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播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
第七章 地鏡(チカガミ)
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第七章 地鏡(ちかがみ) ♯01


”こりゃすごい、近づいたら刺されそうだぜっ!しかも見たぜ、しかも載ってるやつは女が二人ときた。

おい聞いてるか黒い機体?そんなのに乗ってないで俺のベットに乗れよ!”

「死ねよタコ野郎!」

「口悪いですよ柊さんっ」

お互い既に身の内が知れていることもあってか無線をオープンにして口で罵り合うわ、ミサイルの打ち合いだわ

やりたい放題だ。

”やはり貴様は隊長機か・・・いい腕だ。殺すには惜しすぎる、うちへ来れば色々便宜も図ってやれるぞ”

「すまんが”ここ”が居心地良いんでね。それに裏切るとじゃじゃ馬が殴る程度では済まさないからな」

神谷は条の機体が放つミサイルを緊急回避し地面へと着弾させるとそのまま後方に付く。

戦況が激しくなる中、一人空蝉隊隊長、志麻は一際機嫌を悪くしていた。

勿論原因はひとつである。

”何故だ、なぜ貴様のような人間が赤い尾翼の機体に乗っている?”

「俺の女の機体に乗って何が悪いってんだ?もしかして妬いてんのか、ドスの利いた声にしてはかわいい奴だな」

”貴様っ!丸焼きにするぞっ!”

レオンは向こう側の意図を汲み取り、いつもの調子を取り戻すと何食わぬ顔で隊長機を撒いていく。

が、やはり志麻隊長は敵側のエース。

レオンのカワセミカゲロウ機はミサイルアラートが鳴りっぱなしである。

そんな中、異変は起きた。

”柊機、コード:Three、実行”

軽い爆音。志麻隊長のMFDにはベンの機体の異常が発生されていた。

”すまん隊長、交わしきれなかった。だがまだーーー”

”気にするな。こちら側の対空砲火域まで退避しろ”

ベンは右翼から黒煙を上げる機体を反転させ、後退してゆく。

それを追うカゲロウを遮るように志麻隊長のシンキロウが迫った。

”お前っ、さっきの機体。逃げた訳ではなかったのか?”

「副隊長、邪魔すんなよ。これからが楽しいところなんだぜ」

レオンが追い込みをかけようとするところを綾瀬がけん制した。

「誰があんたの女になった?今度行ったら撃ち堕とすからね?」 

綾瀬は声は本気だったようで、レオンは思わず尻込みする。

”驚いた・・・これで副隊長だと。どう見ても隊を率いる腕ではないか。隊長は尻に敷かれているのか?”

「聞こえてるわよあんた」

志麻隊長の中で合致がいった。最初に出会った機体に乗っていたものこそが赤い尾翼の女だ。

わざわざ仲間の為に専用の機体に乗って助けに来たと。

志麻はますます綾瀬に夢中になった。

”おい、敵機、副隊長でいいのか?お前の腕はなんて魅力的なんだ、恐れ入った”

”いいんですか隊長?仲良くおしゃべりなんて。後で司令官が黙ってない”

条がたしなめるが志麻は気にも留めない。

”いいさ、あの糞じじいなんぞ発狂死させておけばいい。おい聞いてるかそちらの副隊長?”

「何?撃たれたいリクエストがあるなら聞くわよ?」

”いい度胸だ。腕だけじゃない・・・気に入った。よし、いまお前らに向けてうちの基地から増援が向かっているが、今日のところは見逃してやる、増援を停止するよう要請しろ”

既に第六前哨基地からは無数のUAVがスクランブル発進し、こちらに向かっていた。

「どういうつもりだ?」

レオンは志麻に疑問を投げつける、が志麻には眼中にない。

”フラれた下男は黙ってろ・・・女、綾瀬とか言ったな?綾瀬副隊長、今度はあの赤い尾翼の機体に乗って俺の所に来い”

「あたしに穴だらけにされたいから?」

”穴にするのは俺の方だ・・・赤い尾翼の女、お前は俺のもんだ”

「何だと貴様!!どういうつもりだ!!」

”男に用は無いといっただろう、早く行け。お前ら引き上げるぞ”


