最終章 熱風 #06
”カワセミカゲロウ・オオルリカゲロウ共に離陸を確認、高度制限を解除。
綾瀬機・カワセミカゲロウ・ケイム、リフトアップ開始せよ”
「了解、出力上昇開始。リリース地点でアフターバーナーを全開にするわ」
”綾瀬機了解した。前回と同時にロック解除する。急上昇による高負荷に注意されたし”
「何年やってると思ってんの?」
綾瀬はコクピットの中で武者震いをしていた。
成れたはずのカゲロウのコクピットだがしかしながら機体自信は初飛行も同然で初陣なのだ。
綾瀬の顔がわずかだが強張る。
”綾瀬隊長、作戦空域において連合及び第六前哨基地の敵影の侵入を確認した。
機器のチェックもままならんがゼロ作戦を開始する”
「大丈夫よ、こっちは問題ない。いいわね?熱風隊、状況開始せよ」
綾瀬の号令に各々が合図する。
「レオン機了解だ、お前にまとわりつく蠅を払うのは骨が折れそうだ」
「三宅機了解、しんがりは任せろ」
「ひより、了解です。綾瀬隊長、九十九のロックオンはこちらで請け負います」
「頼もしいわね、さっそく世話になるわよ」
綾瀬の機体を乗せたリフトが地上付近まで上昇する。
”皆、私も熱風隊という事忘れないでよ!頑張ってよ皆・・・”
管制から柊もコールする。
「当り前よ、脱退は”スポーツカーの刑”よ」
”綾瀬機リリース点まで3秒前・・・2・・・今!!”
「上昇!」
綾瀬の機体にかかったボルトロックが爆発によって解除され、アフターバーナーが青い火柱を高らかに上げる。
”隊長、舌噛まないでよ!ひより、九十九のロックオンは出来てるわね?!
目標高度到達と同時に発射よ、いつもヘボミサイル飛ばしまくんのは私なんだから隊長がお手本見せてよ!”
凄まじい重力に耐えながらも柊の減らず口に険しい顔ながらも口元が緩む。
「ま・・まかせ・・なさいよ!!」
”レオン、三宅、安全圏まで高度を落として”
「了解だ」「とばっちりは御免だぜ」
二機のカゲロウ機はそれぞれ左右に散開する。
”綾瀬機、目標高度まで残り僅か”
既に綾瀬の視界には美しい青空を汚すかのように連合、そして背後には東海のロック基地のUAVや敵機が
無数に滑空している。
そして、綾瀬の機体はその飛行船のような巨体を大空にあらわにした。
”目標地点到達!””九十九ミサイル(99連装XSAMミサイル)ぶっ放せぇ!”
「あたれぇえええええええ!!!」
綾瀬機の巨体から凄まじい数の小型ミサイルが白き尾を引いて飛び出した。
また、オオルリカゲロウの複座、ひよりのモニターには多数のUAVなどがロックオンされている。
敵機は有人機こそ紙一重で回避してるもののUAVなどは回避処理が追い付かず次々と撃ち落されている。
それは文字通り飛ぶ鳥を落とす勢いである。
”くそっ!あやせぇえええええ!”
綾瀬は広域にオープンされた無線に聞きなれた声を聴いた。
「あら、また”シバかれ”に来たの?ロリ副隊長さん?」
”勝負だ綾瀬!次堕とされたら、私はもう降格になるっ。それだけは私のプライドが許さない!”
”小波、突っ込むな!くそ、ミズビショップ手を貸してやれ!俺はまとわりつくUAVを落として空域を確保する”
夕霧隊隊長・岩日の叱責が飛ぶが小波の耳には届かない。
「綾瀬、少し予定変更だ。そのまま連合群の相手をしてくれ。三宅も綾瀬についてくれ!」
「レオン、お前もしかして空蝉隊相手に一人で行く気か?!間違いなく死ぬぞ!」
レオンの提案に三宅は当然のように不安を投げかける
「予定が早まっただけだ。UAVを数機借りていくぜ。ひより、聞こえるか?忙しいかもしれんが綾瀬と俺のサポートも
行けるか?」
「任せて、既にやってる」
既にひよりはレオンのカゲロウ機のモニターを表示し、UAVをサブに回している。
「流石だな!頼むぞ綾瀬!」
「レオン、頼むわ!」
レオンは連合のUAVを振り払い空蝉隊の方角へ急速旋回する。
”綾瀬機・第二波装填完了!”
