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仕方なく「イケメンで高身長な異国の王子様」を俺は演じる。  作者: 蓮太郎


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10/14

孤立。友情。

気持ちの通じ合った二人だったが、これまでと変わらない毎日を過ごしていた。

唯の告白の次の日から、変わった事といえば、次第に、朝のおはよう地獄が、二人を遠目に見ながらのコソコソ話に変わったのと、生徒達がだんだん近づいて来なくなった事。

1週間もたてば、二人に挨拶したり、話しかけてきたりする生徒はいなくなっていた。


「零、俺のせいでこんな事になった。すまない。」

少し前とは違う、朝の静かな廊下を歩きながら、嘉隆は零に申し訳なさそうにした。


「別にいいよ。この方が二人きりでいれるから。」

零は、嘉隆に近づき、耳元で囁いた。

「そ、そうか。」


「そ、それに。私が王子様とか変な事言い出したのが始まりなんだし。」


「ははっ。そうだったな。」

零は、嘉隆の前に出て振り返った。

「し、心配しなくても・・・その・・・責任は取ってあげる。」


「そうだな。責任、取って俺のそばにずっといてもらおうか。」


零は、嘉隆をからかったつもりだったが、照れもせずにまっすぐ見つめてくる嘉隆にドキッとさせられ、顔を赤くした。

「なんだよ、からかったつもりだったのか?」


「そうよ。」

零は頬を膨らませて、スネた表情だ。


「か、可愛い。」

嘉隆は、心の声がつい口から出てしまった。

「ば、ばか!」


そんな二人を遠くから見つめる視線。

唯は、噂を広めれば二人の仲が悪くなると思っていたが、二人は前よりも仲良くなっていた。

唯は、色々な意味で後悔しながら二人を見つめる事しかできなかった。


後悔する唯の事を恨んだりする事無く、

二人は正直な所、ホッとしていた。


こうして、二人の王子様とお姫様を演じる日々は終わりを告げた。


その日の放課後。

ほとんど人がいなくなった教室で、嘉隆と零は帰る準備をしていた。


「あの。」

二人が振り向くと、そこには唯が立っていた。

「ごめんなさい!」

振り向く二人に唯は深々と頭を下げた。


嘉隆は少し呆れた表情で、口を開く。

「反省したか?」


「うん。」


「なら、もういいよな?」

嘉隆は、同意を求める様に零を見た。

「うん。唯、私達、実はちょっと感謝してるの。」


「えっ?」

唯は不思議そうに二人を交互に見た。


「王子様とお姫様になって後悔してたし、いつかこうなるだろうなって思ってた。ちょっと楽になったから。」


「そ・・・ぅ。」

唯は、二人に恨まれて罵声を浴びせられると思っていたのもあり、戸惑っていた。


「気にするな。」

嘉隆は、唯の肩に優しく手を置いた。


「優しくしないで。」

唯は不満気に嘉隆の手を払いのけると、少し顔を赤くし、零の後ろに隠れた。

「西園寺さんは、こいつの変な距離感にやられたのね。」

唯は小さく呟いた。

「多分・・・あと、零でいいよ。」

「うん。ありがとう。」

二人は、嘉隆に聞こえない小さな声で通じ合った。


「やっぱりいい奴らじゃん!」

3人は話ていた後ろから話しかけられ、振り向くと、教室に残っていた男子生徒2人と女子生徒1人が立っていた。


「俺達の事分かるか?」

男は、目を細めながら嘉隆と零を見た。


「・・・。」

嘉隆は零以外に興味が無かったのもあり、このクラスメイト3人の名前も知らなかった。

黙っている嘉隆を助ける様に、零が口を開いた。

「知ってるに決まってるよ。

クラスメイトだし。」


「良かった〜。」

女子生徒は嬉しそうにする。


「第三席、大森おおもり 大和やまと。」

零は話しかけてきた男を見て呟き、続ける。

「第四席、石田いしだ 真子まこ。」

「飛んで第十五席、平井ひらい 慎太郎しんたろう。」


「でしょ?」

零は、嘉隆に伝える様に言うと、嘉隆を見て微笑んだ。


(ありがとう!さすがは零だ!もう覚えたぞ!)

