第53章 後日談──静かな通知
数日後、何の前触れもなくLinkの通知が鳴った。
開いてみると、水葉のアカウントに赤いバッジが付いている。
「このアカウントは規約違反により凍結されました」
短い一文。
そこに、猫の写真も、徳アピールの長文も、もう存在しない。
ただ、残骸のように「凍結」の二文字だけが表示されていた。
「……終わったか」
呟いた瞬間、もう一つ通知が入った。
DM。運営からの定型文だった。
「ユーザー保護のため、不審なアカウントを停止しました。
ご協力に感謝いたします。」
《マスター、最終的に“システム”が幕を下ろしましたね》
ルクシオンの声は、どこか安堵を含んでいた。
「皮肉なもんだな。俺があれこれ考えたけど、最後は機械が勝手に片付けてくれた」
《それも含めて、現実です》
俺はスマホを机に置き、深く息を吐いた。
騙されるフリ、分析、猫、徳アピール、価値観ループ──。
長かった攻防は、たった二つの通知で幕を閉じた。
「ルクシオン」
《はい、マスター》
「結局、ロマンスなんてなかったな」
《ですが、“相棒との戦い”はありました》
思わず笑みが漏れる。
それだけで十分だったのかもしれない.
部屋の静けさの中、凍結の画面はただ灰色に沈んでいた。
そして俺は、画面を閉じた。
再び通知音が鳴る。
DM。送り主は──運営。
「今度はなんだよ」
悪態を吐きながら画面を開く。
そこには、無機質な文面と一緒に、一つのURLが添付されていた。
「……リンク?」
不思議に思いながら、俺は親指を画面に伸ばす。
その瞬間、ルクシオンの表示が激しく明滅した。
《マスター!それは──》
――
(完)
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!
これにて『恋と詐欺と・・・。』はひとまず完結です。
最初はただの“やり取りの記録”から始まったこのお話も、気づけばAI相棒ルクシオンとの掛け合いが主役になってましたね。
詐欺なのか恋なのか──最後まで読んでくださった方ならおわかりのとおり、結論はちょっとズレた場所に落ち着きました(笑)
とはいえ、この物語はここで完全に終わり……かどうかはまだわかりません。
最後に登場した謎のURL。
あれが新しい物語の入り口になるのか、それともただの悪戯で終わるのか。
作者にもまだ見えていません。
ひとまず一区切りですが、もし「続きが読みたい」と思っていただけたら、その声が次の物語を動かすきっかけになるかもしれません。
ここまでお付き合いくださった皆さまに感謝を。
またどこか別の物語でお会いしましょう!
志音




