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播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
第五章 報復(ホウフク)
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第五章 報復 ♯01

「A8番砲台大破!!続いてB1~3番が稼働していません!!」

「弾が切れてるんだ、おい誰か今すぐB棟まで行けるか?!オペレータと観測係、スマンが行ってくれ。

俺が代わりにオペレータと兼任する」

「指令大丈夫なんですか?!カゲロウは全機出撃しているのですよ!」

「やるしかない、やらなければもう明日は無い!」

司令塔は修羅場と化していた。

榊原の処刑が終わって数日後のこと、それは訪れた。

いま頭上のモニターに映る無数の黒い影。

カゲロウ機に似たそれはゼロ基地への猛攻を続けていた。

「ゼロよりカゲロウ機各機へ、状況は熾烈を極める、出来るだけ連携を密にしながら対応に当たれ。

こういう時こそ独断行動は死を招く。神谷、頼むぞ。副隊長がいない今はうちのエースはもうお前しかいない」

”それは遠巻きにお前だけじゃ頼りないって言われているようなものだな。”

”腐っちゃ駄目だぜ隊長殿。・・・くそっ、三宅機、兵装の弾丸がすべて尽きた。補給を受けたい!”

神谷や三宅が敵機撃墜を何とか遂げるがまだ数多くのUAV及び未確認戦闘機が存在する。

”海堂司令官、愛しの綾瀬副隊長はまだお見えになってないのかい?良ければお迎えにっと、こいつふざけやがって!”

レオンのカラスカゲロウ機は正体不明の機体のデータを取得しようとするがまるで使い魔の様にまとわりつく

UAVに困難を余儀なくされていた。

”春野、あんた自称主人公でしょ?!射撃とその何・・・ハッキングとかなんとかできないの?!”

”無理言わないでください!それとも柊、私の代わりにレオンの後ろに乗りますか?!私は命令じゃなかったら

御免被りますよ!”

”ハハッ、そこは心の中で呟いておこうぜ”

カラスカゲロウを援護するように柊機がUAVにミサイルを撃ち込むが数が減る様子がない。

ドンっ!ドンっ!・・・ピーーー!

「柊機、マイクロミサイル及びバルカン、クリティカルパス!」

”くそっ三宅!ホープの肩持ってないでこっちもてつだっつーの!!”

その時、神谷の機体に部隊外からのコールサインが入る。

”この忙しいときに誰だ・・・境さんか?!”

MFDにはSAKAIの文字、整備長から通信が入るなど今まで無かった事だった。

”こちら神谷機、どうした境さん?!”

「繋がったか・・・急を要する、いいか隊長よく聞け。今現在補給を受けられる緊急滑走路はB棟前しかない。

あそこはよくて二機が限界だ。

綾瀬機を除いた13機全てのカゲロウ機が出てるが弾がない奴が多い。

しかしながらまだ燃料は大分余裕があるはずだ。そこで弾の代わりに”アーム”による兵装補填使おうと思う」

境は各カゲロウ機にデータを送る。

それはカラスのカゲロウ機の受領時に共に送られてきた。カゲロウの追加オプションというべきものである。

カゲロウは基本的に短距離短期作戦を目的として作られている。

故に空での給油・補給が出来ないの使用になっている。

しかしながら近年になり、敵勢力の拡大から長時間の作戦行動も視野に入れなればならないという防衛局の判断により

VOLT仕様のカゲロウ機に限り拡張兵装に多目的アーム(無数の端子がついたフック)を取り付けることになったのだ。

「今、VOLT仕様のカゲロウ機は4機。今受領に向かっている綾瀬機を入れて5機になるが幸い作業は完了している。

そこでだ、司令官?」

境はこの状況でも何ら臆することなく含みを持たせて海堂に振った。無線越しだが。

「地獄の沙汰も金次第と言う訳か?・・・いいだろう、状況が状況だ。

アームに掛ける兵装は既に準備できているんだろうな?」

海堂は苛立ちながら境に言う。

「無論だ今しがたA棟側の滑走路にバケット車を用意した。そこに載ってる。

ただし、アーム自体は反動耐性にまだ問題があるから中古の無反動レールガンだけだ。

ただ回収には地面すれすれを飛んで回収しなくてはならない。だから腕に自信のある奴だけ補給に来るんだ。

間違っても自信のない奴は来るんじゃない。隊長、そこはお前の判断に任せるからな!」

それだけ言うと境の無線はプツリと途絶えた。

”聞いたかみんな?B棟滑走路で補給を受けるのは腕利きの二人、黒井と赤木が行ってくれ。ホープは三宅の指示に従って

飛んでくれ、カゲロウリンクを信じるんだ。カラスはまだハッキング任務を続けてくれ。

後の柊と俺はアーム付きだ、やれるか柊?!”

”やれるかってやらなきゃ皆的になるだけっしょ?!んもーこんな時になんであいつはいないのよぉ!!”

