予期せぬ対面。
雨が非常に強まっています。
風も、立っていられないくらい。
わぁー傘が!
し、失礼しました台風8号は、勢力をさらに強めながら、日本列島を横断する進路を・・・
嘉隆と零は、零の家で夕食をとりながら台風中継を見ている。
「直撃だな。大丈夫かな?」
嘉隆は心配そうにテレビを見ている。
「心配だね。何事もないといいけど。」
「うん。」
ガチャ。
二人がテレビを観ていると、玄関が開く音がする。
二人は顔を見合わせた。
何をどうする暇もなく、気づけば目の前に大男が立っている。
「ご、強盗か?!」
(カギ閉めておくべきだった!
俺よりデカい人間を久しぶりに見た!
俺がどうなっても零は守らないと!)
嘉隆は、叫ぶと同時に、零を守る様に身構える。
「零!俺が抑えてる間に外へ逃げろ!」
「Удержать меня?(俺を抑える?)」
「Я защищу Рей!(零は俺が守る!)」
大男は、不思議そうな顔をする。
(コノコドモガロシアゴ?)
「嘉隆!違う!」
「いいから!俺がおさえたら全力でにげろ!うぉーーーーー!」
嘉隆は大男に飛びかかろうと、叫ぶ。
「ちょっと!茶番はもうやめなさいよ!」
大男の後ろから、小柄な女が叫ぶ。
「・・・お母さん?」
零は小さく呟いた。
「えっ?お母さん?じゃぁ?」
「お父さん?・・・顔、覚えて無かったけど、お父さん?ですか?」
零は恐る恐る問いかける。
「ソウダヨ。レイ。ヒサシブリ。」
「す、すいませんでしたー!」
嘉隆は、焦って頭を下げた。
落ち着いた4人は、テーブルを囲んでい話を始める。
「なるほどね。大体分かったわ。」
零の母は、状況を把握した様子だ。
零の母は、今日抜き打ちできた理由を話し始めた。
零が嘉隆の家にいた時に、零の母はこのマンションに泊めてもらおうと思い訪れていたようだった。
留守にしているし、いつもはすぐに電話に出る零が、家にいなければ、電話にもすぐにでない。
零の事を、それなりには心配して、零の父親と連絡を久しぶりにとり相談した所、様子を見に行く事になった様だった。
「で、あなた達は、お付き合いしてるのかしら?」
零の母は、嘉隆に鋭い視線を送る。
「付き合ってはいません。
お互いに好意は持っていますが。」
零の母は、嘉隆を怪訝そうに見つめた。
「この状況で、お互いに好意を持っていて付き合ってないとは?
零をもて遊ぶつもりなら、関わらないでちょうだい!」
「・・・・もて遊ぶつもりなんてない!俺は、俺は!零を大切に思ってます!」
嘉隆の気迫に、零の母は少し怯んだ様だ。
「・・・ならどうしてかしら?」
「予期せぬご訪問でしたが、近々、零にご両親と会う時間を作って欲しいと頼んでました。
俺は、こんな状況だから、勝手に付き合うのはご両親に申し訳ないと思ってました。だから、付き合う許可をもらいたくて会いたいと思っていたんです。」
「・・・ダメよ。こんな状況だって分かってるんでしょ?だったら自重しなさい。
付き合った既成事実があれば、色々、我慢できなくなる。
私は、零が一人でも生きていける様に、大学まで行かせたいの。
間違いでもあれば・・・。」
「それ、子供の事ですか?」
嘉隆は零の母を睨みつけた。
「子供を!子供を間違いだとか、産まなければ良かったとか、零の前で言うな!!!」
嘉隆は、こらえきれずに爆発した。
「・・・・あーーー!
すいません。すいません。」
嘉隆は、後悔の念に押しつぶされそうになりながら頭を下げる。
「はぁ・・・別にいいわ。私も良くなかったわね。」
零の母はため息混じりに少し俯いた。
「そ、その。お父さん!お母さん!
