第八章 残火(ザンカ)♯03
綾瀬は大空の青の中、MHDを肉眼モードにして必死に目を凝らす。
その目を凝らした先には透明のバルーンに吊り下げられていた鏡のような反射板が確かにあった。
キラリと光を一瞬だが反射し、それは神谷の目にも捕えられた。
「あれはなんだ・・・風船が板のような物を垂らしてる。奴らの兵器か、ゼロどうなってる?!」
”こちらではレーダーで確認できない。今必死に光学系にて索敵してるがまったくとらえることが出来ない”
ゼロの管制室ではレーダー網に掛からず必死で望遠鏡や銃座のターゲットマーカーで索敵する隊員たちがいた。
「神谷、確かに反射板のようなものを見たんだな?!ならもしかしたらかつて陸自が研究していた
レーザー兵器の一種かも知れん。あいつらはかつてロングレンジ超速射レールガンをはじめヤバい物作りまくってたからな。
その一端だ」
「レーザーとも言い切れないわ。そもそもあいつらの機体にレーザー兵装の類は認められない、他から狙っているとか?」
綾瀬は先ほどから夕霧隊の機体に注目しているがレーザーの類を発射していない。
「なんにせよスロットルは下げるなよ、出力が下がったら速攻で堕とされると思え」
レオンはまとわりつくUAVを撃墜しながら風船が浮遊してると思しき場所に向けてバルカンを掃射する。
”はは、遊んでいるつもりか?”
”はは、こんな連中に手を焼くとはな、いっそのことこのまま焼いてしまうのも一考か?”
「薄ら笑いで気味の悪い二人組だぜ、しかも似たような声・・・双子か?」
神谷はゼロを通して傍受する連合の無線に嫌気がさした。
”播磨熱風隊、私達の機体についてくるのがやっとと見受けられる、なあ吽形”
”播磨熱風隊、兵装を切り離してゼロ基地ともども降伏せよ、のお阿形”
「阿吽の呼吸かよ、コードネームにしても爺臭すぎるぜ」
レオンは阿吽の機体に向かって出力を全開にするがある一定の距離まで近づいたとたん、レーザーの矢が降りかかる。
「ちぃ!ふざけやがって。だが綾瀬の言う通りあいつらの機体がレーザーを撃っている感じではないな。
反射板自体から発射されているのか?!」
「ならやはり別動隊か?!しかしただでさえ三機とたったとゴミみたいなUAVでどうやって乗り切る」
神谷は先ほどからレーザーの発射元を探すが皆目見当もつかない。いきなり反射板から反射されてくるのである。
ビービービー。MHDに警告メッセージが入る。
”ゼロより神谷機、残り燃料20%以下。8%で緊急帰還せよ!!”
「んなっマジかよ!?」
「レーザーを避けるため出力を常に最大にして飛び回ってるのよ、しっかりして隊長」
「だ、そうだぜ。まあ俺達もドッコイドッコイだがこのままだと持久戦でこっちが負けるぜ」
レオンもそういって機体燃料を確認すると24%と既にカラカラだった。
「たまには隊長らしいとこでも見せたらどうだ?!」
レオンは早く状況を打開したく神谷を挑発する。
「くそ、言ってくれるぜっ」
そういって神谷も阿吽の二機へと近づこうとしたその時だ。
ピ、ピ、ピ、ビィー!!!
”神谷機、ロックオンアラート、ミサイル!回避!”
「おぉ?!いきなりかよ!」
阿吽から発射されたミサイルは明らかに距離があり、
神谷はカゲロウシステムを起動して難なくミサイルのホーミング能力を無力化した。
「なぜいきなりミサイルを発射した?!あんなの当たるわけない。ホープだって難なくよけるレベルだ」
神谷は敵の予想外の行動に虚を突かれた。
(まったく寸分たがわぬ動きでスレスレに滑空する二機、空に滞空する反射板の風船、どこからやってくるかわからないレーザー・・・そしてミサイル発射、なぜこのタイミングで?)
神谷は考えを巡らせ、そしてある妙案を思いつく。
「綾瀬、レオン、体勢を整える。ついてきてくれ」
「どうしたっていうの?!」
「いいから黙ってこい!隊長命令だ!」
いつになく躍起になった神谷は2機を引き連れ大きく旋回し、高度を上げる。
「どうした、気でも触れたか?!」
「・・・触れるのは今からだ。よく目を凝らすんだ!」
カゲロウ三機は太陽に向かう様に機体の向きを変えてあえて敵側の逆光になるように向ける。
「おい正気か?!これで目を凝らせとかふざけるな、眩しくて捕えらん!MHDシェードをオンにするぞ」
レオンが眩さから目をくらませる中、綾瀬は明らかに何かをとらえた。
「・・・え、嘘でしょ?!」
自分たちがあえて逆光側に回ることにより、敵機はその太陽の光を背に受けることになる。
そうすることによりシルエットは自然のバックライトで浮かび上がってくるのである。
「もう一機!!光学ステルス機か?!」
浮かび上がったシルエット、全面ガラス張りのような鏡面ボディの機体。
TF-22 地鏡・光学迷彩多目的仕様(type-M/sp)
”尾翼の女ぁあああああ!”
姿が捕えられたとたん、凄まじい怒号が広域無線で広がった。
「この声、前に綾瀬が爆導索でローストした奴か?!」
そのシルエットは背面にレーザーレンズを多数装備し、中々の重武装だった。
”赤い尾翼の女!お前は私の獲物だ!隊長が相手になるまでもない”
「誰かと思えば、前のロリっ子さん?また火傷したいの?」
綾瀬はそれまで不透明だった敵機の存在が勝手知ったる存在を知るや否や自信を取り戻す。
”き、貴様!許さん!”
綾瀬の挑発を聞いて神谷やレオンも顔をニンマリとさせそれに乗っかる。
「お前もバレてんだよ、このペテン師似非双子野郎!お前は一人のはずだ!」
”何を言う!我々は二人で一人。のう阿形”
”そうだとも!この不届きものが。ああ吽形”
阿吽の機体はネタバレしたとたん、兵装と思われるまったく同じ機体を切り離し、より身軽なドッグファイト状態へ移行する。
「そら、種明かしだ!」
”神谷機、コードスリー実行!”
神谷が切り離した兵装へミサイルを放つ。
ドォオオオオオオオオン!
破裂する阿吽の兵装、その爆風の中に反射板の破片が紛れ込んでいる。
”そういう事かあの機体、丸々一機が兵装として改造されているのか。
だから最初から1機なのに2機として誤認していた。レーダーは最初から有人機2機をとらえていたのか”
ゼロも管制室から確認し、至急データに修正を加える。
「でも向こうのチカガミシステムで対象位置は誤認する可能性が高いわ。それに敵機の姿をとらえたといっても
ステルス性の高さから以前窮地であるのは変わりない」
綾瀬は明らかになった連合夕霧隊副隊長・小波の機体に取り急ぎマーカーを当てる。
”ドッグファイトで負けた事なんか一度もないんだ。本部の作戦など必要ない!いいこと、阿吽!
他には見向きもしないで、熱風隊だけ堕とすの!”
小波はそういうともはやステルス性を有することに意味は無いと判断したのか機体全てに張り巡らされているステルス鏡面
装甲をパージする。
狙うのはもちろん、赤い尾翼の機体。
”行くわよ赤い尾翼の女!”
「来なさいよ、今度は全身小麦色にしてあげるわ!」




