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播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
第八章 残火(ザンカ)
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第八章 残火(ザンカ)♯05

神谷は間違いなくエースパイロットである。

綾瀬とはまた別のアプローチがあり、それが隊長となった理由でもある。

しかしながら操縦技術面においては特別秀でていると言う訳ではなかった。

故にーーー。

「う”う”う”うううう!」

迫り来るミサイルと化したUAV、ネタはバレているもののそれは凄まじい脅威であり幾度となく機体を

掠めては急速旋回しまた神谷のカゲロウへと牙をむく。

一秒一秒が死線、生き地獄。

二十歳にも満たない彼にとってそれは精神をすり減らすには十分すぎるほどだった。

「はっ、はっ、はっ、はっ」

まるで発作のような呼吸を取る。

”どうした?!貴様は熱風隊の隊長だろう!この程度の事で値を上げる気か?!”

「う、う、う、うるさい、うるさい、黙れ黙れ黙れ!!!!」

”ハハハ、たわいもない、なあ吽形”

”ハハハ、手ぬるいわ、のう阿形”

自分でも信じられないほどの握力で操縦桿を握っているのがわかる。

ひと時でも気を抜けば死ぬと。

だがもう彼の気力は阿吽との戦闘ほんの数分で限界に到達しつつあった。

その時だ。

「隊長、しっかりして」

「綾瀬?!敵はいいのか?あの暴力的な副隊長は?!」

「デコイ(煙幕)を撒いて退却したわ。今は目の前の脅威に集中しましょう」

神谷の眼前に綾瀬機が現れる。

思わず胸を撫でおろすがまるでそれを見透かしたかのように阿吽が挑発を開始する。

”これはこれはっ、うちの副隊長も大概だがこちらは隊長がヘタレときた。

お互い仲間が頼りないと苦労が絶えんな、のう赤い尾翼の女”

「なんだとっ?!この異常者!!」

「やめなさい!相手の思うつぼよ!」

「そんなのはわかってる、解ってるが!だがしかし!!」

鳴りやまぬミサイルアラート。

だが神谷は決死の思いでUAVを潜り抜け、阿吽の尾に張り付く。

”だがしかしなんだ言ってみろ!『俺は所詮ここまでだ』とでも言うのだろう?”

「---俺だって、綾瀬を守るんだ!!」

「?!」

綾瀬は驚いた。

いつもは世話役として徹している神谷から、『守りたい』と言われたのはゼロ基地で出会ってから初めてだった。

戦闘中にも関わらず、綾瀬の心臓は高鳴りを隠し切れずにいた。

「神谷っ!無理しないで」

「無理もするぜ!こんな奴にっ。いいようにやられてたまるか!!」

”神谷機、バルカン掃射。38%・・・22%・・・13%”

バラララララッ!!!パン!

”・・・・・・・・ちっ”

神谷の放ったバルカン砲はチカガミ阿吽機の尾翼をかする。

(行けるっ!!俺にだってやれる!!)

神谷の機体もカワセミカゲロウ、ファイター型でありドッグファイトに特化した戦闘機であり

恐らく最新鋭であろうチカガミにも対等に渡り合うだけのポテンシャルは有していた。

”行け狛犬!!卑しき者に死を!”

残りのUAVが全て外装を剥ぎミサイルへと変貌して神谷に襲い掛かる。

「神谷!!!」

綾瀬は自分でも信じられない程の声を上げ、彼の機体へと救援に向かう。

「あたれぇえええええええ!!!」

”綾瀬機、オールコードスリー実行、主兵装ゼロ!”

残りの兵装全てを放ち、襲い掛かるUAVを撃ち堕としにかかる。

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

一機・・・二機・・・と命中させるが、当の阿吽機にはかすりもしない。

「畜生!神谷!」

「大丈夫だ綾瀬!勝負だ阿吽!」

”来るかぁ唐変木!”

尾を見せていた阿吽は急速旋回し、神谷機と対面する。

「駄目っ!勝負しないで!」

綾瀬の叫びも耳には届かない、神谷は既にこの戦いで覚悟を決めていたのだから。

(バルカン弾数は残り僅か・・・もう次は考えるな!今に生きろ!)

神谷と阿吽はお互いスロットルを全開にする。

500m・・・300m・・・100m・・・50・・・!

シューーーーーーーーーン!!

お互いの機体が銃を放ちながら交錯し、一瞬時が止まったかのような静寂が辺りを包み。

次の瞬間。

ドォオオオオオオオオン!!

阿吽機の機体から火柱が上がった。

「やった・・・やったぞっ!あやせっ!やったーーーー!」

神谷は歓喜の声を上げ、思わずガッツポーズを取る。

事切れたのか綾瀬も安堵の表情を浮かべる。

「よかった・・・隊長ーーー」

ビーーーーーー!

”ミサイルアラート!!どころからだ!”

ゼロが叫ぶ、その時、綾瀬の目に移りこんだのは外装が剥がれ落ちる阿吽機。

それはまるで。

「ヤバい!!神谷!!」

「やったぞ綾瀬!俺だって、俺だってお前を守れるんだ、だって俺ーーーー」

阿吽機はまるで何かが憑依したかのように軌道を変え、神谷機に突っ込んだ。

ミサイルのように。

ドォオオオオオオオオン!!!!

大きな爆炎が青空に木霊する。

辺り一面が炎に包まれた後、亡骸のような残骸が崩れ墜ちていった。

「嘘・・・そんな・・・噓でしょ?!」

”・・・神谷機、バードオブスカイ・・・ほかの敵機は既に撤退を開始している。

Airspace Dominated(空域制圧)状況終了だ、綾瀬・・・”

ゼロが悔やむような声で綾瀬に伝えるが綾瀬は堕ちる機体を見てただ叫んだ。


「神谷・・・嘘だぁーーーー!」

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