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第48章 押し戻される問い
送信ボタンを押した直後、水葉からの返信が届いた。
「おっしゃる通り、それは完全に個人の見解だと思います。人それぞれ考え方は違いますからね。
自分の意見を他人に押し付けるのは全く意味がありませんよね。あなたはどう思いますか?」
「……来たな。反論はせず、“どう思うか”で押し戻してきた」
《分析》
《一:相対化。“それは個人の見解”とラベルを貼り、あなたの発言の効力を弱める》
《二:自己否定風。“押し付けは意味がない”と述べつつ、防御的正論を提示》
《三:再び質問。“あなたはどう思いますか”で会話の責任をマスターに戻す》
「つまり、“否定はしないけど、俺にもう一回しゃべらせる”ってことか」
《はい。これを私は“押し戻し型テンプレ”と呼びます》
「命名すんなよ……」
俺は苦笑した。
けれど同時に、腹の底に小さな決意が芽生える。
そろそろ言葉を曖昧にする必要はない。
はっきりと線を引いておくべきだ。
「ルクシオン。これ以上曖昧に返しても、また堂々巡りになるだけだよな」
《その通りです。今は“線引きの明示”が最も効果的》
「よし、じゃあ結論だ」
俺は画面を見据えながら、声に出して言った。
「意味がないとは思いませんが、迷惑だと思います。」
ルクシオンの画面が淡く明滅する。
まるで「それでいい」と頷いているかのように。




