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播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
第五章 報復(ホウフク)
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第五章 報復 ♯03

強襲から一夜明けたゼロ基地、地下格納庫にて。

「これが、カワセミカゲロウかぁー尾翼と両翼の先端が赤いのはやっぱり綾瀬のご希望かぁ」

三宅は配備された現在再調整中のカワセミカゲロウを嘗め回すように凝視していた。

「あんまりじろじろ見ないでよ。気持ち悪い」

「き、気持ち悪いってなんだよ人を変態みたいに!」

「嘗め回すように見るんだから十分変態でしょ。ナメナメの兄貴」

「んなぁ?!」

新機体に群がる連中をかき分け、柊と春野が綾瀬たちのもとへとやってくる。

「しかしまあ、隊長も舐められたもんじゃない?よりにもよって副隊長機が先に搬入されるんだから。そう思わない?」

柊はいつものようにイヤミったらしく綾瀬に問いかける。

「言うな柊、実際戦績に関しては綾瀬の方が上で

俺はあくまで経験上を汲み取って隊長に抜擢されているだけに過ぎないんだからな」

カワセミのコクピットに乗せてもらっていた神谷がひょこっと顔を出す。

「あら、そうかしら。状況判断の成績はあなたの方がずっと上じゃない?」

「そりゃそうだ、誰彼構わず突っ込んでいく綾瀬お嬢様には隊長は荷が重いからな」

「あーレオンだ!あんたこの間の状況何なの?!もうちょっと気合い入れなさいよってかもうそろそろ春野独占するの

止めなさいよ」

柊がレオンを見て怪訝な顔をする。

「まあそう目くじら立てなさんなって、俺も今日から熱風隊の”メイト”だぜ。仲良くしよう・・・ぜ!」

そういうとレオンは後ろを向いている春野の尻房を鷲掴みにした。

「ぎゃー!!」

「あんた・・・またぶっとばされたいの?!」

春野は悲鳴を上げて綾乃の背後に逃げ込んでゆく。

レオンは気にも留めずに高笑いした。

「いやいやいや、ちょっと待て!おいレオン、お前今熱風隊のメイトとか言ったな?テストパイロットとやらは?」

三宅は驚いた顔をしてレオンに詰め寄った。

「カラスの実戦経験データを収集した時点で終了だ。その成果もほれ、このカワセミがいい証拠だ」

「嘘、まじかよ・・・」

全員が怪訝な顔をしてレオンを見つめる。

「そんな顔するな。出会いはどうあれ、俺は今このゼロ基地に一目置いている。俺の親父は軍人、空軍パイロットだ。

ここにいれば存分に腕を磨くことが出来るからな。まあ、本来なら着任早々俺が隊長になるのが基本だが、

ここはひとつお前らの顔を立てようじゃないか」

そういってレオンはまた高笑いをしながらカワセミカゲロウの尾翼の方へと行ってしまった。

「はあ、あいつがメンバーなんて・・・悪夢だわ」

綾瀬は溜息をついて、コンテナに腰掛ける。

そこに神谷がコクピットを降りて歩み寄ってくる。

「レオンは何かいきり出したら俺が止めに入る。任しといてくれ」

「あら、たまには隊長らしいことも言うのね」

綾瀬はあえて目線を合わせず静かに笑った。

「まあな・・・その、綾瀬にいつまでも暴力振るわせる訳にもいかないしな・・・」

神谷が少し照れ臭そうに言うのを柊は見逃さなかった。

「おや、おや、おやおやおやぁ~何やらいいムードですなぁ?ここにきてお二人の距離が急接近ですかぁ?」

「ば、ばか言ってろ!」

神谷が軽く柊をあしらっていた時、如月教官から放送が入り全員は足取り重く訓練室へと向かっていった。


訓練終了の夜のこと。

ゼロ基地のパイロット達は二班に分かれてそれぞれミーティングを受けることになった。

