、それは不味い。」


「そ、そうか。」

零は少し残念そうに俯いた。

「じゃ、じゃあ今日はもう少しいてもいいか?」


「いいぞ!」

零はあからさまに嬉しそうにする。

「映画でも見るか?」

「そうだな。今日は何の映画だろうか?」

二人は、ベッドにもたれて並んで座る。


そして、映画は、よりによって少し過激な恋愛もの。

嘉隆は少し気不味そうにしている。

嘉隆が必死に平然を装っていると、嘉隆の方に、温もりのある重みがかかる。

嘉隆が恐る恐るみると、零は嘉隆の肩に頭を乗せている。

「・・・。」

(こ、こいつー!どういう心境でそうなってんだよ!)

「スー。スー。スー。」

「えっ?寝てる?」

嘉隆は零の顔を覗き込む。

「可愛い寝顔だな。俺の晩御飯と弁当まで作ってくれて。疲れさせてしまってんだろーな。起きるまで待ってやるか。」

嘉隆は、天井を見上げるとまぶたが重たくなった。

そして、眠りにつく。


微睡の中嘉隆の意識は戻りつつあった。

部屋の中が明るい気がする。

なんだか外の音が、騒がしい。

嘉隆は目をゆっくりと開けた。

「おはよ。」

少し照れた表情の零の顔が横にあった。

「おはよ。結局座ったまま寝たんだな。」


「そうみたいだね。」

「話し方、どうした?棒読みだぞ?」


「か、可愛く話す練習。」

「今のはできてた。」


「ありがとう。」


二人は、しばらくそのまま動かないでいた。

気持ちに気づいた二人は、初めてのお泊りの余韻に浸るのだった。


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