第五章 報復 ♯04
”各機急速旋回!”
「行けるか?!」「間に合えぇえぇええ!」
ロックオンアラートから一気に緊急警告に切り替わる。
カタパルトエレベータからせり上がって来た敵機は上空に到達するやいなや短距離ミサイルを
神谷グループの三機に向けて一斉に発射した。
「柊、スパイダーネットだ!怪我の功名!」
「もう発射してる!!」
幸運にも後方にいた柊機はSpーNDを射出するにはベストタイミングかつ発射位置だった。
”柊機、コード:SPND、実行!各機散れ、散れ!!”
三機に向かってきたミサイルは吸い込まれるようにネットへと引き寄せられ、
その一発が電気を帯びたネットへと極限まで近づいてきたとたん誘爆した。
それは二発、三発と連なるが最後の敵機が放った二発がネットをすり抜け三機へと牙をむく。
「くそぉおおおおおお!」
アラート警告は鳴りやまない、MFDは真っ赤な警告表示に染まっている。
ドォオオン!
「誰!?大丈夫なの!?」
柊が無線で叫ぶが応答がない。
一間が空き、三機が態勢を立て直したときそれは明らかになる。
燃えている。
三宅機のコクピット、グラスコクピットが燃えている。
直撃は免れたもののミサイルの爆炎は三宅の機体を襲ったのだ。
「ーーーーーーアアアアアアアアアアアアア!」
三宅の絶叫がまるで辺りに日々渡るようにこだまする。
”三宅!消火剤を撒け!どうした消火剤だ!・・・なぜ実行しない、カゲロウリンクは?!”
状況を把握したゼロ管制室が必死に訴えかける。
「電気系統がやられてるのよ!三宅、今そっちに行く!」
”駄目だ!状況を最優先しろ!神谷止めろ!”
管制室は既に慌ただしく、情報の把握に追われて混乱しつつある。
「駄目だ、ああなっては綾瀬は誰の言うことも利かない・・・
くそ、仕方がない。ゼロ、三宅の機体リンクはこちらに回せるか?!」
”無理だ。こちらではもはや三宅機はロストになっている!!
三宅機、バードオブスカイ(戦闘不能)、繰り返す、バードオブスカイ(戦闘不能)”
苦渋の決断を迫られた神谷は感情に身を任せて叫んだ後、三宅機の背後に付いて
僅かにその尾翼をバルカンで撃ちぬいた。
「隊長?!あんた何してんの!」
気でも狂ったのかと柊が叫ぶ。
「向こうは緊急脱出も利かない、尾翼を落として出来るだけ緩やかに下の海沿いに不時着させる。
スピードは落ちているんだ、出来るかどうかわからんがこのまま見殺しにするわけにはいかない。
三宅、聞こえるか?!もし聞こえていたらお前の機体は今ゆっくりと推力を落としている。
操縦桿をそのまま握って微動だにするな!なら助かる・・・そう信じろ!!」
三宅機はモクモクと黒煙を上げながら高度を急速に落としていった。
敵は撃墜したとみなし今度は柊と神谷に襲い掛かる。
「こいつらっ!!ふざけやがって!!!」
柊は怒りに身を任せて、トリガーを引く。
”柊機、コード:M-Scatter、実行!”
だが闇雲に撃った柊のマイクロミサイルは宙を舞うばかりで敵機に当たることはなかった。
「柊落ち着け!!今は踏ん張り時だ。レオン、そっちは春野と対応できるか?!」
「対応も何もやるしかないだろう。春野、ついてこい!」
「そ、そんなどうしよう、わ、わたし・・・」
春野は三宅機が堕とされたショックを隠し切れない様子だった。
「しっかりしろ貴様が主人公だろうが!ホープをのし上がってきた気持ちを持て!」
「うううっ!」
レオンに叱責され、春野は自ら奮い立たせ敵地へと突っ込んでゆく。
そんな中、進路を変えた綾瀬のカワセミカゲロウが渦中へと急ぐ。
その時、今まさに地へと落ちる直前の三宅機を目撃した。
三宅機はこのままでいくと崖沿いへと直撃コースを取る。
「三宅!左に操縦桿を傾けて!!お願い!」
綾瀬が思いのまま叫ぶ。
だが三宅機は微動だにしない。
(お願い、神様っ・・・・・)
そして崖に追突する寸前、三宅機からミサイルが発射される。しかも全弾。
その反動で三宅機は大きく期待を反らし、砂浜に左翼が突き刺さるように不時着した。
「助かった・・・よかった・・・三宅、後で必ず迎えに行くから!」
綾瀬機は出力を再び前回にし、敵地へと突っ込んでいった。
「似ている・・・この状況・・・」
神谷は敵機に追われている中でも頭の中は異様なほど冷静で頭の中はある思いでいっぱいだった。
「似ているってこの状況で何言っているの?!」
柊は状況を加味しない神谷の台詞に憤りを感じ叫ぶ。
「柊、この状況似てないか?」
「似てるって何に?!」
いいながらも柊は隊をなして迫るカゲロウもどきに健闘する。
既に飛び立った数機の敵は柊に撃ち落されている。
柊機も元はカゲロウVOLT機の為カラス機搬入の際、予備パーツでスペックアップされていた。
そこに、アラートがなる。
「くそっ、上かぁ!」
柊機の遥か上空から一直線に敵機が2機迫る。
”敵機ミサイル発射。柊機回避せよ!!”