綾瀬機の機体各サイロが一度閉じたのち再び勢いよく開口する。
その動きを夕霧隊イーノは見逃さなかった。
”嘘でしょ?!あの数をまた撃つ?!”
「喰らえぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
綾瀬機から再び無数のミサイルが発射される。
”総員、回避せよ!!”
”空蝉隊、旋回だ!基地に寄るな!俺達は間合いと取っていればいい”
両陣営とも、綾瀬機の放つ九十九連装ミサイル・九十九式を掻い潜るため四方八方に散る。
が、ここで夕霧隊は予想外のアクシデントが発生する。
”このっ、どけこのUAV!!ううっ、嫌!”
バアァアアン!
夕霧隊のサポーターであるイーノは味方のUAVに回避行動を制限され、九十九ミサイルの爆風に片翼を焼かれる。
”イーノ、被弾状況を”
”出力低下30%、ステルス及びチカガミシステム使用不可、バランサー均衡レベル低下っ、後ーー”
ミズビショップに諭され、イーノは背後に付いて機体から放出された緊急消火剤を受ける。
”イーノ、母艦に戻れ”
”しかし隊長、自分はまだーーー”
”もう来るなとは言ってない、仕切り直せと言っているのだ。夕霧隊は早々撤退などさせんぞ”
隊長岩日はゼロ基地から放たれたUAVを次々と撃ち落しながら攪乱煙幕を放つ。
”わ、解りました。ですがその間の情報は”
”ビショップ、エルドラド行けるな?小波が突っ込んでる、堕とされる前にフォローしてやれ”
”了解です””頼まれましょう”
二人は雨のようなミサイルを掻い潜り飛空艇のようなシルエットの綾瀬機へ飛び込む小波機の後へ続いた。
「綾瀬、2時の方角から有人機が三機突っ込んで来る、夕霧隊の連中だ。
たぶんお前にライバル心むき出しのアイツもいるぞ、大丈夫か?」
三宅がひよりから送られてくるデータからすぐさま敵機を判断する。
「任せて、少しは隊長らしいところも見せないとね。二人ともいいわね?」
「了解ですっ」「任せておけ」
オオルリカゲロウは大きく旋回すると綾瀬機の後方へ位置する。
”なんて醜いシルエット・・・無様ね!そんな巨体で的にでもなるつもり?!”
”小波副隊長、前に出すぎです、ここは警戒すべきでは?”
”ビショップと同じく、な”
”黙って!このチカガミは私の能力に合わせた特別仕様なのよ!これでやられたら副隊を譲ってやるわよ!”
小波はそういうと綾瀬機のカゲロウと正面に向き合った。
”死ね綾瀬!!!”
小波機から鋭いミサイルが綾瀬機の中央、コクピットに向かって一直線に向かってゆく。
そしてコクピットの綾瀬に直撃寸前ーーー。
”嘘、だってロックオンをーーー”
ミサイルはそのまま綾瀬機をすり抜けた。
爆発することも無く、そのまま抜け、推力を失い、地へと落ちた。
そして綾瀬機正面からは4連に連なるバルカン砲が火を噴く。
「あの世で待ってて、副隊長さん」
”待ってーーーーー”
バララララララッ!
小波機は一瞬にして粉砕された。一瞬、宙にはじき出された小波のような姿を綾瀬は垣間見たが
一別もせず次のターゲットに狙いを定める。
その鋭い眼光をミズ・ビショップは不敵な笑みで迎える。
”カゲロウ・・・その名に恥じぬ働きだわ”




