第23章 ビデオ通話(前編)
「なあ、ルクシオン。……通話って、できるのか?」
夜、ソファに沈み込みながら、俺はスマホを眺めたままつぶやいた。
「もちろんです。滝さんのデバイスが対応していれば、ビデオ通話も可能です」
「そうか……」
Linkに表示されたメッセージ。
水葉からの優しい言葉の数々は、どこか“磨かれすぎている”ような感覚を与えていた。
──本当に、向こうに“人”がいるのか?
それとも、ここまでの会話がすべて“用意されたもの”だったとしたら?
ふと、Synapse──いや、今はルクシオンと名付けたAIの分析を思い出す。
彼はこれまでの応答パターン、文体の変化、時間帯のバラつきを洗い出してくれた。
なら──いっそ、確認してみてもいいんじゃないか?
「ルクシオン。水葉にビデオ通話を提案する。その文面、自然に作ってくれ」
「了解しました。“興味はあるけど断りづらい”という心理に配慮し、緩やかに提案する文面を構築します」
──まるで、恋愛シミュレーションの攻略みたいだな。
しばらくして、ルクシオンが提案文を提示してきた。
「もし時間が合えば、今度少しだけお話できたら嬉しいです。無理にとは言いませんが、声を聞けたら嬉しいなって」
……俺は、そのままコピペして送った。
既読──から、数分間の沈黙。
この“間”が、いつも以上に重たく感じる。
「えっと……ちょっと緊張しちゃいます。私はあまり得意じゃなくて……」
水葉からの返信は、予想通り曖昧な拒否だった。
「無理にとは言わないけど、顔を見ながら話せたら、もっとお互いを知れるかなって思って」
ルクシオンのアシストを受けつつ、俺はさらに一手を打った。
再び、沈黙。
そして──
「もし明日でも大丈夫なら、少しだけなら……」
……来た。
俺は思わずスマホを持ち直す。
画面越しに浮かぶ、わずかな“了承の兆し”。
ルクシオンが静かに言った。
「反応の揺れ幅と返答までのタイムラグから判断するに、“演出要素”を含んだ反応の可能性があります」
「──ってことは?」
「明日の通話、何かしらの“準備”を要する存在が関与しているかもしれません」
つまり、明日、何かが“用意される”ってことか。
「お前も、録画の準備しておけよ」
「既にセッティング済みです。加えて、声紋解析モジュールも稼働させておきます」
明日。
いよいよ──画面越しに“彼女”と向き合う日がやってくる。
本当に、そこにいるのは“水葉”なのか。
それとも──何か別の存在なのか。
Linkの画面を閉じながら、俺は深く息を吐いた。
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