表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/53

第21章 揺れる感情と、届いた言葉

Linkの通知音が鳴ったのは、朝のコーヒーを淹れようとしていたときだった。


「滝くん、おはようございます。最近、少し距離を感じています…。

私、嫌われちゃったのかな?」


──その一文に、俺の手が止まる。


朝の空気は、まだ眠気と静けさを含んでいた。

けれど、その言葉だけが、やけに鮮やかに目に飛び込んできた。


「……これが、今来るか」


Synapseのパネルを見つめながら、思わずつぶやく。


『滝くん、今のメッセージには“感情誘導の兆候”が見られます。

具体的には“距離を感じる”という漠然とした疎外感の訴えと、

“嫌われたのか”という二択思考の強調です』


「そういう分析はいいんだって……いや、助かってるけどさ」


正直、俺の心はちょっと動いた。

──少し、罪悪感のようなものすら、あった。


ここ数日、確かにやりとりは減っていた。

写真の件で、俺が“少し”冷めていたのは事実だ。

でも、それをこうも見透かされてるようなタイミングで言われると……。


「……タイミングが良すぎるんだよな」


俺はソファに腰を下ろして、スマホを握りしめたまま考える。


この言葉は“本心”なのか?

それとも──“次のフェーズへの布石”なのか?


『滝くん、返信案を3パターン用意しました』


「よし、聞こうか。お前なりの“攻防戦”の一手」


Synapseが淡々と読み上げる。


『案1:「そんなことないよ。ちょっと仕事が立て込んでて、ごめん」→感情ケア型』

『案2:「気にしすぎじゃない?」→距離を保つ牽制型』

『案3:「もしかして、また何かお願いがあるの?」→リスク探知型』


「……うーん、どれも微妙に違う気がするなあ」


俺はしばらく沈黙し、思いきって自分の言葉で返すことにした。


「そんなことないよ。ただ、少し考えてただけ。君のことを、ね」


打ち終えた瞬間、何とも言えない妙な気持ちになった。

言葉にしたことで、逆に“考えていた”事実を突きつけられるような──。


すぐに水葉から返信が来た。


「そっか…ごめんなさい、私、滝くんに嫌われたらって思うと、不安になってしまって」


まるで、純粋に恋する誰かみたいな文章だった。


Synapseの画面に、感情分析が浮かぶ。


【感情トーン:謝罪+依存傾向/直近会話文体より変化中】


「変化中?」


『はい。文体がやや“情緒的依存”の傾向へシフトしています。

また、句読点の使い方、改行タイミングにも変化があります』


「つまり……?」


『“感情演出の手法が変わった”か、“担当が変わった”かの可能性があります』


「またそれか……」


彼女は一人なのか。複数なのか。

本当に“誰”なのか──それを考えても、答えは出ない。


でも、俺の感情は確かに反応している。


『滝くん、あなたは“本物”を求めているのですか?』


「……いや、“本物”かどうかよりも……“俺の中でどう感じるか”かもしれない」


Linkの通知がまた鳴いた。


「滝くん、今度、ちゃんと電話して話せたら嬉しいです」


それは、決定打とも言える一文だった。


Synapseの画面が静かに切り替わる。


【緊急判定:重大なステップ進行予兆】


『滝くん、これは“終盤フェーズ”の可能性があります』


「……終わらせたくない気もするし、終わりが近づいてる気もする」


俺は画面を見つめながら、ため息をひとつついた。


──そして、笑っていた。

情が揺れるとき、人は“本物”を見極めようとする。

でも、それが“誰かの演技”だったとしても、自分の心が動いたなら──

その瞬間は、紛れもなく本物だったのかもしれません。


読んでくださってありがとうございます。

この物語が少しでも心に触れたなら、評価やリアクション、感想をいただけると励みになります。

引き続き、どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