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仕方なく「イケメンで高身長な異国の王子様」を俺は演じる。  作者: 蓮太郎


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取り調べ。

「じゃあ、8月3日の朝に、駅前集合で決定だな!」

大和が嬉しそうに叫び気味に言う。


いつもの6人は、放課後の教室で夏休みの予定を話し合っていた。

出発は8月3日、滞在は1週間程の予定だ。


「でも、みんな泊まりで行くの親が良く許してくれたなー。」

嘉隆は、安堵の表情だ。



「多分、泊まる先が友達の家だからだと思う。九鬼くんのご両親もいるしね。」


「なるほどな。」

唯の言う事に、嘉隆は納得した。


「じゃあ、予定も決まったし、ここからは尋問の時間ね。」

零が立ち上がり、唯と慎太郎の前に立った。

「零、どうしたの?」

唯は不思議そうにしている。

「唯、慎太郎、あなた達は、昨日、夜、あんな時間に一緒にいたのかな?」


「・・・・なるほど。」

唯は、小さく呟く。

その横で、慎太郎は乙女の様に縮こまる。

「さぁ!はけ!」

零は、ニヤニヤしながら続ける。


「あっはっは!バレてしまっては仕方ない!」

唯は、悪人を演じる様にいった。


零は、面白おかしく誤魔化そうとする唯を、目を細めなが見つめ、顔を近づける。

「唯?」

零は容赦なく確信に迫る。


「・・・まだ秘密。」

唯は少し照れた表情をして俯いている。


「あーそうか!」

零は、唯から顔を離し、体制を戻すと、

慎太郎をニヤリと見た。

顔を近づけて、口を開く。

「慎太郎、昨日は唯と何をしてたのかな?」

零はターゲットを慎太郎に変えた。

嘉隆達は、後ろでニヤニヤと興味津々に見守っている。

「べ、べつに。」

慎太郎も誤魔化そうとしていた。


「零、近いよ!」

顔を慎太郎に近づけていた零を、唯が引っ張る。

「す、すまない。」

つい話し方が戻った零は、申し訳無さそうにする。

「や、ヤキモチというやつか?」

零は、唯に問いかけた。


「・・・分かったよ、口をわろう。」

唯は、仕方無さそうに慎太郎の腕に絡みついた。

「今、口説いてる最中なの。」

唯は、少し恥ずかしそうな笑顔で言う。

「そうなのか?!」

零は、嬉しそうだ。

その後ろで残りの3人もワクワクした表情をしている。


「でも、私が強引に誘ったりしてるだけだから。」

唯は、少し寂しそうに言う。

「ご、ごめん。」

零は、問い詰めたのを少し後悔した。

「そ、そんな事ない。俺も楽しいから。」

ポツリと慎太郎が呟いた。

「本当?!」

唯は嬉しそうに目を見開き慎太郎を見つめた。

「う、うん。だから、ちょっと離れてくれ。」

慎太郎は満更でも無さそうに、顔を赤くする。

「う、うん。」

不意を突かれた唯は、我にかえって恥ずかしそうに、照れ隠しでくっついていた慎太郎から腕を離した。


「キャー。いい感じ!」

零は、嬉しそうだ。


「零、それくらいにしておいてやれよ〜。」

嘉隆は、零に釘を刺すように言う。

「はぁ〜ぃ。」

三組のカップルで、いつかデートをしたい。そう思う零だった。


学校からの帰り道、ああは言ったものの、嘉隆は、大和も。慎太郎の気持ちが気になって仕方がなかった。

男3人、女3人に自然と分かれて歩いている。

「慎太郎、お前は唯の事どう思ってんの?」

嘉隆が切り出した。

「相変わらず、ド直球な聞き方してくるよな。」

慎太郎は、警戒心の塊の様だ。

「教えろよー。」

大和もこの日ばかりは容赦がない。

「す、好き・・・かも。

良く分からないんだよ。」

俯いた慎太郎を見て、二人は、顔を見合わせて微笑む。

