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仕方なく「イケメンで高身長な異国の王子様」を俺は演じる。  作者: 蓮太郎


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それぞれの幸せ。唯と慎太郎

「あー、ぁ。

・・・嘉隆のバカ。」

零は、一人トボトボと港を歩いている。

「・・・嘉隆・・・言い寄られて付き合ったりしないよね?

沙菜、あの勢いなら、抱きついたり、嘉隆の唇をうばったり・・・嫌だよ。早く帰ってこないかな。」

満点の星空、海の風。

気持ちいいはずの海は、零の不安を掻き立てる。

「あれ?何だろ?」

零は、海沿いにあるウッドデッキの様な物を見つけた。

トボトボと歩き、ウッドデッキに乗ってみる。

「展望台・・・と言うには低いな。

でも、なんだか落ち着くな。」

零はウッドデッキに座ると、ボンヤリと星空を眺める。

ウッドデッキは、海以外の面が壁になっていて、守られているような感覚につつまれ、居心地が良かった。




「ただいまー!」

嘉隆は、庭に戻ると零の姿が無い事に気付いた。

「零は?」

嘉隆は、大和達に問いかける。

「九鬼くん、零と会わなかったの?」

唯は不思議そうに問いかけた。

「えっ?」

「散歩行くって、寂しそうに出て行ったけど?なんだか零、悲しそうだったけど?」

「そ、そうなのか?俺、探してくる!」

嘉隆は、走り出した。


「あら〜、これは熱い恋の予感。」

唯はニヤニヤとしている。

「どういう事?」

慎太郎は不思議そうだ。

「私達は、私達で楽しもう。」

唯は慎太郎に腕を絡めると、立ち上がる。

「私達、ちょっと散歩いってきまーす!」


「お、おぃ!」

大和の静止に聞く耳を持たずに、唯は慎太郎の手を引き散歩に出かけた。


大和は、申し訳無さそうに嘉隆の両親を見る。

「勝手な奴らですいません。

俺達片付けしますね。」


「ホントにどうしようもない子ねー。

零ちゃんを泣かすなんて!」

嘉隆の母は、怒り狂っている。


「そこですか?!」

大和は少し笑った。

「そう、そこよ!

あっ、大和くんと真子ちゃんも散歩行って来なさい。せっかく遊びに来たんだし。」


「でも片付け大変じゃないですか?」

真子は申し訳無さそうにする。


「いいの、身代わりの働き手がマヌケな顔して残ってるんだから。」


「それ・・・俺の事?」

達也はギクッとした表情で嘉隆の母をみる。

「働かざる者食うべからずよ!」

嘉隆の母は、恐る恐る立ち去ろうとする達也のTシャツの首元を掴んだ。


「ですよね〜。」

達也は観念した様だ。

「お父さんは酔っ払って使い物にならないから、頼むわよ!その代わり、嘉隆がいる間、毎日でも晩御飯食べに来てもいいらね〜。」


「わかりましたよ〜。」


「さっ、さっ、二人は散歩!」

嘉隆の母は、二人の背中を優しく押す。


「ありがとうございます。

ちょっと行ってきます!

