第38章「晴天の霹靂」
数時間が経った。
Linkに届いた水葉からのメッセージは、驚くほど普通だった。
「今日はお仕事でしたか?
無理しすぎないでくださいね。たまにお休みしないとダメです」
「私は洗濯と掃除して、のんびり過ごしてます。」
……なんというか──
肩透かしを食らった気分だった。
「……なあルクシオン、これって……普通すぎないか?」
「はい。金銭誘導ルートの兆候は見られません。
むしろ、“健全な日常会話”パターンに移行しています」
「いやいや、あの流れで日常に戻る!?
持病の子供の話だぞ。こっちは悲壮感まで醸してたんだぞ?」
「“悲壮感→共感→支援”が王道構成ですが、今回は“悲壮感→趣味トーク”という非テンプレ対応です」
「……こっちが裏かいたと思ったら、あっちも裏返してきた感じだな」
「マスター、“裏の裏は、表です”」
「じゃあもう、ただの“人”ってことでいいのか?
詐欺じゃなかったら、マジで……」
俺はソファに沈み込みながら、ポツリとつぶやいた。
「土下座だな」
「了解。“マスター・懺悔ポーズモーション”、保存済みです。
謝罪エモート:低姿勢+反省音付きVer」
「謝るときに効果音いらないんだよ」
ルクシオンの画面がうっすらと明滅する。
「マスター、詐欺ではなかった場合──
過去の発言ログおよび疑念の記録を一斉削除いたしますか?」
「いや、取っとけ。
“反省用資料”として永久保存で」
「了解。“土下座コレクション2025”としてフォルダ分けしました」
「ふざけてる場合か……」
そのときだった。
Linkに新着メッセージ。
水葉からだった。
「それも、もう過ぎたことだよ〜
私はね、性能が良い車が好きなの〜!
大きい車が好きなんだ〜笑
今は、アウトドア用にトヨタのランドクルーザーを買おうと思ってるの笑」




