表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
第六章 空蝉(ウツセミ)
24/32

第六章 空蝉 ♯04


シンキロウ機は5機編成だった。

それらは全て統率がとれており、まるで遊覧飛行をするかのように柊機に迫っていった。

その様相が明らかに乗っている人間が手慣れであることを表していた。

ただ一つ、パイロットがまだ成人しきれない青少年ということを除いては。

”レーダーにかかったのは一機だけか?”

”そうです隊長、突然現れたそうで管制塔からは十分に警戒せよと”

まだ年期も立っていないにもかかわらずドスの利いた声で尋ねる隊長にややか弱く答える男の声。

”突然現れたって、じゃあここまではどうやって来たんだ?”

”レーダー網に掛からない高度ギリギリを飛んで来たんだろう。

ここまで来るには相当山々の尾根沿いを縫うように飛んできたはずだ”

声のイントネーションから外国籍と思われる声、方や冷静沈着な性格を思わせる男な受け答え。

”なら間違いなく手慣れだな。だが管制塔から送られたデータでは赤い尾翼の機体じゃない。

やたらマイクロミサイル飛ばしていた機体だ”

”とすると囮か?ならとりあえず少し遊んでやろうぜ!ヒーハー!”

そして一同の中でもやたらとテンションの高く、明らかに血の気の多い男が声を張り上げる。

”いいかお前ら、何の意図があるにせよ絶対にこいつ一人ではないはずだ。

ロック管制塔、赤い尾翼の女が来たら真っ先に俺に知らせろ。ほかの奴は手を出すなよ、俺がやる”

隊長の執念を感じた、傍らの機体の男がか弱く答える。

”俺がやるやるって・・・これでまだ十代なんだから恐れ入るぜ”


「あいつらめちゃめちゃ早い・・・小紫さん、悪いけど全力でやらなきゃ死ぬから覚悟して」

「覚悟っていったい何をどうするのっ」

決して広くない柊機のカゲロウのコクピットでは迫る状況に二人は戦々恐々としていた。

「とりあえず舌噛まないように。

カゲロウ機は重力緩和システムが組み込まれているけど気休め程度、後はパイロットスーツの性能しだいよ」

ギリギリまで迫った敵機がターゲットマーカーに入る。

綾瀬は僅かしかない小型ミサイルを敵機に向けて発射する。

―――しかし、敵機は難なくそれを交わす。その様相はまるで遊びという様な余裕さがあった。

「マジこの距離で交わした?!これはシンキロウの性能によるもの?それともパイロットの腕?!」

感嘆するのもつかの間、相手からけん制球と言わんばかりのミサイルが飛んでくる。

それはロックオンアラートを受けてすぐの事だった。

「チッ、持ちこたえて!」

「ううううううぅぅぅぅぅ!!」

綾瀬はアームでつかんでいる三宅に影響が最小限にとどまる様な挙動でミサイルを交わした。

「いいわよ小紫さん、気絶しないところを見ると中々慣れたようじゃない」

「こんなの慣れてたまるもんですか!」

小紫の顔は真っ青だったが一応は前回の様に気絶せずに意識を保っている。

「綾瀬さん、あまり急速旋回しないでっ。

三宅君のバイタルが乱れている、あまり重力をかける真似をすると大変なことになるわ」

「この状況で空中サーカス出来ないのは痛すぎる。せめて宙返りぐらいは許してほしいもんだわ!」

綾瀬は敵機にかまわず進路をゼロ基地に向け、出力を上げる。


”変だ・・・”

第6前哨基地空蝉隊隊長はそのヘルメット越しでもわかるほどの神妙な態度をとっていた。

”何が変なのです隊長?口ほどにもない。あの動き、まるで素人じゃないですか”

いつも隊長に引っ付いている通称”巾着”は面白おかしいように伝えている。

”奴らの機体にはシンキロウリンクのようなものは組み込まれていないんじゃないか?ならシステムを発動する必要もない”

いつもクールなジョーは冷静に分析をしていた。

”違うそうじゃない。明らかに自ら不自由と言わんばかりの飛び方、そもそも高度の急降下・急降下をせず、ほぼ一定の高度で

回避行動を取っている。ある意味ではベテランと言わんばかりだが・・・”

隊長が勘ぐる中、チーム一番の血の気の多い、ハーグマンがしびれを切らす。

”嘗められてるんですよ隊長、もう堕としちゃいましょうよ”

”馬鹿、その自信が慢心を生み最悪な悲惨な結末を生んだんだろうが!”

隊長の叱責に便乗するような形で黒人ハーフのベンが続ける。

”それにだよ、あの腹についている謎の兵装、いったいなんだあれは?あんなもの資料にも見た事ないぞ”

”よし、おいジョー、ハーグマン。お前らは前方に回れ、俺は後の二人とケツから追いかける。

これで高度を変えないならいよいよ何かあるはずだ”

ハーグマンは待ってましたといわんばかりに操縦桿を切る。

”隊長、あの腹の兵装。大量破壊兵器の可能性もあるのでは?前回と同じような・・・”

そんな中、一人ジョーはある推測を伝える。

”どうだろうな、それなら現地から現れた理由が・・・いやまて、そうか、怪我人か?”