悪いな達也!」


「いいって事よ!」


ニコニコと見送る達也に手を振り、大和は嬉しそうに真子の手を引いて、散歩に出かけた。




嘉隆の家から海に出て、左に進むと零のいるウッドデッキがある。

右に進むと、神社がある。


唯達は、右に曲った。

静かな港に、波の音が静かに響く。

唯は、慎太郎の手を取った。

「慎太郎。」


「何?」


「船から降りた時ね、赤い橋が見えたの。そこに行きたい。」


「うん。行ってみよ。」


「・・・暗いね。ちょっと怖い。」


「大丈夫、俺がいるから。」


「ホントに〜?守ってくれるの?」


「うん。何かあったら時間稼ぐから走って逃げて。」


「ふふっ。もうちょいカッコ良く守ってよ。」


「それは難しいな・・・ご覧の通りこんな体なんで。」


「わかりましたよ〜。」


「あっ!あの橋だよ!鳥居もあるー!」


「本当だ!」


唯と、慎太郎はゆっくりと歩き、

赤い橋を渡った。

「鳥居の先はちょっと怖いな。

あっちの灯台に行こうよ!」


「いいよ。」


「慎太郎は暗いの怖くないの?」


「一人だと怖い・・・唯といるから怖いよりも・・・。」


「怖いよりも?」


「ドキドキしてます。」


「・・・私も。」

唯は珍しく顔を少し赤くして俯いた。

「唯、前見て歩かないと危ないぞ。」


「う、うん。慎太郎が手を繫いでくれてるから大丈夫。」


「うん。灯台、到着だな。」


「うん。風が気持ちいい!」


「そうだな。旅行に来たみたいで今日はすごく楽しかった。」


「私も!来るまでは地獄だったけど。」


「帰りもがんばらないとな。」


「今それ言わないの。」


「ごめん。」


「慎太郎。」


「何?」


「私ね、・・・やっと灯台を見つけたの。」


「ん?灯台、ここにあるな。」

慎太郎は、灯台をコツコツと叩く。

「そっちじゃなくて、こっち。」

唯は、慎太郎の胸の辺りに、掌をあてる。

「ん?」

慎太郎はきょとんとしている。


「私、ずっと暗闇の海を航海してきた気がする。灯台の役割ってね、遠くの船にここだぞーって教えてくれる事じゃない?」


「うん。そうだな。」


私にとって、灯台は慎太郎だった。

慎太郎が真暗な暗闇に一筋の光でここだぞーって言ってくれた気がしたの。

だから私は、ここに来た。

私・・・その・・・慎太郎の事が!」

「待って!」


「・・・えっ?」

唯は、慎太郎に告白しようとしたのを止められた。

慎太郎の心の中が分からず、不安そうな顔をする。


「そ、その。」


「その?」

唯は不安そうな顔をする。


「唯!好きだ!俺の彼女になって下さい!」

慎太郎は、自分でも驚くくらい大きな声がでた。

「ふふっ。みんなに聞こえちゃうよ?」


「いいよ!絶対に俺から言いたかったんだ。」


「ありがとう。」

唯は、目尻に涙をためながら微笑んだ。


「な、なんで泣くの?・・・やっぱり、俺じゃダメ?」


「あ〜ぁ、せっかくカッコ良かったのに。台無し〜!」

唯の目尻にたまった涙は、頬を伝う。

「私ね、初めて本当の恋をしたと思う。

慎太郎は、飾りじゃないと思えるし、告白されてこんなに嬉しいの、初めて!

だーーい!好き!」

唯は、慎太郎に抱きついた。

「彼女にして下さい。」


「うん!大好きだ!」

慎太郎の頬にも涙が流れる。

「えっ?何で慎太郎も泣いてるの?」


「貰い泣き?それと、嬉しすぎて涙が。」


「ふふっ。末永くよろしくお願いします。」


「こちらこそ。」


慎太郎と唯は、灯台の下でしばらく幸せの余韻に浸った。

唯は、慎太郎の腕の中で幸せそうにしている。


「慎太郎。」


「何?」


「・・・キスしてー。」

唯は、可愛くおねだりする。



「えっ?今付き合った所だけど?」

慎太郎は、心の準備ができてない様子だ。

「関係無い。慎太郎とはずっと一緒にいたいから。」


「う、うん。俺も、唯とずっと一緒にいたい。」


「・・・じゃあ、いいでしょ?」


唯は、慎太郎の腕の中で、慎太郎を見つめて目を閉じた。

慎太郎は、覚悟を決めて目を閉じて唯に顔を近づけた。


 ゴン。


「痛いよ〜!」

唯は、ムスッとしておでこをさすっている。

「・・・ごめん。」

慎太郎は、落ち込んで俯いた。

「慎太郎。」


慎太郎は、顔をあげる。

唯の両手は、慎太郎の両頬に触れた。

目を閉じた唯が近づいてくる。

慎太郎は、棒の様に固まり、目を閉じた。


「・・・。」


「次は、慎太郎からしてね。」

唯の微笑む顔が愛おしいすぎて、慎太郎は唯を抱きしめた。


「次は上手くできる様に頑張る。」

「頑張って。」


二人は、海風に吹かれながら笑った。


「ねぇ。慎太郎。」


「何?」


「信じないかも知れないけど・・・今のが私のファーストキスだよ。」


「えっ?そうなの?」


「あ〜ぁ、そうなりますよね〜。」


「ごめん。」


「いいですよ〜だ。

私、分かってたんだと思う。

本当に好きじゃない人と付き合ってるって。だから、求められたら拒んだ。

そしたらね、決まってしばらくしたらフラれるの。」


「・・・。」

慎太郎は不機嫌そうにしている。


「ご、ごめん・・・こんな話、聞きたくなかったよね?」


「違う。唯が付き合ってきたやつらに怒ってた。ひどい事するなって。」


「・・・ありがとう。」


「何もしてないよ。」


「そうだね。でも、ありがとう。」


「う、うん。」


「そろそろ戻ろっか。

お片付け手伝わないと、大和に怒られそう。」


「確かに。」


慎太郎と唯は、立ち上がり手を繫いで、

嘉隆の家へと、ゆっくりと歩き出した。


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