今、このミーティングルームには播磨熱風隊と豪語するいつもの面子。

神谷、綾瀬、三宅、柊、春野、そしてレオンが集められていた。

「正式配属・・・ですか?」

神谷の疑問に如月教官がモニターをポインティングディバイスでマークする。

「そうだ、いままでは播磨熱風隊というのはいわゆる周りからの通称であり、正式部隊名ではない。

それをこれまでの実績を踏まえ防衛局より正式に承認、認可される。

正式名称は播磨第ゼロ区前哨基地・航空防衛局所属第一播磨熱風隊だ」

「舌噛みそうな名前だな」

三宅は舌を出してふざけて見せる。

「という事は隣に集められているノボル達のメンバーは第二・・・」

「そうだ、第二播磨熱風隊だ。そのほか新たに配属されたホープ達はそれぞれ適性を見ながら適宜配属される。

お前たちがしっかり面倒見るんだ。それがのちの第三、第四になる・・・はずだ」

そうは言うものの如月の表情は曇り、歯切れの悪い物言いだった。

その表情を汲み取った神谷が如月に心配そうに尋ねる。

「どうしたんです、何か・・・懸念材料でもあるんですか?」

「いや何、どうも急だなと思ってだな。播磨熱風隊の防衛局組み入り、

新機体の連続投入、しかも予算、物品増強ときたもんだ」

腕を組み柄になく考え込む如月。

しかし、そんな如月とは裏腹に三宅が意気揚々と声を上げる。

「おいおい、教官今、物品増強って言ったよな!?ということはさ、水の配給制限とか緩和されるんじゃなねーの?!」

「相変わらず貴様は卑しいな、水なんてガバガバ飲むのもんじゃないぜ」

レオンは椅子の前足を上げブラブラ揺れながら呆れている。

「白鷺出身の人間がなんか言ってんぜ。いいよなぁ何でも際限ない奴はよぉ」

「何言ってんだ。俺も小紫監査官も、ここに来てからはさほど優遇処置など受けてない。白鷺だからと言って

何でも優遇されると思ってんじゃない。大体、ここが落ちれば白鷺は窮地になるのは明白なんだ、それで

ワガママなんか言ってられるか」

意外であった。

三宅は小紫が缶詰の特別配給を受けていたのを見ていたものだからてっきりレオンも優遇されていると思っていたが

そうではなく、ここではあくまで立場に則っている事に意外だと感心した。

「やめろお前ら・・・とはいうものの、確かに水も食料も・・・まあ味は保証しないが不満は湧かなくなるだろう。

しかし、これからどうなる事やら」

そこに春野が恐る恐る挙手をする。

「どうしたの春野?まさか早速なんか食べたいというんじゃない?」

柊が後ろから春野の頬を引っ張ってもてあそぶ。

「ひ、ひがぃます~。ううっ、その、もしかして近々大きな戦局が待ち受けているんじゃないでしょうか?」

「春野何故そう思う?」

綾瀬が春野に問う。

「だ、だってですよ?カラスカゲロウで情報収集してから、なんかいろいろ変ですよ。

男の監査官さんスポーツカーで”ドライブ(処刑)”行っちゃったりいきなり敵が強襲してきたり、

副隊長の新機体が急配備されたりして・・・それで今日ですから」

「まあそうだな、流れ的に言っても防戦一方だったこちらが情報戦に打って出た途端の急展開だ。

さすが真面目な主人公、目の付け所がいいな」

如月はワザとイヤミったらしく春野にふる。

「だから違いますって~」

からかわれる春野を他所に、神谷はレオンにそれとなく尋ねた。

「レオンいいか?防衛局に送ったハッキングデータってのは、そんなにヤバいのか?」

レオンは表情を変えることなく、宙を見上げたまま言った。

「詳細は知らん、データを解析することは許されずそのまま白鷺に送らなければ背任行為とみなすと釘を刺されたからな」

「白鷺出身のレオンですらか・・・やはりあの”カゲロウもどき”と関係あるのか?」