(くそぉおおおおおお!)
バァン!
「んなぁ?!」
直ぐ傍で聞こえた爆音に思わず柊が気の抜けた悲鳴を上げるが機体は無事だった。
直後、前方を赤い尾翼のカワセミカゲロウ・綾瀬機が横切る。
「打って出るよ!柊は後方援護に」
「ふ、副隊長?!ちょ、ちょっと貸しにしたつもり?!」
「何でもいいわ!今はこいつらをぶちのめす」
ダアァアアアアアアン!!
”綾瀬機、コード:GP3、実行”
綾瀬機の放った爆導索は上空を飛び交うカゲロウもどきを瞬く間に巻き込み爆発してゆく。
敵機は悲鳴のような轟音を上げ次々と荒れ果てた地上に墜ちてゆく。
その際綾瀬機のすぐ傍を撃墜された敵機が通り過ぎてゆく。
その間際綾瀬はコクピットに目が留まった。
(・・・・・・マジなの?!)
「綾瀬、お前も感じるかこの既知感」
「ああ、ええ感じるわ。でも今は状況打破が先」
神谷の問いに綾瀬は一瞬のためらいののち賛同する。
そこに管制塔、ゼロもとい海堂より連絡が入る。
”全機傾聴せよ。今防衛局より連絡が入りこれよりいまお前らが相手しているカゲロウもどきは〝蜃気楼″
と呼称する。シンキロウはカゲロウと同能力との分析が防衛局より情報が入った。つまりはのっている人間の腕次第だ。
俺はお前ら播磨熱風隊の右に出る乗り手はいないと考える。状況は必ず打開出来る!気張れ!”
「気前のいい事言うのだけは一人前じゃないうちの司令官?」
「腐るんじゃない柊、敵機の数は確実に減っている。自信を持て!」
神谷も柊も既に兵装のほとんどを使い切り、後はわずかな弾薬を残すのみだ。
その時、敵陣営の西側から轟音と黒煙が上がる。
どぉーーーーーーーん!
「こちら、カラス。目標への爆撃に成功したが一部取り逃した、追うか?」
”上出来だレオン、もう放っておけ。取り急ぎ春野と一緒に神谷達に合流するんだ”
「了解だ。春野、行くぞ」
「は、はい・・・」
無線から聞こえる歯切れの悪い春野の声。
そしてある一部のフレーズが神谷の脳裏に焼き付く。
(目標は敵施設の爆破のはずだが”一部を取り逃がした”?)
春野のいつもとは違う低い声色に神谷は更に懐疑心を募らせた。
バン、バン、バン!!
軽い音とともに如として上空から放たれる三色の花火のような光、信号弾だ。
そしてこれは退却を意味する。
「神谷?!なんでよ?!」
信号を見た綾瀬はすぐさま異を唱える。
「目標は達成した。全機帰投する、いいなゼロ?!異論はないはずだ!」
「駄目っ!三宅は不時着してる!絶対生きてる!今助けに行かなきゃ!!」
「----綾瀬!」
「!!!!!」
今まで聞いたことのない、神谷の叫び。
綾瀬はその時神谷の気持ちを察した。
きっと誰よりも退却したくないのは隊長なのだろうと。
”了解した。播磨熱風隊、Echo Zero to Command(状況完了)各機帰投せよ”
「・・・・・わかったわ。綾瀬機帰投します」
「三宅・・・生きててよあのスケベ野郎」
綾瀬を皮切りにそれぞれが急速旋回し戻ってゆく。
だがその綾瀬の目には未だ青い炎が燃え盛っていた。




