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播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
最終章 熱風(ネップウ)
38/43

最終章 熱風 #04

”基地全体に非常事態宣言発動及び迎撃作戦カウントダウン開始、十分前。各隊員は作戦要綱に則り各配置に着け!

繰り返す!各隊員は持ち場にて待機”

ゼロ基地には轟く程のサイレンが鳴り響き、隊員たちが生き残りをかけて決死の行動を取る。

「遅れてごめんなさい!」

「遅いぞ隊長!カワセミに早く乗り込め、ドッキングが出来ない」

工員の思わぬ台詞に綾瀬はぎょっとした。

「隊長、馬鹿言わないでまだーーー」

「なんだ辞令をまだもらってないのか?俺達のタブレット端末には既にお前は熱風隊の隊長になってるぜ」

「何ですって?!---まったく小紫さん、司令官になった途端動きが速いわね」

綾瀬は小紫のチャッカリした行動に思わずため息を漏らした。

「だ、そうだ綾瀬隊長!これからはお前がリーダーだ、気張れよ”赤い尾翼の女”!」

三宅をひよりの待つカゲロウまで送り届けたレオンが後ろから駆け足で過ぎ去る際綾瀬に挨拶する。

そして過ぎ去る様、パイロットスーツで浮き彫りになっているその張りのある尻を一瞬だけ勢いよく掴んだ。

「クソレオン!!あんた覚えてなさいよ!」

「ハハ!隊長、また空でな。さあ俺もカワセミ2番機だ、飛ぶ鳥を落とす勢いというのを行動で教えてやるよ!」

綾瀬の表情は怒りに満ちているものの少し笑みもこぼれていた。

サイレンを聞いていた時から薄々感じていたのである、自分たちは今日で死ぬかもしれない。

だからこそ、あえていつものように振舞うレオンに今回ばかりは感謝し、セクハラ行為も今回ばかりは許そうと思った。

二度は無いが。

綾瀬は自身の機体に乗り込み、コンソールを叩き、MHDを付けて所定の手順を取る。

工員達が何やら叫びながらレバーや端末を叩き、綾瀬の機体は昇華型リフトによってCAMEケイムシステムへと

ドッキングもとい収納されてゆく。

”綾瀬、聞こえるか?!”

「三宅ね、オオルリカゲロウは大丈夫なの?」

三宅から無線でコンタクトが来る。

”おおむね大丈夫だ、現状では100%に近い性能は出るはずだぜ。綾瀬・・・いや、隊長。

サポートは任せろ、存分に暴れてくれ。ひより、お前も隊長に挨拶だ”

三宅は後ろで緊張しているひよりに声を駆けた。

ひと間置き、恐る恐るひよりが声を出す。

”綾瀬・・・隊長、さん。あの絶対負けません。このお父さんの機体と一緒に戦います”

綾瀬は目をつむり上を見上げて少し思案すると、再び向き直りひよりに切り出す。

「当り前よ!それに”絶対負けません”じゃないわ。”絶対勝つ”よ。ひよりも播磨熱風隊なんだから

嘘でも虚勢を張りなさい!」

”は、はい!!”

綾瀬とひよりのやり取りに三宅は思わず大笑いした。

「綾瀬、最終チェックだ。各機器のチェックを」

工員がコクピットのキャノピーを叩く。

(ん?? 最終チェック?)

