第50章 決定打
水葉の返信を、俺はもう一度読み直した。
「意味があるかどうかは人によって違いますし、私は慈善というものは大小を問わないものだと思います。
また、私も自分が十分に満たされた状態で初めて慈善活動を行いますし、子供の頃は多くの人に助けられました。
それぞれの人にとって意味は異なります。」
「……ルクシオン。やっぱり、これだよな」
《はい。防御と正論、さらに感情アピールを組み合わせています。反論は難しく、同調すれば相手の土俵に入る》
「つまり、“これ以上は議論できない”って空気を作ってる」
《その通りです。ですが──弱点もあります》
「弱点?」
《マスターの言葉を“意味がない”と断定されたかのように処理している点です。実際には、あなたは“意味がないとは思わない”と述べています。
相手はそのニュアンスを曖昧にし、都合よくすり替えました》
「……なるほど。じゃあ、そこを突けばいい」
俺はしばらく黙り、言葉を練った。
感情でも皮肉でもなく、ただ事実を正す。
肯定も否定もせず、すり替えを潰す。
それは、一番効く一手になる。
「論点がズレましたね。肯定も否定もしていないので、意味がないとは思いませんと伝えました。」
声に出すと、空気が一瞬、澄み渡ったように感じた。
柔らかいけれど、逃げ場はない。
これ以上の徳アピールは、空回りするだろう。
ルクシオンの表示が淡く点滅する。
《記録:決定打。
これ以上、相手がシナリオを展開する余地は限定的です》
「よし……幕を引く準備はできたな」