第六前哨基地。通称ロック基地。

「一週間後にはスクランブル発進とは休む暇がないですよ隊長」

カタパルトエレベータ前の格納庫では補給に整備に工員たちが暴れまわっている。

そんな中休む暇もなく次なるスクランブル発進に向けて空蝉隊の面々は補水すらままなる忙しさでブリーフィングファイルに目を通していた。

「帰ったらあの爺のケツにミサイルぶち込んでやろうぜ」

ハーグマンがイラついた顔で指を鳴らしている。

「腐るなハーグマン、敵は北西の方角から来ている。

UAV多数、いずれも偵察型のいつもの奴らだと思うががこいつら一瞬だけ妙な動きをした」

「妙な動き・・・といいますと?」

条が怪訝な顔をする。

「一瞬だけレーダーから喪失したが再び現れた。全機いいか、ぬかるなよ?こういう些細な時こそ絶対に何かあるんだ」

志麻は若くともこれまで生き抜いてきた実戦経験から洞察力、観察力がずば抜けており、こういった予測もよく当たっていた。

予想外だったのは前回の熱風隊ぐらいである。

「オーケー、オーケー。我らが隊長を信じましょう。なんてったって俺達の命を今日までつないできた大将ですからね」

巾着はその呼び名通り相変わらず隊長を持ち上げる。

「巾着、おだてても金も水も出さんぞ。全機出力(気合)を上げていけ」

そんな中、基地での待機命令を喰らったベンが申し訳ないように隊長に詫びを入れる。

「すまん隊長・・・俺がさっきヘマしなければ」

「自惚れんなよベン」

ベンは面食らった。頭の中ではてっきり慰めの一言でもかけてもらえると思っていたからである。

「あの赤い尾翼の女と勝負しやがって・・・あの女をやるのは俺だったのに、今度は大人しくしとけよ」

「あ、ああ、わかった。心得ておく」

隊長のズレた性格はこんな時でも相変わらずだとベンは胸を撫でおろした。

”各機スクランブル発進スタンバイ。カタパルトエレベータへ!”

「行くぞお前ら!相手が誰であろうと空蝉隊の餌食にしてやれ!」


カタパルトエレベータにて上空に飛び立った負傷したベンを除く空蝉隊4機は程無くして管制塔より緊急入電を受ける。

”こちら管制塔ロック。無数の敵影アンノウンを確認、空蝉隊作戦行動圏内。全機早急に作戦行動に入れ”

管制塔からの連絡を受け、隊長をはじめとした各々がレーダーを確認するが機影は確認できない。

不可思議に思った条が管制塔に言い返す。

「作戦行動圏内だって?おいロック、冗談を言うんじゃない。まだ目視でも確認できんぞ」

”しかし、こちらのレーダーでは既に目と鼻の先だ!”

それを聞いた隊長は背筋を言いようのない寒気に襲われる。

そして次の瞬間には叫んでいた。

「・・・全機、散れ!拡散!」

「?!了解!!」

全機がそれぞれバラバラに散ったと地に先ほどまで滞空していた場所に光の筋が一瞬にして描かれる。

熱源を帯びた光。

ハーグマンは思わす絶叫した。

「ハハハ!いきなり来やがったっ、やべーやべー」

じょう、大丈夫か?!」

最も光に近かった条も何とか交わすも右舷の塗料が見事に剝げこけていた。

「ギリ交わした、作戦に支障はない。隊長、見たか?あれは間違いなくビーム兵器だ、資料で見た」

隊長は先日に比較的管理職の縁遠い連中で話した内容を思い出していた。

「という事はアイツらが会議で話した噂の北陸連合の連中か?!

なるほど、これで尾翼の女達のゼロ基地の裏付けも出来た訳だな。

俺たちが戦っているのはやはり外国人じゃない、同じ国の人間で資源を取り合っている」

そこに巾着はある疑問をぶつけた。

「でも俺達はUAVと一緒に行動したことなど一度もないですよっ、ってあぶねーな畜生!喰らいやがれ」

隊長はその進言にもっともだと思った。

いつも基地に襲撃に来るのはUAV。

この間、初の有人機である播磨熱風隊すらそれが”有人機”であることは教えられることもなく、

しかもその戦闘後も”事実確認を確認中”の一言で何らそれ以上の情報は上がってこなかった。

そもそもUAVを仕向けたであろう第0区前哨基地の播磨熱風隊ですらその事実を知らない様子だった。

UAVは自分たちの知らないところで侵略兵器として仕向けられている。

隊長はわずかに視認できる前方の敵影を目を細めながら凝視し呟く。

「・・・侵略行動はAIに任せて人間は防衛に回す。その方が後々言い訳も経つ。

UAVは基地システムAIの掌握の出来ない暴走行為だったと」

ハーグマンはそれを聞いて思わず呆れた。

「はぁ?!何ていう暴挙だよそれ!!言い訳にもなるもんか」

条も隊長の考えには賛同の様で続ける。

「”人間”ならな。だが”AI”は意思を持つわけではない」

「ちっ物は言いようだな。空蝉隊いいか?赤い尾翼の女を堕とすまでは堕ちることは許さんぞ」

隊長機をはじめとした一同は出力を上げ、連携を組む。

空蝉隊お得意の連携飛行形態だ。

「相当入れ込んでるな」

「前ほら、であった隊員が隠し撮りした写真見て速攻でコピーして自室で眺めてたぜ」

「ストーカーかよ・・・」

「お前らいい加減なことをーーー」

その時、目前に迫った敵機の姿シルエットを見て隊長は愕然とした。


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