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播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
第七章 地鏡(チカガミ)
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第七章 地鏡(ちかがみ) ♯04


”---こちらレーダー管制機・家菊、隊長機応答せよ”

「こちらリーダー、命令是正措置は適正か?」

ロック基地、精鋭である空蝉隊を翻弄し、追い込み、囲い込む真っ青な機体群。

”適正である。すぐさま対応されたし”

するとリーダーと名乗った隊長は操縦桿のトリガーロックガードを戻し、シンキロウ機のロックオンを解除する。

「聞いての通りだ、各機予定変更だ。エネルギー残量の多い3機は俺とこい、残りはいったん基地へ帰投ののち

母艦を率いて改めて”ゼロ”を撃つ、以上」

リーダーはただそれだけ言うと、その機体を翻し、青空の中消えてゆく。

「ゼロか・・・なるほどこれはドッコイ、気合も入るはずだ」

「ということは、ついに尻尾を掴んだという事になるのか?」

明らかにイントネーションが外国籍であろう二機が並んで低空飛行する。

この二機の遥か後方では無数のUAVの残骸が無残な姿をさらしていた。

「貴方達無駄口叩いている場合じゃないわよ。双子を引き連れて帰投して、

私はまだ燃料があるから隊長についていくわ」

明らかに幼いであろう声だがその張りのある声は二人を叱責した。

「副隊もいくのですか?となると残りはもちろん・・・」

清楚な声は期待を含めて隊長に尋ねる。

「お前も来い、残りは母艦で待機だ。小手調べも兼ねるが堕とせるなら堕としたい。

相手の出方次第では全力を出せ、兵装縛りも全て封印解除が出ている」

リーダーはそう言いながらとコンソールを軽く弄る。

すると機体は尾翼、両翼がよりコンパクトになり弾丸のようなシルエットになった。

ただでさえ凄まじい速度を出す機体が、さらにその出力を上げた。

「カゲロウか・・・鬱陶しい名前だ」

消えゆくリーダーの煙尾を残る二機が追っていく。


それを、震えた手で操縦桿を握りながら見送る煤に汚れた今にも墜ちそうな機体。

シンキロウ、ハーグマン機。

「畜生・・・なんて奴らだ、舐めやがって。あれが日本でいうところの”鬼畜”というやつか」

見れば空蝉隊は全機”墜落寸前”という機体状態でギリギリの飛行していた。


一方ゼロ基地では基地のメインサーバーを含むすべての電子機器のセキュリティロックが

一時的に解放されたことにより基地内は動乱を極めていた。

「で、当然どうやって逃げる気なの?こうなった以上、海堂や白鷺の防衛局は絶対に私達の仕業と思い

捕えに来るわよ。いや、もしかしたら問答無用で射殺もあり得るわよ」

当然のように小紫は尋ねる。

薄暗い地下にあるわずかなものしか知らぬ倉庫では熱風隊の面々が今後についてのブリーフィングを

行っている。

「逃げるって言っても今はもう日中に近い、今日も50度近くまで外気温は上がるぞ」

レオンは当然の疑問を神谷に投げつける。

「まず、三宅君は今連中と一緒に来ている白鷺の連絡便で防衛局研究施設に搬送される。

離陸前に機体ごと奪取する。それには俺と春野・・・あと小紫さん、お願いできませんか?」

「ま、毒を喰らわば皿までね。いいわ、やりましょう。連絡便は毎回来てる定期便よね?なら岸本さんも

協力してくれるはず」

小紫はそう言ってタブレットを確認し、基地での人員配置や予定などを確認する。

「丸腰のオスプレイを?それこそ離陸中にゼロ基地の対空砲でハチの巣だぜ」

「そこでレオン、お前の番だ。お前はそもそも白鷺の人間だ、あいつらの中にも面識があるものがいるだろう。

なんとか掻い潜って対空砲火を無力化するようにして欲しい」

そう言って神谷がバッグをレオンに渡す。

そこには時限式のプラスチック爆弾がいくつも入っていた。

整備長の根回しだろうか。

「いいのか、俺は白鷺の人間なんだぜ?下手すりゃお前たちを売っちまうかもな・・・」

「お前、綾瀬は助けに行かなくていいのか?ぞっこんなんだろ?」

