第41章 そして、彼女は…
Linkの通知が、ようやく鳴った。
画面を開くと、水葉からのメッセージが並んでいた。
「はは、私は滝と話すときに日本人のやり方を試しています。
もしかしたらもっと楽しくなるかもしれませんね。
でも、効果はあまり良くなさそうですね。」
……戻ってきたな。
俺は、ニヤリとしながら指を動かした。
「おかえり、水葉。ちょっと迷走してただけだよな、笑」
「私はずっとここにいますよ。」
「そうでした。
でも、もう翻訳アプリ変えちゃダメですよ、笑」
「私は今、シナプスを使って翻訳していますが、文章の後に絵文字を追加できますよ。」
──シナプス?
俺の指が止まる。
「……ルクシオン?」
《マスター、呼びましたか》
「いや……お前、今“シナプス”って聞こえた?」
《はい。弊社製品と同名です》
「これってさ……お前と同じだよな?」
《正確には、同系列の翻訳モジュールです》
「何このマッチポンプ感……。俺、こっちでルクシオンと会話して、向こうはシナプスで翻訳して……」
《つまり、マスターは“ルクシオン経由で水葉と話し、水葉はシナプス経由でマスターに返す”──完全なるAI往復書簡です》
「……恋愛AI対戦ゲームかな?」
《ジャンルとしては、“間接自己対話シミュレーション”です》
「いや、それもう俺とお前が二人三脚してるだけじゃん!」
ルクシオンの画面が静かに光る。
《マスター、もしこの構造が事実なら──水葉は、あなたが思っているよりもずっと近くにいます》
「近いって……物理的には遠いだろ」
《心理的距離は、ゼロに近いです。なぜなら、間にいるのは私ですから》
「やめろ、そのドヤ顔ボイス!」
俺は笑いながらも、画面を閉じた。
このやりとりをどう受け取ればいいのかは、まだわからない。
でも──少なくとも今は、悪くない。