「慎太郎が恋か。」

大和が物思いにふけるように呟いた。

「最初は強引に誘われて面倒だったんだけどさ、気付いたら唯から誘われるの期待してたり、唯の笑った顔を思い出したりしてるんだ。」


「・・・恋、だな。」

嘉隆は、零との報復のやり取りの最中に段々と何かが変わる感覚を思い出していた。


「やっぱりそうか。」

慎太郎は不安そうだ。

「何で不安そうなんだ?」

「九鬼は、本当にド直球だな。」


「まぁ、島の人間はみんなこんな感じだ。」

嘉隆は、諦めろと言わんばかりだ。


「不安だよ。唯、可愛いからモテてるだろうし、今は好きだ、好きだって言ってくれるけど、俺なんかの事ずっと好きなのかって。」


「好きだって言われてるんだな!

だったら関係なくないか?」


慎太郎は、嘉隆を見た。

「何が?」


「モテてるとか、どうとか。

相手が誰だって一緒だよ。

俺だって零に愛想つかされたらどうしようって不安はあるぜ!」


「そ、そうなんだ?」


「そうだよ。俺も同じだ。」

大和も同意する。


「だからさ、唯の事が好きなら、慎太郎からも色々がんばらないとだぞ。」

嘉隆は、慎太郎の肩に腕を回す。


肩に回された腕を、慎太郎は放り投げるようにほどく。

「頑張ってみるよ。ありがとう。」


「ちっ、友情の証に肩を組んだのに。」


「重いし、暑苦しい。」


「はいはい。」

男3人の情報共有は終わった。


同じ時、少し距離を開けて歩いていた、女3人。

女だけになった事もあり、零の興味が爆発している。

「唯、唯!いつから?いつからなの?」


「う〜ん、良く分からない。

試験勉強の時くらいかな?

私と慎太郎、同じ様に教えてもらいながら頑張ってたし、同じ境遇って所が始まりかな。

ちゃんと頑張って、結果も出してたし。

慎太郎、真面目で大人しいじゃない?」


「そうだね。」

「そう言う所が、いいなって。

やっぱり男は真面目に限る。」

唯は、過去を思い返すように、俯いた。


「唯が言うと説得力がある。」

真子は、頷きながら笑う。


「そうだよね〜、唯の好みって、派手なタイプだと思ってたし。」

零は何気なく言う。


「うん。前まではね。イケメン連れて歩いたら気分いいし、外見重視だったんだよね〜。」


「それが突然なんで慎太郎なの?」

真子は不思議そうに聞く。


「良く分からない。慎太郎といると楽だし、楽しいんだ〜。

それに、慎太郎、顔も以外とイケメンだし、背も高い。ヒョロいけど。」


「あはははっ!慎太郎に言っちゃだめだよ〜。」

零と真子は笑う。

「そうだね。何より、私の事を初めて飾り扱いしないで大事に思ってくれてるのが伝わってくるし、私も初めて飾りじゃないって思えたんだ。

ここまでくるの、大変だったんだよ〜。」


「なんかいいね〜。

良く頑張ったね、唯。

確かに、慎太郎は女子並にガードが硬そうだし、苦労が想像できる。」

真子は、前を歩く慎太郎を見ながら言う。


「うん。最初はメッセージで誘ってたんだけど、9割は断ってくるんだよ?

この私の誘いを!

逃げられない様に、みんなと別れた後とかに無理やりカフェに連れ込んだり、大変だったよ。」


「あはははっ!」

零と真子は、強引な唯が想像できて、笑った。


前の3人が立ち止まったのを見て、恋バナは終了した。


「じゃあ3日!明日から夏休みだな!」

大和はワクワクした様子で言う。


「あぁ、無理に誘ってたらごめんな、母さん楽しみにしてるからよろしく頼むわ!」


「私達も楽しみにしてるよ!」

唯が言うと、横で慎太郎が頷いている。


「じゃあまた!」


6人は、それぞれ二人に別れ、帰路にたった。


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