レオンは急に椅子から立ち上がるとぐっと背伸びをして肩を回すとふと呟く。

「・・・お前ら、あんまり白鷺の言うことを信用するんじゃないぞ。奴らも一癖二癖ある奴だ」

そういうとレオンはペットボトルを持って部屋を出ていった。

「信用するなってどういうこと?」

綾瀬がレオンの台詞に疑問を投げかける。

「・・・あいつ、もしかしてこっそりデータ見たのか?」

その場に残された一同は何やら基地に取り巻きつつある不穏な空気に不安を隠しきれずにいた。


一か月後。

山岳地帯の山を低空飛行で縫うように飛行する三機のカゲロウ。

そしてそこから西の方角、同じく山岳地帯の山々を飛行する三機。


「すごい出力だ。綾瀬、よくこんなもの手足のように動かせるな」

神谷はまだ握りなれていないその操縦桿をぎこちなく動かす。

「レスポンスのズレをカゲロウリンクで意識すればなんてことないわ、後は”慣れ”よ」

「あのお嬢様が”慣れ”とは意外だな。意外ときっちり指導なさるのかと思ったが」

レオンは複座にAIコントロールシステムを搭載したカラスに載って軽く一回転する。

「レオン目立つようなことはやめて」

「悪い悪い、体罰は御免被るぜ」

綾瀬は目視でレオンのカラス機を眺める。

「神谷、そっちはどう?」

「順調に航行中だ。よし、もうすぐ現着するからもう一度整理するぞ。俺達第一播磨熱風隊は

二手に分かれて空、地上部隊両勢力と思われる敵対勢力を分散して強襲する、第二播磨熱風隊は現在ゼロ基地に向かっている

敵対勢力を迎え撃つ。向こうは守備に関しては無防備、チャンスだ」

新型の神谷のカワセミカゲロウが先陣を切る三機は高度を上げた。

「そんなにうまくいくもんかなぁ、敵の勢力っていっても結構多いんでしょ?」

「てか第二は大丈夫なのかよ?状況終わって帰ってみればベッドがありませんでしたぁってのは勘弁だぜ」

柊や三宅が神谷の横について愚痴り出す。

”こちらゼロ、全員、私語はもうやめろ。もうすぐ作戦宙域に入る、綾瀬班は地上掃討準備をしろ、今回の副兵装はより強力なものだ。失敗は許されない。あと、三宅と柊、お前たち境から何買った?”

オペレーターが声色を変えて問いただす。

「くぁ、もうばれてやんの。・・・俺はロケットランチャー。柊はなんだっけ、なんか難しい奴」

「SpーNDスパイダーネットデコイってやつ。デコイの代わりにもなるし尻につかれたときにも頼りになるって・・・

いいじゃん、自分の金で買ったんだし」

柊は不満そうに愚痴るがゼロからは怒号のような声が返ってくる。

”馬鹿っ!言い訳有るか。明らかに積載量オーバーだ、柊。

お前帰りには燃料尽きるぞ。おい境を呼び出せ、少しアイツにも灸をすえておく”

オペレーターを遮り、海堂がイラつきながら無線で叫ぶ。

「嘘でしょ・・・い、いまから引き返すってのは無し?!」

”あるわけないだろう、柊、お前は早々に兵装を使え、特に重量のあるマイクロミサイルは出来るだけすぐに発射しろ。

場合によっては全て消化後戦前離脱するんだ”

オペレーターは溜息をつきながら仕方なく譲歩案を提示する。

「わ、わかったわよ・・・ご、ごめんなさい」

「柊、帰ったら反省会だ。全員いい、まて・・・アラート?!」

神谷のMFDからロックオン警告が表示される。

「え、どこだよ?!宙域には敵影のかけらも無いぜ?!」

三宅が必死に索敵するがそれらしい機影は360度皆無である。

その時、もう方班の綾瀬が叫んだ。

「神谷!下よ、地下だ!」

その時、三機の後方より次々と機影が急上昇してきた。


「これは・・・カタパルトエレベータが!?」


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