嘉隆は、零と目を合わせて笑った。


「西園寺さんはさすがだな。」

大和は、皮肉を言いながら嘉隆をニヤニヤしながら見た。


(ば、バレてる・・・大三席、侮れない。)

嘉隆は、ごまかす様に口を開く。

「で、村八分の俺達に何かよう?」


「別に、俺達3人はお前ら2人を仲間外れにしてるつもりは無いよ。

だいたい、ちょっと考えたら分かるだろ?

異国の王子様とお姫様がこんな学校に通う訳ないだろ?」


「そうだな。」


「俺達は、他の奴らがお前ら2人を王子様とか言って勝手に騒いで、あげく嘘つき呼ばわりして呆れてんの。

入学してからお前ら2人がいがみ合ってたの見てたら分かったしな。どうせお互いを面白おかしく貶め合ってたんだろ?」


「ま、まぁ、そんな所だ。」

(第三席・・・こいつは中々やる奴だな。)


「でも、でもー!今は違うんだよねー?2人は付き合ったの?」

真子はワクワクした表情で零に詰め寄る。


「う、うん。付き合っては無いけどね。」


「な〜んだ・・・どういう事?」

真子は腑に落ちないという表情で、考えている。

「今はナイショ。」

真子の耳元で、零は呟いた。

「ちぇー。」

真子はつまらなさそうにする。


零と真子のやり取りを見ていた大和は、そろそろ話ていいかな?と、真子を見た。

真子は不満気に頷いた。


「前からさ、お前ら2人には興味があったんだけどさ、休み時間のたびに囲まれてるし近づけなくてさ。さっきのやり取り見ててやっぱりいい奴らだなって思ったんだよ。

・・・って、事で、今日から仲良くしようぜっ!て誘いだ。どうだ?」


嘉隆が零を見ると、嬉しそうにしている。

「あぁ、よろしく。」

嘉隆は、零を代弁する様に答えた。


「で、慎太郎は何でずっと黙ってんの?」

嘉隆は慎太郎に問いかけた。


「飛んで・・・第十五席。」


「あはははっ!傷ついてたのか?

慎太郎、十五席でもすごいと思うぞ?」

嘉隆は、励ます様に慎太郎の肩を叩いた。


「首席のお前に言われてもな。」

慎太郎は俯いた。


「慎太郎はさ、記憶力は俺達よりずば抜けていいんだけど、応用がきかないんだよ。」

大和は、フォローする様に言う。


「応用か。」

嘉隆は、考え込む様に俯き、顔を上げた。

「じゃあ、もうすぐ試験だし、このメンバーで勉強会しようぜ?

慎太郎、俺が応用の何たるかを叩き込んでやるよ!」

嘉隆はやる気に満ち溢れた表情で、慎太郎の肩に腕を回した。


「あ、あぁ。よろしく頼む。」

慎太郎は少しだけ期待した表情で、頷いた。


「あ、あの。」

唯が声を上げる。

「私も・・・いい?」

唯は、全員を見渡す様に言った。

「あっ、私、もう九鬼くんの事はキッパリ諦めたから。

私、ギリギリでこの学校受かったから、正直勉強が辛くて。」

唯は、零を見て補足する様に言った。


「いいよ。一緒に頑張ろ!

私がみっちり鍛えてあげるから。」

零は、やる気に満ちた表情で答えた。


「やったー!」

唯は嬉しそうに叫んだ。

「首席と三席と四席・・・飛んで十五席がいれば心強いよ!」


「・・・飛んで十五席。」

慎太郎がまた、俯いた。


「あはははっ。」

楽しい雰囲気が教室を包みこんだ。


こうして、村八分になっていた嘉隆と零に友達ができたのだった。

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