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仕方なく「イケメンで高身長な異国の王子様」を俺は演じる。  作者: 蓮太郎


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24/29

ホームシック。

「わぁーーー!!」


一夜明け、6人は小さなビーチにやって来た。

海は綺麗で、人は疎ら。

ほぼ貸し切りのビーチに、真子は大興奮している。

真子は海が好きな様だ。

叫び声を上げると、一人海に走って行く。

「待てよ真子ー!」

大和は、走り出した真子の後を追う。


バシャーん!

真子と真子を追いかけた大和は、浅瀬を走り、体が浸かるくらいの深さのところまで来ると、海に飛び込んだ。


「気持ちいいー!」

真子は叫んでいる。



「ねぇ、真子ってあんなだっけ?」

唯は、自分が担当しているポジションを奪われた気分だった。

「確か違うよな。」

慎太郎も、同意見だった。


「よっぽど海が好きなんじゃないか?」

嘉隆は、真子を見守る様に言う。


「ところで、零はなんでシャツ着てるの?」


「昭和の叔父様がうるさくて。」


「え〜!やばい、やばい!

昭和の叔父様もヤバいけど、いう事聞いてあげる零もヤバいよ〜!」


「そ、そうかな?」


「そうだよ!昭和の叔父様は、私と真子の水着姿、バッチリみてるんだから!

ずるいよ!」


「・・・た、確かに。」


「おぃ、唯。いらん事を言うな。」

嘉隆は、不満気にする。


「何よー!じゃあ、九鬼くんは、零に目隠しされるべきよ!」


「確かに!」

零は、思いついたように、唯に同調する。


「俺は零以外興味ないから。」

嘉隆は、バッサリと言い切る。


「ちっ、不愉快だ。昭和の叔父様はほっといて、慎太郎、いこー!」

唯は、慎太郎の手を引いて海へ走り出した。


「零、シャツ脱ぎたいか?」


「別にいいよ。嘉隆には見せたいけど。」


「そ、そうか。

・・・・海、俺達も行くか?」


「私・・・泳げないから。

と、言うか、海も水着も初めてなんだ。」


「じゃあ、教えてやるよ!」

「う、うん。少し怖いけど、お願い。」


嘉隆は、嬉しそうに零の手を引いて走り出した。


「ま、待ってよ!」


バシャ、バシャバシャ。

嘉隆は、零はの手を引いて、浅瀬をゆっくり歩く。

腰の辺りまで浸かると、零は立ち止まった。

「こ、怖い。」


「じゃあこの辺りで泳ぐ練習しようか。」

嘉隆は、零の方を向くと、両手を掴んだ。

「さぁ!手を持ってるから泳いでみろ!」

嘉隆は、ニヤニヤしながら嬉しそうに言う。

「さぁ!と言われても。嘉隆は泳げない私の気持ちが分かって無い。」


「そ、そうか・・・じゃあ、まずはこうしよう!」

嘉隆は、零の横に回ると、腰の辺りと、胸の少し上の辺りに来る様に測り、腕を水面に浮かべた。

「さぁ、乗れ!」


「なるほど、ラッキースケベ狙いだな?」


嘉隆は目を細めて零を見る。

「つべこべ言わずに、さぁ!」

嘉隆は珍しく真剣だ。

零に泳ぎを本気で教えようとしている様だ。


「嘉隆、ボケは拾ってくれ。

こっちが恥ずかしくなる。」


「余裕が無いと、話し方戻るんだな〜。」


「ゔ〜。・・・いくぞ。」


「あぁ、来い、受け止めてやる!」

零は、海に飛び込む様に、嘉隆の腕に体を預けた。

「おー!いいぞ!零!上手い!上手い!」


「そ、そうか?浮いてる〜。た、楽しい。」


「あぁ、初めてにしては上出来だ!

