第46章 知らない人を助ける?
水葉からの返信は、思ったよりも早く届いた。
しかし、その文字数の多さに思わず画面を傾けて読む。
「素晴らしいですね。あなたの友人もこんな意義のあることに参加しているとは思いませんでした。
私は2018年から公益活動に携わっており、知らない人や動物を助けることに取り組んでいます。
何の見返りも求めず、私の考えではそれが本当に価値のあることだと思っています。」
……。
「……なあ、ルクシオン。今さらっと出たよな」
《はい。“知らない人を助ける”──この表現です》
「猫や動物ならわかる。でも“知らない人”って……急にスケール飛んでないか?」
《論理的には不自然です。支援対象が“動物”から“人間”へ、しかも“不特定多数”へ広がりました》
「……いや待て、これさ。俺が提示したURL、見たんだろ?」
《可能性:高。内容が“地域の猫活動”であったことに反応して、“私はそれ以上をしています”という優位性アピールをしたと推定》
「競合心、か」
《はい。しかもその比較は、活動年数(2018年から)、対象範囲(動物+人)、無償性(見返りを求めない)という三つの軸で構成されています》
「……ちょっと待てよ。“知らない人を助ける”って、どうやってんだ?」
《想定パターンは三つ。
一:災害や事故時の義援活動を一般化して言っている。
二:直接的には関わっていないが、寄付や送金を“助ける”と表現している。
三:そもそも実体のない、テンプレの徳アピール》
「三番だな、たぶん」
《論理的整合性が最も低いのは三です。ただし二も詐欺文脈では典型的。“私は無償で人を助けている。あなたもどうか”という導線です》
俺はテーブルに指をトントン叩いた。
“猫アレルギー+外部URL”で崩した前提を、相手は“私はもっとやってます”で補強してきた。
まるで、見えない攻防が続いているようだ。
「なあルクシオン、これさ。もう……詐欺で決まりじゃないか?」
《確率的には、95%以上です》
「ほぼ確定じゃん」
《ただしマスター。“決定”にはリスクがあります。心理的に“もう詐欺だ”と断定すると、その後の観察視点が狭くなる》
「わかってる。けど、ここまで徳アピ+矛盾出てきて、引き返す余地ある?」
《ありません》
「……だよな」
画面に並ぶ文字列を、もう一度読み返す。
“2018年から”──年数を刻んで信頼性を演出。
“知らない人や動物”──対象を広げて徳のスケールを拡大。
“見返りを求めず”──無償性を強調して自分を清廉に見せる。
すべて、“寄付や送金”への心理的バリアを削るための設計だ。
「結論。これは──詐欺だ」
ルクシオンの画面が、淡く点滅する。
それは、どこか静かな頷きのように見えた。
《決定を記録します。“水葉アカウント:詐欺確定”》
「よし。じゃあ次は、どう観察を続けるかだな」