隊長は何かに気付いて本部管制塔に無線をして問い合わせる。

”空蝉隊、隊長よりロック、問い合わせだ。不時着したカゲロウの回収時にパイロットはいたか?”

暫くして返答を聞いた空蝉隊隊長、志麻は思わず口元を緩ませた。


綾瀬は敵の挙動をレーダーで見てすぐさま事態を察知した。

「やばい、挟み撃ちにする気だわ」

「嘘でしょ?!どうするの?急速旋回して高度を上げて回避行動を」

綾瀬の股の間から小紫が懇願するが、綾瀬がヘルメット越しでも渋い顔をしているのがわかる。

そして力なく答える。

「・・・駄目、三宅がもう持たない」

「でもこのままじゃやられるわよ!」

小紫が言うのも最もである、もはや一刻の猶予もないため綾瀬はすぐさま決断した。

「仕方がない。いい、小紫さんまた気絶しないでよ!!」

「ちょっ!!」

敵機が目前まで迫る中、綾瀬は出力を上げ重力が凄まじく体に響く。

そしてもはや敵機が衝突直前に迫ったその時、その操るカゲロウ柊機はまるで別機のような挙動を見せて

その機体を”縦”て輪を書くようにループしてそれまで尾を追いかけていた敵機の後ろへ着いた。

「・・・噓でしょ。毎回毎回、あなたといると命がいくつあっても足りないわよ」

「今度残機増やしといたら?」

綾瀬のその決断力に次ぐその勇気、度胸に小紫は度肝を抜いた。

「そのふてぶてしい態度、まさにエースパイロットにはふさわしいかもね・・・」

「?!また来た!」

綾瀬がレーダーのアンノウンを見て叫び、カゲロウリンクさせたタブレットを小紫が見る。

「機影が三機・・・早いっ!」

”・・・俺を落とせ綾瀬、アームをパージに切り替えろ”

先ほどの挙動から芳しくない事態を悟ったコンテナに押し込まれている三宅が目覚め、無線で伝えてきた。

「嫌よ、私達の努力が無駄になる。それとも同情でも買ってる美しい自己犠牲?播磨熱風隊の名が泣くわよ」

綾瀬は三宅の懇願を理解した上であえて冷たく突っぱねた。

それが彼女の強さなんだと小紫は感心する。

”へへ、わかったよ・・・イクときは一緒って奴か”

「貴方はその減らず口でいいのよ、基地に帰るまであの世に”イク”んじゃないわよ」

珍しい綾瀬の冗談もそこそこに、小紫はふと気づく。

「ちょっと待って・・・綾瀬、あなたIFF(識別信号)出してる?!」

「あ、出してない。カゲロウリンクも切ってるわ」

小紫は急速に迫ってくる機体にもしやと思い綾瀬を急かしだす。

「あなたリンクも切って飛んでたの?!信じられない。まあ、いいわ。IFFをオンラインして!」

「解った」

綾瀬がオンラインにしたとたん、三機のアンノウンが味方識別信号に代わる。

「やっぱり!味方機だわっ。神谷君のカワセミにカラス・・・もう一機カワセミガゲロウも、これは綾瀬機?」

小紫のタブレットには播磨熱風隊三機の識別信号が映っていた。

同時に無線が入る、神谷の声だった。

「---やっぱり切っていたか。こちら神谷!綾瀬、無事か?!」

「うれしくて漏れそうだろうバイオレンスお嬢様!感謝は後で行動で示せよ!」

レオンは減らず口を叩いているものの敵機の情報を事前に知らされていたのかその声色は緊張を隠し切れない。

「三宅は無事なの?!」

「柊さん落ち着いてっ!綾瀬福隊長、迎えに来ましたよ!」

柊、春野はカラスカゲロウに搭乗しているようで、武装も満載であった。

綾瀬は機体情報を見て嬉しさもあれど自身の機体をよりにもよって気に食わないやつが登場している故

露骨に不機嫌そうな態度をとるが敵機の行動から少し占めたとも感じレオンに進言する。

「レオン、あんた私の機体断りもなく乗ってんじゃないわよ・・・あ、でもまあいいわ」

「??どういう事だ?」

「あんた真っ先に狙われると思う」


一方、空蝉隊も増援を確認し、その一機体に目的の機体が入っているのを見て隊長は嬉々とした。

”きたぞ!赤い尾翼の女!おいお前らは他の奴を相手しろ。こいつは俺のもんだ!”

隊長は鼻息を荒くして率いる皆に注意を促す。

”もう一機赤い尾翼と同型機がいる・・・前回もいたか?というかあのエンブレムはもしかして隊長機か?!”

条はチームの中でも冷静に分析し、例の赤い尾翼の機体と同型機があることを確認し、すぐさま隊長機であることを見抜いた。

”そんなのどうでもいいんだよ!とりあえずその隊長が唾つけた女に手出さなきゃいい話だろっ”

ハーグマンは早速出力を全開にし、一番兵装を装備するカラスカゲロウに狙いを定める。

戦局が開かれる中、隊長はふと思う。

(しかし、先ほどの見せた敵機の素晴らしい腕前。こいつらは一体今までどんな戦況を潜り抜けたというんだ)

空蝉隊としては無人機無しの初の決闘ともいうべき有人戦に志麻隊長は武者震いを見せた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