次は顔をつけてみろ!」


「それは無理だ。」


「泳ぐ気あるか?」


「ある!」

零は誇らしげに言う。


「困ったな〜。じゃあ、バタ足してみろ。」


「う、うん。」

零は、足をバタバタとするが、体が沈む。

「海水なのになんで沈んでんだ?」

嘉隆は不思議そうにする。

「ダメだ。疲れた。」

零は疲れて足を付こうとしたが、地面に足が付かない。


「よ、嘉隆!足が付かない!」

平常心を失った零を見て、嘉隆はニヤニヤしている。

「おのれ!嘉隆!図ったな!」

零は恐怖のあまり、嘉隆にしがみついた。

「れ、零。」

嘉隆は、体に色々と柔らかい感触を全身に感じる。

「嘉隆が悪いー!」


「分かった、分かった。

落ち着け!沈むって!」

嘉隆は、命からがら、零を抱えて浅瀬まで泳いだ。


ようやく地に足がついた零は、怒っている。

「バカー!本当に怖かったー!」

零は嘉隆に不満をぶちまけると、岸に向かって歩き出した。


「零〜。ごめんて。」


「もう、泳ぐのイヤだ。」

零は、本気で怖かった様だ。


「もう泳ぐの終わりかー?」

大和が岸に向かう嘉隆に声をかける。

「怒らせてしまった。」


「何やってんだよ〜。」

大和は呆れている。

「みんなは楽しんでくれ!」

嘉隆は、岸に着いた様子の零を追いかけた。


「零〜!ごめん。」


「もぅ、いいよ。嘉隆は泳げる様にしてくれようとしたんでしょ〜。」


「そうだけど、やり過ぎた。」


「分かればいいよ。」

零は、嘉隆の手を握った。

「あっち、行ってみよ?」


零は、浜辺の先に続く道を指さした。


「いいぞ。」


少し進むと、岩場が広がっている。

「あー!カニ発見!」

零は、嬉しそうに岩場に降りた。

「嘉隆!岩場には色々な生き物がいるぞ!」


「そうだな。零、足元きをつけろよ!」


「うん!」

零は、岩場の水たまりを見て楽しそうにしている。

「嘉隆!タコだ!」

零が興奮してタコに近づこうとする。

「キャ!」

海藻でヌメヌメした岩に足を滑らせて、体制を崩した。

「ほら、行っただろ。」

嘉隆は、零の体を支えた。

「危なかった。」

「き、気をつけろよ。こんなとこでこけたら大変だからな。」

嘉隆は、零を支えながら顔を赤くして、そっぽを向く。


「うん。ありがとう。」

零は、嘉隆に支えられながら、辺りを見回した。

「嘉隆。」


「何だ?」


「ここなら、誰からも見えないよ。」


「そ、そのこころは?」


「初めて買った水着、見てよ。」


「えっ?うん。」

嘉隆は、顔を少し赤くした。

零は、お構い無しに、シャツを脱ぎ出した。

「嘉隆、助けて!濡れてて脱げない!」


「はぃはぃ。」

首にシャツが引っかかった零に嘉隆は手を伸ばす。

「れ、零。じっとしろ!」

嘉隆の伸ばした手は、暴れる零の胸元に到達した。

「キャ!」

「ご、ごめん。」

嘉隆は、焦って手を引っ込める。

一度脱ぐのを諦めた零は、シャツの隙間から顔を出した。

顔が赤い。

「ラッキースケベだ。」

「だ、だな。」

「今度は、ちゃんとしてよ?」

「う、うん。」

嘉隆は、慎重に手を伸ばし、シャツを脱がせた。

「こ、これは非常につらい。」

嘉隆は、零のシャツを手に俯く。

「嘉隆、見て。可愛い?」

嘉隆は、恐る恐る零を見た。

「う、うん。可愛いを通り越して・・・綺麗だ。」


「嬉しい。」


「そ、それは良かった。」

嘉隆は零に見惚れている。

「嘉隆くん、私は鼻の下が伸びるという現象が実際に起こり得る事を今初めて知ったよ。」

零は、イタズラに微笑んだ。

「うるさい。」

嘉隆は、口元を手で隠して、そっぽを向く。

「零、もういいか?シャツ着てくれ。」

遠くを見ながら手に持ったシャツを零に差し出した。


「もぅいいの〜?」

零は、悪い顔をして嘉隆の顔を覗き込む。

「あーー!!」 

嘉隆は、空いている手で頭をグシャグシャすながら、煩悩を打ち消す様に叫んだ。

「あらあら。何かご要望でも?

・・・私は何でも受け入れるよ?」


零は、嘉隆に擦り寄る。

「・・・ダメだ。ホームシックにかかった。」

嘉隆は、諦めた様に呟く。

「・・・おいで!」

零は、思い出した様に両腕を広げた。

嘉隆が、素直に零の胸元に顔を埋めると、零は嬉しそうに嘉隆を抱きしめた。


「零。」


「なぁに?」


「もう、ご両親に顔向けできません。」


「前もしたから大丈夫だよ。」


「そ、そうか。もうしてたな・・・前も思ったけど、これ、幸福感がすごい。

・・・前にこうしてもらった時に、俺、零が好きだって気づいた。」


「奇遇だね。私もあの時に嘉隆の事が好きって分かった。」


「奇遇だな。」


「そうだね。」


「そろそろ、許してもらえませんか?」

嘉隆は、許しを請う。


「あと少し。」

零は、このまま、離したくないと思った。


二人が幸せそうにしていると、岩を踏む足音が聞こえる。

二人が行動する間もなく。

「あー!なんか抜け駆けしてるー!」

休憩しようと言う話になって、誘いに来た唯が二人に声をかける。

唯がお構い無しに近づいてくると、嘉隆と零は離れた。

「二人は何してるのかな〜。」

唯は意地悪な顔をしている。

「スキンシップだ。」

零は、平然と答える。

「過激なスキンシップだね〜。

・・・・。」

唯は、自分の胸元と零の胸元を交互に見て俯いた。

「休憩しよってさ。零、今すぐシャツ着て。」

「何で?」

「九鬼くんが正解だよ。それは慎太郎に見せないで!」

唯は不機嫌そうだ。

「じゃあ、休憩しに行くかー!」

「なに何事も無かった風にしてるのかな?」

唯は、嘉隆を目を細めて見ている。


「魔が差した。今後は気をつけます。」


「別にいいと思うよ。まぁ、九鬼くんが我慢したいなら勝手にすればいいと思うけど。」


「帰ったらさ、零の両親に会おうって話してるんだ。俺達も、唯達や、大和達みたいになりたいから。」


「そう。零、良かったね!」

唯は機嫌をなおした様で、零に微笑みかけた。

「うん!」

零は、嬉しそうに笑った。

「それはそうと、零は早くシャツ来て。」

唯は一刻も早く隠すべきだと悟った。


3人は、来た道を戻り、慎太郎達と合流した。


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