神谷はあえてわからないようなふりをしてレオンに言い放つ。

「・・・チッ!お前、最初からそのつもりで俺に振ったな。ぞっこんなのは貴様も同じだろうに。

まあいいさ、これはチャンスだ。綾瀬に恩を売ってサービスしてもらうとするかぁ?」

ワザとらしくニヤつくレオンを見て神谷も不敵な笑みを浮かべる。

それは紛れもなく既にレオンもこの播磨熱風隊に属された何よりの証拠だった。

「柊、悪いがお前もレオンと一緒に行ってくれないか?綾瀬を助けるにはーーー」

「---いかないわよ私は!」

「・・・柊?」

一同が柊へ注目する。

柊は決して一同と目を合わせる事無くただ部屋の奥を見つめながら言った。

「私、妊娠したの」

「・・・嘘、柊ちゃん?」

「冗談でしょ?!」

「は、は、ははははっは!お笑いだこりゃ!」

一同がそれぞれの反応を見せる中、ただ信じられない様子で神谷が尋ねる。

「本当なのかそれは?」

「ええ、本当よ。間違いない、私と三宅の子」

そう言って柊は振り返って妊娠検査機を一同の眼前へと付き出す。

その検査機が偽りでなければそれは正真正銘、陽性反応の証だった。

「これで私は保護プログラムで白鷺に行ける!三宅だって一緒に連れていける、もうカゲロウに

乗らなくてもいいの、この地獄から抜け出せるの!だから!」

「柊、あなた・・・」

小紫が何かを感じた途端、背後から物音がして扉が開き、ライフルを持った白鷺の局員たちが雪崩れ込んできた。

「全員動くな、両手を上に上げろ!」

先頭の兵が声を張り上げる。暫くするとその背後から見慣れた姿の人間が出てきた。

海堂だ。

「お前ら勘違いするな、柊は仲間思いだ、便宜を図るように進言したのだから。しかしながら

今回の一件は”真夏のドライブ”程度では済まんぞ」

海堂は冷たい声で言い放った。

「海堂司令官・・・」

神谷は手を上げながら歯がゆい顔で海堂を睨みつけた。

「しかしながら今はパイロットの替えが利かん、そこでいい方法を考えた。お前らにはいつも通りカゲロウに載ってもらう、勿論柊、お前もだ」

柊はそれを聞いて驚愕した。

「何でよ!!私は妊娠したのよ!白鷺の保護プログラムの対象になるはずだわ」

だが海堂はなんら動じることなく淡々と述べる。

「妊娠8か月目からな。それまではカゲロウに載ってもらう、そこの子供の母親と同じようにな」

そう言って鼻でひよりを指す。

ひよりはただ海堂を睨みつけていた。

「そんな、そんな嘘よ・・・嫌よ、そんなの、これ以上は死んじゃうよ・・・」

柊はすっかり憔悴し、その場にへたり込んだ。

「それに綾瀬はどうする、お前たちの頑張りしだいでは彼女も何らかの温情もあるかもしれんぞ」

「へぇ、海堂お前、初めて会った時はそうは思わなかったが中々の糞だな。恐れ入ったぜ」

「レオン、貴様は本日付で白鷺からこのゼロ基地へと転属された。防衛局からの辞令も届いている。

今日から口の利き方に気をつけろ」

「ますます糞だな。逆に気に入ったぜーーー」

言い終わる前に海堂のストレートがレオンの頬に入りそのまま勢いよく地面へと伏した。

「いいか!お前たちには文字通りここを”死守”してもらう。

全員そのまま指示に従って格納庫へ迎え!早くしろ!それとも使えなくなった仲間は見殺しか?

播磨熱風隊の名が泣くぞ。小紫顧問、こちらへ」

海堂はそのまま小紫の手を強く引っ張り寄せた。

「失望しました海堂司令官、貴方はもっと甲斐性のある人だと思いました」

「人の本質はそれだけ他人にはうかがい知れない根底にある」

小紫は唾を海堂の頬にめがけて吐きつけた。

しかし海堂はその頬に付いた唾を舌で嘗め、”貴重な水分だ”と言い全員を唖然とさせた。


「すれ違いのある話は後にしましょう顧問。さあいけ!全員死にたいのか!」


”全機、カタパルトエレベータにて射出完了。神谷隊長、確認を取れ”

播磨熱風隊は綾瀬機を除いた4機、そして数機のホープ達が空に向かって

スクランブル発進された。

「・・・綾瀬以外は全員いる。なあゼロ、あんたも同じ穴のムジナなのか?」

神谷は暗い声でいつも美声を隊に届ける管制塔のゼロに尋ねる。

”今は状況に集中しよう神谷。出来るだけ全力でサポートする”

