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仕方なく「イケメンで高身長な異国の王子様」を俺は演じる。  作者: 蓮太郎


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18/29

王子様の国へ。

と、まぁ昨日は幸せすぎて、心が満たされたし、零の事は好きだ。

だからってこの状況は許せん!


嘉隆は、大きめの肩からかけるタイプのカバンをタスキがけにして、キャリーバッグをゴロゴロいわせながら引きずっている。

嘉隆の荷物といえば、キャリーバッグの上にちょこっと乗った小さめのバッグだけ。

「零・・・昨日より荷物増えてるよな?」


「あはは。」


「笑って誤魔化すなよ。」

嘉隆は、荷物無しで凛とした佇まいで歩く零を見て不満気だ。

(だが、ワンピース姿。可愛い。可愛いすぎる。荷物を持たせないでずっと見ていたい。)


「ごめんね。嘉隆が帰った後、嘉隆が荷物持ってくれるっていうから、諦めた荷物が諦めきれなくなって、カバンがふたつ増えました。」


「別に重くはないけどさ、流石にこんなにカバン持ってるの恥ずかしいわ!」


「一つ持ちます。」

零は、カバンに囲まれた嘉隆のマヌケな姿を見ながら、笑うのを堪えるのに必死だ。

「いいよー。でも笑うなよ〜。」

嘉隆は、こんな状況でも楽しいなと、思っている自分が不思議だった。

ブーブー言いながらも楽しく歩いて、二人は駅前に着いた。



「あはははっ!マヌケな姿ー!」

嘉隆は、駅前に着くと、先に着いていた4人に笑い者にされた。

(前言撤回!不愉快だー!)

嘉隆は、心の中で叫びながら駅の中へ進んだ。


一行は、電車に新幹線、バスを乗り継ぎ、ようやくフェリー乗り場に着いた。


「フェリー初めて!楽しみー!」

珍しく真子がはしゃいでいる。

「俺も楽しみ。」

慎太郎もワクワクしてモジモジしている。

「旅とは不思議だな。

いつも大人しい目の二人がはしゃいでいる。」

嘉隆は一人、呟きながら大和と唯を見た。

「で、お前ら二人は大丈夫か?」

大和と唯は乗り物酔いが激しい様だ。

「フェリーはもっとキツイと思うが、少し休んで次のフェリーにするか?」

嘉隆は二人を気遣う様に言う。


「大丈夫だ!」

「大丈夫よ!」

二人は気を遣っている様で、フェリーに歩き出した。

「ホントに大丈夫?」

零は二人を追いかける。

「やばい!」

「私も!」

大和と唯は、平常心を失った様で、堤防に走る。

遠くからも見えた。

口から出るキラキラが。


「唯、大丈夫か?」

「大和、大丈夫?ちょっと休も?」

慎太郎は唯の背中を、

真子は大和の背中を、

優しくさすっている。


スッキリした大和と唯は振り向いた。

『嫌いにならないでください!』

同時に、切実に訴えた。


『ならないよ。』

真子と慎太郎は、心配そうにしている。


「落ち着いたか?ちょっと休もう。」

嘉隆は、自販機で飲み物を買ってきた。

「ほら、二人はスポドリ。」

「あはははっ!まるでパシリだぞ!」

カバンをタスキがけにし、ゴロゴロカバンを横に置き、ペットボトルを6本抱えた嘉隆を見て、5人とも笑っている。

「零まで・・・やっぱりやらない。」

嘉隆は、スネた。

「嘉隆、ごめん。」

零は、申し訳なさそうにしながらも、口元が緩い。

「はぁ。」

ため息混じりに嘉隆は諦めた様な表情でジュースを差し出した。

「嘉隆、すごいな。」


「何が?」

嘉隆は、突然褒めてきた大和を怪訝そうに睨む。


「いや、酔ってる二人のスポドリはともかく、みんなの好みが分かるのが。」


「今までそれぞれ飲んでたのを見てきたから、なんとなくだ。」

嘉隆は褒められて満更でも無さそうだ。


「統計?記憶力もいいんだな。

人の事も良く見てる。

すごいな!」

大和は嘉隆を過剰に褒めたが、口元が緩い。


「お前なー、やっぱりこのフェリー乗るか?」

嘉隆は不機嫌そうだ。

「すまん!悪かった。

ちょっと休ませてくれ。」

大和は、空元気だったようで、唯の座るベンチの隣りに座った。

大和と唯は、ぐったりした様子だ。


「すまないな。乗り物酔いする二人には長旅きつかったな。」


「大丈夫。来たかったから。」

唯は、しんどそうにしながらも、来れて良かったと思っている。

「右に同じく。」

大和も、来るのは楽しみにしていた。


しばらく海風に吹かれて、二人は元気を取り戻した。

「よし、行けるか?」

嘉隆は、大和と唯に問いかける。


「行けるかも!」

「俺も!」


「・・・かもなんだな。

あと少し、がんばれ。」

嘉隆は、心配そうにしている。


6人はフェリーに乗り込む。

「甲板にいよう。

中よりはマシだろうし。」


ブーーー。

フェリーが進み出すと、風が気持ちいい。


「気持ちいー!」

零ば風に吹かれてご機嫌そうだ。

風に吹かれる、膝の辺りまでのワンピース姿の零を見て、嘉隆は近づくと、後ろから太ももの辺りに触れた。


「えっ?えっちー!

