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播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
第六章 空蝉(ウツセミ)
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第六章 空蝉 ♯01

三宅機が墜落したその日の深夜未明---。

「セキュリティロックはどうなってたんだ?!」

「綾瀬は信頼があるから共有していた・・・それがまさかこんな事になるなんて」

格納庫及び管制室は修羅場と化していた。

管制室のディスプレイには複数台のカゲロウがモニターされているが

柊機のコンディションがILLEGAL(状況不明もしくは不許可発進)となり警告音が鳴り響いている。

「如月教官、教官は騒いでる連中を抑えてくれ、工員は各持ち場をチェックだ。

何かないものや変化したものがあればすぐに報告だ。あと観測は?!管制室?!」

海堂の声が拡声器を通していないにも関わらず辺りに響き渡る。

”現在、南西方面に恐らく全速力で進行中と思われますがこちらのレーダー網は既に・・・

あと通信関係は軒並み切ってますね”

管制室でも行方不明になったと思われる柊機の行方を追うべく数少ない職員が奔走する。

「まさか綾瀬とはな・・・しかし柊機とは油断していた」

海堂は工員達とタブレット端末に映る防犯映像の一部を見る。

そこには、ほんの一瞬のワンフレームだが綾瀬と思われる人影、そして小紫監査官が一瞬映っていた。

それを傍からまじまじ見ていた柊は顔こそ強張り、不安と三宅を助けに行ってくれたという喜びが入り混じったような

何とも複雑な顔を見せていた。

「ま、まったくよ、と言う訳で今日から私が副隊長だからね!綾瀬のカワセミはとりあえず・・・私の好きなオレンジ色に

でも塗ってもらおうかしら?」

「冗談はさておいてだ。VOLTならカラス機の方がいいはず、複座式に加え最新鋭だ。

それを何故、柊機を使った?」

柊の強がりもその場にいた全員は不安からくるものであるとすぐさま理解していた。

「ええーと、私、し、信用ない・・・?」

その時、各カゲロウ機のセキュリティをチェックしていたレオンが苦い顔をしてやってくる。

「その答えは一つだ。柊機の搭載している兵装、スパイダーネットだ。

あいつは予め追手を予見して逃げに全力を振るつもりだ」

レオンがその場にいた人間に先ほどチェックしていたタブレットを見せる。

柊機だけが兵装の補給を完了していた。

それはもちろん、柊が金を払い上乗せされていた兵装も含めてであった。

「しまった・・・状況から行っても、すぐさま取り外しておくべきだった」

「それにしても添乗はどうする?ただでさえ狭いコクピットに小紫監査官を押し込んで言っているにもかかわらず

負傷していると思われる三宅を連れてどうやってカゲロウで脱出する?」

レオンの当然ともいうべき疑問に今まで自責の念からしり込みしていた境が申し訳なさそうに説明する。

「・・・それはたぶんカゲロウアーム専用の運搬コンテナを使うんだ。負傷者ならコクピットよりコンテナに縛り付けた方が

安定性はまだマシだ。今他の物品を確認しているがちょうど一台無くなっている。

コンテナにベッドをつけて酸素ボンベと点滴一式詰めばたちまち緊急医療運搬コンテナの完成だ・・・てか使えるなこれ」

いいながらも自身のふとした提案に何ら悪びれる様子もない事に一同は溜息をつく。

そこに居ても立っても居られない神谷が司令官の前に立ち、提案する。

「司令官、俺が迎えに行きます。VOLT機のカゲロウを回してください!」

「駄目だ神谷、それじゃ二の舞だぜ。今はあのバイオレンスお嬢様の連絡を待つ方が賢明だ。

綾瀬が何の考えもなしに感情で動くことは無いさ」

「だと思うか?アイツは俺たちの予想以上に熱い奴だぞ。確かに頭は回る・・・がそれ以上に情に熱い部分もあるんだ」

「・・・冗談だろ?あの綾瀬が勢いで行ったっていうのか、しかも小紫を連れて?