綾瀬は少し疑問に思ったが新造された兵装を装備しているため、初出撃は入念にチェックを入れているのだろうと思い

ロックを解除し、キャノピーを開放する。

「綾瀬、油圧系以下七項目の数値を教えてくれ。後兵装だ、実際の搭載弾数がこちらのデータと一致しているか確認したい」

「解ったわ・・・少し待って」

綾瀬は新たに搭載されたメーターに戸惑いながらも数値を数え、工員に伝えていく。

その時、綾瀬にある直感がよぎり不意にコンソールを弄る指が止まる。

「・・・・・・・あまり見ない顔ね、誰だったかしら?」

「何言ってんだ綾瀬、普段から柊機についてるから俺の顔も忘れちまったか?」

工員は綾瀬の顔を覗き込んでニンマリとする。

「あら、そうだったかしら?」

顔の向きは変えず、目線だけを過らせる。

作業着の脇から僅かだが拳銃の撃鉄部分が見えた。

綾瀬はゼロ基地に来て長い、それがゼロ基地に配備されているものでないと瞬時に見抜く。

コンソールを素早く動かし、機体の両翼に備わっているLEDを異常を知らせる赤点灯へスイッチを入れた。

「綾瀬、後は兵装だ。こちらにはまだ詳細が分かっていない、兵装名と共に弾の種類も教えてくれ」

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

「どうした綾瀬、次は兵装だ。まだ慣れないようなら管制塔に連絡してくれ、テクニカルサポートが詰めているだろう」

「品がいいのね」

「・・・・・・ん、どういう事だ?」

綾瀬は相手に気付かれないようにゆっくりとシートの四点ベルトのロックを外す。

「ゼロ基地に”テクニカルサポート”なんて担当いないわよ。みんな等しくゴミ工員だけ」

「よくわかってるじゃないか」

工員の顔つきが変わると同時に脇に手を入れ銃を出す。

それはホンの一秒にも満たない動き。

「くっ!!」

相手の銃口が綾瀬の額に狙いを付けた瞬間、その銃を鷲掴みにして上に向ける。

ズダーン!

凄まじい銃音が格納庫内を駆け巡る。

だが相手は諦めない。残った左手で12センチほどの折り畳みナイフを取り出し綾瀬の首めがけて突き出す。

条件反射のように頭を逸らす。

僅かに頬をかすめたのは不幸中の幸いである。

綾瀬も負けじともう片方の手で左手を掴む。

「くっ・・・誰か!族がいる!侵入者!」

必死に叫ぶが既に工員のほとんどが他に回っているため耳に届かないようだった。

「誰か!お願い・・・・!」

「死ね綾瀬!!」

相手は屈強な男であった。

力ではあまりにも分が悪い。

必死に耐えるも既に目と鼻の先まで剣先が迫って来た。

「くっ・・・こんなところでっ!!」

「・・・もう・・・ダメ!」

ドォーン!

ーーーその時、相手の顔が歪んだ。

「・・・何なの?!」

目の前には倒れこむスパイの工員。

「綾瀬さん、無事?!」「小紫さん?!」

小紫が救援に来たのである。

「さっき第四昇降口が不正アンロックがあったって通告が来たの、いま急いでスパイを探し回ってるわ!」

小紫は拳銃を倒れこんだスパイに向けた。

「・・・くそっ!なんてことだ」

よろよろと起き上がるスパイを見て綾瀬はおもむろにカワセミカゲロウの機関砲ロックを解除し銃口をスパイに向ける。

「こいつっ!」

綾瀬はおもむろにトリガーを引いた。

バラララララッ!

「ぎゃぁああああああああ!」

毎分7000発あまりの速射能力を誇るカゲロウのバルカン砲はスパイを一瞬にして血の残骸にした。

その時である。不意に少年隊員の叫び声や工員の怒号が聞こえた。

「爆弾だ!爆弾!爆弾がある!」

「銃を持った奴がいるぞ!いそげ!」

綾瀬の掃射したバルカン砲を皮切りに一斉にあちこちから火の手が上がる。

「柊!モニターは見てる!?」

小紫は無線をもって叫ぶ。

”もうやってる!いまゼロに頼んで第四昇降口の通路は爆破したわ!オペレータの何人かは今バリケード張ってる!”

「やられたわね。今すぐスクランブル発進を!全機飛ばすわ!」

「小紫さん!?」

小紫はキャノピーを外部からロックできるスイッチを探すと急いでそれを入れ、少し後ずさる。

「頑張って小紫さん!ここは私達が守る、貴方は空をお願い!」

小紫はそういうと振り返り詰所から出てきた工員たちとスパイ狩りに行く。

”熱風隊、全機カタパルトエレベータへ!緊急発進スタンバイ!”

柊がアナウンスで叫ぶ。

”くそっ空に上げる前にヤルなんてさすが連合の考えることは違うな!頼むぜ柊、とっとと空に上げてくれ!”

レオンが無線で戦々恐々としている。

「くそっ!綾瀬機、専用高速リフトへ」

綾瀬機は戦闘機とは思えぬ物々しい図体の為通常のカタパルトは使えずリフト台に移動し始める。

それぞれの機体が発進位置に着いた時には既に工員の何人か達は床に倒れ、溢れんばかりの血を流していた。

「そんなっ、こんなことって」

「見るなひより!前だけ見ろ!お前の場所は空にある!」三宅が叫ぶ。

銃を撃ちながら、発射台に向かうカゲロウに向かって工員たちが声援を送る。

「頑張れよ熱風隊!」「綾瀬!全員連れて帰って来いよ!」

「ううううう・・・」

綾瀬はただ何も言わず呻きだけを出しながら溢れんばかりの涙を流した。

”全機発信準備完了!カタパルトカウント5・・・4・・・”

柊が涙ぐみながら震えた声でアナウンスをする。無線の遠くから銃声も聞こえる。

”2・・・1・・・今!”

「熱風隊、出撃!」

綾瀬は声高らかに叫び、全機は電光石火の如く空へと上がった。

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