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仕方なく「イケメンで高身長な異国の王子様」を俺は演じる。  作者: 蓮太郎


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それぞれの幸せ。大和と真子

「ハァハァハァ・・・ハァハァハァ。」

(零、どこに行ったんだ。)


嘉隆は、唯を探して走っている。

家からの坂を下った所で立ち止まった。

「右か、左か。」

(零、悲しそうにしてたって言ってたな。人は逃げる時、左に曲がるって言うよな・・・左に行こう。)

嘉隆は走る。


しばらく走ると、ウッドデッキの先に、ブラブラと揺れる足がのぞいていた。

(零?)

嘉隆は、真っ直ぐそこへ走った。

「零!ハァハァハァ。」


「嘉隆?」


「ハァハァハァ。一人で何してんだよ!」


「そんなに息をきらせてどうしたの?

私に興奮しているの?」


「バカ!走ったんだよ!零が悲しそうに出て行ったって唯に聞いたから。」


「そう。」

零は、悲しそうに俯いた。


ギコ。

嘉隆は、黙って零の隣りに座った。


「嘉隆。」


「何だ?」


「ここは落ち着くね。」


「うん。俺も、ここで本読んだりするのが好きだった。」


「そっか。」


二人は、しばらく黙ったまま、海を眺めていた。




「あれ、何だろ?」

真子がウッドデッキを指さした。

「行ってみようか?」


真子と大和は、ウッドデッキに向かって歩く。

「待って。」

真子が小声で大和を止めた。

「どうした?」


「あれ、見て。」


「あ〜、先客か。」


「ここは、零と嘉隆に譲ろ。」


「そうだな。」


二人は、零と嘉隆に気づかれないように、ウッドデッキの後ろを通り過ぎる。



「あー!浜辺だー!」

真子は嬉しそうに駆け出した。

「真子、危ないぞー。」


「大和も早く来てー!」


「仕方ないな。」

大和は、真子を心配して、走って追いかける。

大和が追いつくと、真子は楽しそうに波の動きに合わせて、進んだり戻ったりしている。


「濡れるぞー。」

バサッー。

「キャー!」


「ほら、言わんこっちゃない。」

大和は呆れて真子の手を引いた。

「靴がずぶ濡れー。」


「まったく。あそこに座ろ。」


「ゔー。分かった。」

真子は水の染みた靴が気持ち悪くて、うなだれている。

二人は、浜辺に下りる階段に座った。


「さぁ、お姫様。足を。」

大和は、真子の片足を持ち上げた。

「えっ?」

真子は少し驚きながら、顔を赤くする。

「他意はない。靴、脱いで乾かすぞ。」


「う、うん。」

大和は、片足づつ真子の靴を脱がせて、真子と反対側の自分の隣りに並べた。

真子の両足は、大和の太ももの上に乗っている。


「ね〜、大和。これ嫌だ。」


「何で?」


「大和を足蹴にしてるみたいだし。」


「じゃあ。」

「キャ。」

大和は、真子を軽々と持ち上げ、

お姫様抱っこ、膝上バージョンの様な状態になった。


「もぅ、びっくりした。」

「今日のお姫様は、文句が多いな。」


「・・・ごめんなさーぃ。

大和、ありがとう。」


「どういたしまして。」

抱えられていた真子は、大和の首に腕を回してつかまった。

大和は、照れた表情をする。


「か、顔、近いな。」


「近いね。こんなに近くで大和を見たの初めて。」


「俺も。」


「そ、そうか・・・見てるって事は、見られるリスクをおかすことになるのね。」


「そうだな。真子の肌、白くて綺麗だな。ホッペタプニプニしてそう。」


「触る?」


「触れない。」

大和は、真子を抱える両手をチラチラと見る。


「手・・・以外は?」

真子は、真っ直ぐ大和を見つめる。


「・・・。」

大和は、真子の体を引き寄せ、頬に唇で触れた。

「・・・プニプニで気持ちいい。」


「私も、大和の唇がプニプニで気持ち良かった。」


「真子。」


「はぁい?」


「その。」


「キス・・・したいのかな?」


「・・・はい。」


真子は、大和に回した腕に少し力を入れて、目を閉じたまま顔を近づける。


「・・・・・。」


二人は、初めてキスをした。

真子は、先程とは違い、恥ずかしそうにうつむいた。

「しちゃった。」


「うん、してしまった。」


大和は、真子を抱いたまま立ち上がると、海に向かって走った。

波打ち際に立つと、海に向かってさけんだ。

「幸せだー!!」


「ふふっ。私も、幸せだー!!」

真子も、大和に抱かれながら、海に叫んだ。


「零達に聞こえちゃったんじゃない?」

「かもな〜。感情のやり場が無かったから、海に受け止めてもらった。」


「幸せ。末永くよろしくお願いします。」

真子はまた、大和を真っ直ぐに見つめた。

「こちらこそ、ずっと一緒にいてください。」


「もちろん!」

真子は、大和にしがみついた。



大和は真子を抱えたまま、また階段に座り、しばらくボンヤリと海を眺めていた。


「靴、乾かないな。」


「うん。」


「仕方ない、このまま戻るか。」

大和は、靴を真子に持たせると、立ち上がり真子を抱いたまま、ゆっくりと歩き出した。


「誰かに見られたら恥ずかしいんだけど。」


「わがまま言うな、お姫様。」


「はぁ〜ぃ。」


大和と真子は、ゆっくりと嘉隆の家に向かった。


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