しかも非戦闘員の小紫を連れていく意味が解らん。自らリスクを背負ったというのか?」

「小紫については本人にその真意を問いただすしか・・・はぁ、とりあえずパイロットはスクランブル態勢をとっていつでも発進できるようにしろ・・・白鷺には・・・少しだけ連絡を入れるのを待て。もし異変に感づいて向こうから来たら適当にごまかしとけ。今夜は一睡もできそうにないな」

姿は見えないものの、それを聞いたオペレーターが両手で顔を覆ってうなだれる様子が容易に想像できた。


綾瀬ゼロ基地失踪より約一時間後ーーー。

「なぜ私を?あなた帰ったら絶対タダじゃ済まないわよ・・・まあ生きて帰れたらの話だけど」

小紫は足早に歩く綾瀬の後ろを離されまいといそいそと付いてゆく。

「あなたを連れてきたのはちゃんと理由はあるわ、でも今はアイツを連れ出すのが先。

出発前の測定が正しければもうすぐ」

綾瀬は自分の処罰などまるで気にする様子もなく、ナイトモードにしたタブレットを時折見ながら

三宅機が墜落したであろう目的地まで海岸沿いの畦道を歩いてゆく。

その時、前方の枯れ木の生い茂る林の方から幾つかの弱い光源が飛び込んできた。

「綾瀬、身を潜めて」

二人は少し林から離れた高低差がある丘の下あたりへと身を隠し、双眼鏡で光源の辺りを覗き見る。

「沢山いるわね、調査隊かしら・・・敵のカゲロウが手に入るんだから当然よね。

武装した人間も数人、暗がりでよく見えないわね。綾瀬あなたの荷物に暗視ゴーグルかスマートビジョン入ってる?」

「無い、持ってるのは脱出用救急キットと水とナイフ、それと司令官室からパクった小型衛星無線機」

綾瀬の装備を聞いて小紫は目を丸くした。

それはまさにパイロットが緊急脱出した時とほぼ変わらぬ持ち物である。

「冗談でしょ?!そんなので単独で敵地に乗り込んだっての?!しかもそのナイフって・・・私に突き付けたモノじゃない。

たく・・・いいわ、これ使いなさい。もう一丁あるから」

そういって小紫はエアコンジャケットの長い裾で隠れている内股のホルスターから小型拳銃を抜き取り、

綾瀬へと手渡すと自身は脇より何時ぞやに騒ぎを収めるために撃った拳銃を取り出し装備した。

「いいの?・・・というより、なぜこんなの持ってて私に従ったの?そんな銃が最初からあれば私の脅迫したとき

撃ち殺せばよかったじゃない。白鷺の人間は専守発砲が許されてるんでしょ?」

綾瀬は少し悲しげな表情で綾瀬に尋ねる。

たぶん脅迫したその時から小紫には何らかの意図があることを見透かされていたことに対して喪失感を持ったのだ。

「あなた、神谷隊長と無線で敵機と交戦中に既知感があるって言い合ってたでしょ。私もそれが知りたいの」

小紫は綾瀬の顔を覗き見た。

いつもの綾瀬とは違い、今は小紫から目線を反らす。

それは幼き子供が何か都合が悪いことを隠しているようにも見えた。

それでも小紫は敵の様子から目を逸らすことなく事無く続ける。

「榊原監査官の一件と言い・・・防衛局の動向と言い、たぶん私の予見が正しければ」

バキン、バキン、バキン、ゴォオオオオオォ!

「!!」

墜落したカゲロウ三宅機からいくつもの金属音が聞こえる。

気づけばトラックが数台、既に現場に到着していた。

「ヤバいわね、今兵装を外して安全チェックしている。バラシて基地に持ち帰る気だわ」

周囲が途端に騒がしくなり笛の音などが鳴り響く。

「でも持ち帰ってどうする気なの?敵の基地は先ほどの作戦で半壊したのでは?」

「レオン達の目標はね。本来神谷達の攻めるべきところは敵の応戦でほぼ無傷で退却になったから」

「そうだわ、実際には神谷達の目標が連中の本丸だったわね・・・」

その時、カゲロウから少し離れた場所から大きな呼び声が聞こえ何人の兵士が駆けつけて行くのが見えた。

「どうしたんだろう」

「もう少し移動してみる?」

二人は丘の隆起沿いを身をひそめながら歩いて出来るだけ声のある方へ寄ってみることとする。

暗がりでよく見えないが、小銃を構えている人間が数人いるところから明らかに誰かを発見した様子だった。

「三宅?!」

綾瀬は鼻息荒く、身を乗り出そうとして小紫がそれを制止する。

「落ち着いて、見つかったら身も蓋もないわよ。今は事の成り行きを静観しましょう」

二人がしばらく見ているとやがて担架を持ってきた兵がやって来た。

「よかった、この様子だと生きてる。死んでいる人間に対しての対応ではない」

「だといいんだけどね・・・」

その時、三宅と思われる人間が両脇を抱えられ、担架に乗せられている様子がわずかだが強い光源に照らし出された。

その姿を見た二人は思わず息を飲み、胸を痛め、綾瀬に至っては直視することもできずに顔を伏せた。


三宅の顔は半分以上が焼け爛れていた。


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