柊は操縦桿を握ったまま天を仰ぎ見た。

”嘆くな柊っ・・・まあだが、俺も気持ちは同じだ”

神谷はかつて耐久性を売りにした流行りの、そして今はボロボロの腕時計を見る。


”綾瀬、小紫監査官。頼む早く戻ってきてくれ・・・”


遡ることわずか、白鷺シェルター搬送地下トンネル内中間地点。

「参ったわね・・・どう、岸本さん?」

「こりゃ難しいな、全然トルクが上がらん。僅かな徐行運転ぐらいならいけるけどな」

煤に汚れながら岸本は下から覗き込む小紫に指でバッテンを示した。

「どうする?まさかゼロ基地が強襲に合うなんて思わなかったし・・・このままだと新型お披露目前に全滅よ」

「全滅とか不吉なこと言わないで」

綾瀬はそういいながらもタブレットで新型カゲロウのマニュアルを食い入るように見ている。

「わかってるわよ、それにしてもこんなことなら今回も空輸に頼るべきだったのかもしれない」

小紫は軽く舌打ちをした。

こうなった事態については今よりやや数日に遡る。

最近になり抜きん出た戦果を挙げるようになったゼロ基地。

ホープ達も無駄に命を散らすこともなく、日々能力の向上が見られた事を好機と見た防衛局はゼロ基地の

防衛強化に打って出た。

その一つが今回の綾瀬機新型カゲロウ・カワセミである。

真っ赤な先端の両翼が眩く光る、VOLT型ファイタータイプ。

出力の向上、作戦稼働率(燃費)の向上に加え、腹面には追兵装ケージに加え、多目的アームも搭載している。

先に配備されたカラス機のテストデータを早計ながらも反映したチューンアップがされている。

しかし、問題が発生した。

ゼロ基地へと運搬する際、先のカラス機が襲撃にあった為上層部はシビアになり空輸を渋ったのだ。

よって普段は整備がほとんどできず放置されているかつての地下トンネルを改修した12トントラックによって

運搬することになった。

それに同行することになったのは毎回の連絡便に携わる岸本運搬隊一同、そして白鷺への報告、顔出しもかねて小紫。

そして、事前講習を受けるため赴いた綾瀬であった。もっとも綾瀬はかなり乗り気ではなかったようだったが。

パンっ!

綾瀬がタブレットのマグネットカバーを勢いよく閉じ、座っていた荷台から飛び降りた。

「小紫さん、ここから行きましょう」

「ここからって・・・すぐそこの中継地点から?!何言ってるの、この上は滑走路はないのよ。

それにこの機体は最終調整も済んでないしカラスの時とは勝手が違うわよ」

小紫は綾瀬の前に立ち、両手を広げ制止した。

しかし綾瀬は降りることなく岸本に上に上がるというジェスチャーをする。

「駄目よ、岸本さんも止めて。今は待機して上の指示を待ちましょう、幸い白鷺に連絡はとれて応援が向かってる。

それまではーーー」

「いつになるかわからないわ、待ってられない!」

綾瀬はそういうと自らトラックの運転席に乗り込もうと歩み出す。

「駄目ったらダメ!そういうーーー」

小紫は言う前に息を飲んで固まった。

綾瀬のストレートが眼前に飛んできたのである。

だがそれは目の前、寸のところで止まった。

「あなた・・・正気?!」

小紫は思わず声を震わせる。

「私はいつだって正気だわ・・・お願い小紫監査官」

暫くの沈黙の後、観念したかのように小紫は溜息をつく。

「あなたが強硬手段に打って出たって報告するわよ。後悔はないわね」

「ゼロ基地の人間に後悔という考えは無い。明日があるか解からないのだから」

小紫は事の成り行きを傍観する岸本たちに合図をし、近くの中継出口へ向けて取り急ぎ出発した。


外気温は46度。凄まじい熱気そして、熱風だった。

綾瀬機のシンボルである赤いリボンがシンボルマークの尾翼が左右に微動する。

出口からのすぐの荒野では折り畳まれていたカワセミカゲロウの両翼が接続され、エンジンがその熱を上げていた。

「・・・いけるわ、最低限の燃料しか積んでないから10分動けば御の字ね」

コクピット内でコンソールを弄る綾瀬はいそいそとパイロットヘルメット・MFDをかぶる。

「ゼロ基地からの速報だと向こうもカゲロウに似た新型機を投入しているらしいわ、私は戦闘機の事はわからないけど

熾烈を極めるはず、心して」

「何してるの、早く乗って」

「・・・えっ?!」

アドバイスをしに来ただけのつもりが思わぬ綾瀬の台詞に小紫は目を丸くする。

振り返れば岸本が予備のヘルメットをいそいそと持ってきている。

「これも複座式なの。あなたがカゲロウリンクを担当しないとこの機体の性能がフルに発揮できない」

「そ、そんな嘘でしょ?それじゃ岸本さん達に頼めばいいじゃない?!」

「トラックと兵装をそのままにしろって言うの?それに白鷺から応援も向かってるんでしょ」

小紫はもう一度岸本達を見る。

彼らはにんまりと笑って小紫にウインクする。

「・・・・・冗談でしょ?」


「い、いやぁあああああ!!!と、飛んで、浮いてる?!、今私浮いてる!!ういて、ういて」

「うるさい、静かにして。初めて乗るホープでも、もうちょっとマシよ」

あまりの小紫の慌てぶりに思わず綾瀬も苦笑いする。

「頑張れよ綾瀬!!」

「ゼロ基地の事頼んだよ!」

「しっかりな、特に小紫さんの事!わははははは!」

「いや、いや、ちょっと待って!嘘!飛ぶの?!こ、ここっこここ」

綾瀬は後部座席で騒ぐ小紫に軽くため息をすると岸本達へ敬礼し、スロットルを全開にした。

ゆっくり上昇していたカワセミカゲロウは一気にジェット噴射し、一気に前方へと飛び立った。


目指すはゼロ基地。

「行かなくては・・・空が待ってる」

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