昨日だけじゃなかったのかな?」

零は、少し照れた様に、喜んでいる。

「ち、違う。・・・その、スカートが。」


「安心して下さい。履いてます。」

零は、嘉隆の言いたいことに気づいた零は、少し嬉しそうだ。


「そ、そういう問題じゃない。

スカートが風で舞い上がるのが嫌だ。」


零は、ニヤリとして、嘉隆を見た。

「何?ヤキモチみたいなやつですか?」

 嬉しそうな零が微笑むと、嘉隆は不満気だ。

「ヤキモチみたいなやつだ。他の奴に見られたくない。」

嘉隆は正直に答えた。

「分かった。零は、嘉隆の手を引くと、船内に向かう。」


「零、ちょっと待て!」

嘉隆が切実に叫んでいるので、零が振り向くと、船内はカバンをタスキがけにしている嘉隆には狭かった様だ。

入り口でつっかえている。

「あはははっ!」

零は、嘉隆を見て思わず笑ったが、気不味そうにして繋いだ手を離すと、口を両手で抑えた。

「ギリギリ許してやるよ。」

不満気にする嘉隆に、零は手を出した。

「だから、入れないんだよ。」

嘉隆は不機嫌そうに言う。

「違うよ。カバン、こっちの下さい。」


「え?あぁ。」

嘉隆は、零にカバンを手渡した。

「ちょっと待ってて。」

零は、嘉隆からカバンを受け取ると、トイレに入って行った。

「何だ、トイレ行きたかったのか。」


嘉隆は、船内に入るドアの前でしばらく待っている。

「お待たせ〜!どうですか?」

零は、少し照れながら嘉隆を見つめる。


ワンピースから、零は白いズボンとヒラヒラした黄色の上着に着替えた様だ。


「か、可愛い。」

(零、わざわざ着替えてくれたのか。)

嘉隆は嬉しそうに、零を見つめた。

「ありがとう。」

褒められて、零は嬉しそうだ。


「こっちこそ。ありがとう。」

「うん。」

「ワンピースも可愛いかったけど。

その、ごめん。」

「いいですよ〜だ。あのワンピースは部屋着にしま~す。」


「か、風が吹かない所なら。」


「嘉隆、めんどくさいよ?」

「ひどいな。まぁ、そうだろうな。」

嘉隆は落ち込んだ様だ。

「そんなに落ち込むなよ。嘉隆が私の下着に興味津々なのは嬉しかったよ!」

零は、嘉隆を励まそうとする。

「ば、バカ!俺は・・・興味があるのは否定できない。」 

嘉隆は少し恥ずかしそうにしている。


「でしょーね。

あの二人が心配だから、戻ろ。」

「そ、そうだな。」



嘉隆と零は、大和達の所へ戻った。

「二人は大丈夫?」

「何とか耐えている状態だ。」

零が声をかけると、慎太郎が心配そうに答えた。

「あと少しだ。頑張ってくれ。」

嘉隆は少し申し訳なさそうに二人にに声をかけた。

大和と唯は、言葉を発することなく、片手を少しあげた。


「あれ?零、着替えたの?」

真子が零の服が変わったのに気づいた。

「うん。どう?」


「可愛いー!」


「ありがとう!」

零は褒められて、また嬉しそうだ。


「でも何で?」

真子は不思議そうにしている。


「こちらの昭和の叔父様が、ヤキモチみたいなのを妬いていらっしゃったので。」

零は、嘉隆を意地悪な顔で見つめる。


「はいはい、俺はどうせ昭和の叔父様だよ〜。」

嘉隆は、少し照れた表情で誤魔化した。


「九鬼くん以外と独占欲強め?零は苦労しそうだな〜。」

真子が、笑いながらいうと、

「ほっとけ。」

嘉隆はスネた様に俯いた。

「いっぱい独占していいよ。」

零は、恥ずかしそうに嘉隆の耳元で囁いた。



「あーーー!!地面だ!」

「地上だーー!!」

ようやく島にたどり着くと、大和と唯は感動の涙を流しながら喜んでいる。

「やばい。」

「私も。」

大和と唯はまた堤防へ走り出し、

海に向かってキラキラを産み落とす。

「お疲れ様。」

嘉隆は、そんな二人を労う様に声をかけた。

「ここが嘉隆の育った島か〜。」

零は、大和と唯を心配しながらも、抑えきれない喜びの中、島を見渡した。


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