提案があります。」
嘉隆は、ずっと考えていた。
この日、どうすれば色々上手くいくのか。
「ナンダ?」
零の父親は見た目ににそぐわす、以外とおっとりした性格の様で、嘉隆の言葉を聞いてくれる様だ。
「俺は、今日、零と付き合います!」
「だ、だから!」
零の母は少しイライラしている。
「キイテヤロウ。」
零の父は、母を諭す。
「わ、分かった。」
「ありがとうございます。
まず、俺は高校を卒業したら就職するつもりです。家庭が裕福ではないので。
高卒の男に、娘はやれないと言われるかもしれないですが、俺は引く気はありません!零のそばにずっと一緒にいるって約束したから!ずっと寂しい思いをしてきた零のそばにずっといます!」
「私達への当てつけかしら?
別に、零のパートナーまで口出しするつもりは無いわ。」
「ワタシモダ。」
「えっ?」
反対されると思っていた嘉隆は拍子抜けした。
「ソレデ?」
「それで、俺、就職するまではそう言う事は我慢します。絶対我慢します!
だから、付き合うのを許して欲しいです。」
「イイダロウ。ソノカワリ、ガマンデキナカッタトキハ、ワカレロトハイワナイ、レイヲヒッコシサセル。
イイナー?」
「は、はい。
・・・それから、俺が就職まで我慢できた時は、ご褒美を下さい。」
「ゴホウビ?アツカマシイヨナ。」
「お、俺はわがままなんです!
欲しいご褒美は・・・・。
家族になる努力をして下さい。
週に一度、いや、月に一度でもいい、零と3人で、仕事は無しで、過ごす時間を作ってやって下さい!
・・・お願いします!」
嘉隆は、頭を下げた。
「・・・ソンナコトカ。イイヨ。」
嘉隆は簡単に受け入れてくれた零の父を見て、きょとんとしている。
「レイ。」
「な、何?」
「イイコダナー。」
零の父は、嘉隆を気に入った様だった。
零の母は、少し不満気だったが、反論はしなかった。
「じゃ、じゃあ、せっかく家族が揃ってるんで、邪魔者は失礼します。」
嘉隆は、立ち上がり玄関へ向かった。
玄関を出た嘉隆を追いかけてきた零も玄関を出てドアを閉める。
「嘉隆。ありがとう。」
「なんかごめん。
でも、これで俺達も恋人同士だな。」
「うん!ロマンチックな告白じゃなかったのは残念だけど、私にとってはこれ以上無い、最高の告白?だったよ!」
ちゅ。
零は、嘉隆の頬にキスをした。
「れ、零?」
「これはアリだよね?恋人なんだし。
おやすみ。」
「あぁ。おやすみ。」
零は恥ずかしそうに、玄関を開けると、手を振って入っていった。
「零・・・俺は本当に我慢できるのだろうか?」
嘉隆は、不安に襲われながら玄関のドアを開けた。
「零、何してるの?」
「もう遅いし、泊まっていくかと?」
零は、唯や真子、嘉隆も。が泊まりに来てもいいように、布団を用意していた。
「ワンセットしかないんだけど。」
零はそういいながら、ベッドの横に布団を敷いた。
「アリガトウ。」
「まぁ、たまには良いわね。」
父と母は、背中を向け合いながらも、布団に横になった。
「お父さん、お母さん、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
「オヤスミ。」
特に会話も無かったし、何か変わった様でも無かった。
それでも、家族3人が並んで眠っていられる事が嬉しかった。
(嘉隆と出会わなければ、こうなる事も無かったんだろうな・・・嘉隆、ありがとう。)
零は少し幸せを感じながら、目を閉じた。
零が目覚めると、カーテンの隙間から光が差し込んでいる。
「もう朝か。」
零が体を起こすと、父と母は、抱きしめ合って眠っている。
二人とも目尻に涙がたまってる様に見えた。
「仲直り?」
零が呟くと、父と母はゆっくりと目を開けた。
二人は驚いた様な仕草で、起き上がって離れた。
「・・・・。」
沈黙が流れる。
母は、はっとした様に零を見た。
「今何時?」
「6時半だよ。」
「大変!ホテルに戻って用意しなきゃ!シャワーも浴びないといけないし、ギリギリだわ!」
母は立ち上がった。
「ワタシモダ!」
父も立ち上がり慌てている。
「零、またね!」
「レイ、マタキマス!」
二人は慌ただしく出て行った。
「あーぁ、ご褒美タイムは終わりか。」
零は寂しい気分になった。
「でも、今までで一番幸せな家族の時間だったな。」