少し歯がゆさも感じたが、あえて神谷は何も言うつもりもなかった。

「・・・綾瀬は?」

”綾瀬の処遇は現在、白鷺の責任者と協議中だ。

いくら窮地とはいえ、逃亡の疑いがある人間をカゲロウに載せることは出来んらしい”

神谷は深くため息をついて淡々と述べる。

「俺達だけでは絶対に死守できない、三宅も居ない、ホープは2機のみ。

挙句に手慣れ集の第二播磨熱風隊は白鷺防衛の控えの為、出撃停止命令なんてあんまりだ」

”・・・聞こえるか、海堂だ”

間髪入れず海堂が無線に出る。

「海堂、私達にとってあんたもう司令官でも何でもないわ!ふざけんじゃないわよ!」

稼働が無線に出た途端、柊は威勢良く嚙みついた。

”何とでも言え。いいか?相手は本気では来ない。漏洩した情報の真偽を確かめに来るだけだ。

だが更なるこちらの戦力を知るために必ず攻撃を仕掛けるはずだ”

「何であんたがそんなのわかるんだ、ああ?」

レオンは尋ねるも返答はない。そして少しだけ間が空いた後、海堂は続ける。

”一機でいい、撃墜しろ。一機でも撃墜すれば相手はこちらの今後の攻略を見直すはずだ。

そうすればこちらも後から幾らでも手駒を増やすことが出来る”

海堂の台詞は明らかに”外野側”からの発言だった。播磨熱風隊の面々も呆れている。

「海堂・・・あんたいったい何を考えている?!」

「レオンさん!敵機をレーダーに確認!早い!すごいスピード!?」

レオンの後方、複座の春野が悲鳴のような声を上げながら状況を伝える。

”3時の方向より敵機を確認、全機連携を取りつつゼロ基地の方へと寄せていけ。

今ゼロ基地のみんなが総火力になるよう全力で動いている、頼む熱風隊!”

ゼロも気持ちは熱風隊側なのか進言をしつつMHDにデータを送る。

「駄目、もうすぐ来る、3・・・2・・・1・・・」

「え・・・来ない?!どうして?だってレーダーには」

レーダー上ではもう目と鼻の先であるがその姿は一向に現れない。

柊が何かを感じ取りMHDのシールドを外して目視で辺りを確認するとそこには

眩いばかりの白銀のシルエットが目いっぱいに広がっていた。

「真横?!!!!」

「柊、回避だ!!」

「間に合えこんにゃろーーー!」

操縦桿を力任せに振る。だが敵影はこちらへと攻撃することもなく急旋回する。

「なぜだ、なぜレーダーとは真逆の方向の現れた?ゼロ、どうなってる」

神谷は混乱しつつゼロに状況を確認する。

”こちらでも確認が取れない、確かに3時方向にっーーー海堂指令?”

ゼロに割って入って来た海堂が声を震わせながら伝えてくる。

”いいか播磨熱風隊よく聞け、そいつらの機体はーーー”

地鏡ちかがみという。熱風隊とやら”

明らかに海堂とは違う声。

ゼロ基地のミリタリーエアバンドに割り込んできたのだ。

「マジか?!オープン回線、IFFもなく・・・お前らいったい?!」

すると今度は幼さが残るような少女の声が聞こえた。

”チカガミシステム、詳しく話せないけど貴方達のレーダーを混濁させるシステムよ”

”そこの海堂とかいう戦犯に聞くといい、だがもう聞く暇はないだろうがな”

気が付けば既に三機の白銀の機体が播磨熱風隊と並ぶように飛んでいた。

血の気のおおいホープが敵影を見て信じられないといった様子で唖然と見ている。

「何なんだこいつら・・・」

”墜ちろまがい物ども”

散開する間もなく、白銀の機体の翼裏に仕込まれたミサイルポートが解放され、カゲロウ機全機が

緊急ロックオンアラートを発する。

「まにあわーーー」

神谷が叫ぶのと同じタイミングで叫び声がこだまする。

「当たれぇええええええええ!!!」

地上から上空へ向かい、急速上昇しながらバルカン掃射する赤い尾翼の機体。

「綾瀬!」

皆が待ってましたといわんばかりに綾瀬の到着に歓喜した。

しかし、それは相手も通ずるところがあったようで。


”赤い尾翼・・・空蝉隊の言っていた赤い尾翼の女か?

フッ、面白い。隊長、私が小手調べをします。”


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