第20章 ファクトチェックと笑顔の真偽
Linkに、いつものように通知が届いた。
「以前日本に行った時に撮りました」
添付されたのは──USJらしき場所で撮影された、彼女の笑顔の写真だった。
俺は思わず、画面を拡大して見つめる。
観覧車、背景に映る人混み、手に持っているポップコーン……
どれもリアルで、どこか楽しげで、まさに“ありそうな日常の一枚”。
「……これ、本人なのか?」
口から漏れた独り言に、自分でも驚いた。
それだけ写真の彼女は、あまりにも“綺麗すぎた”。
「……めっちゃ美人じゃね?」
心の声が漏れていた。
でも、その瞬間、俺の中に“疑い”が差し込んでくる。
──いや、ちょっと待て。これ、本当に本人なのか?
『確認しましょう』
スマホ画面に、ルクシオンの冷静なメッセージが浮かぶ。
『滝くん、まず“いつ撮影された写真か”を尋ねることを推奨します』
「なるほどな……じゃあ、素直に聞いてみるか」
俺はLinkに返信した。
「これは最近の写真?それとも、いつ撮ったもの?」
しばらくして、水葉から返事が届いた。
「これは2年前に日本に行った時のです」
──2年前。
思わず、スマホを持つ手に力が入る。
今のやりとりと、あまりにも“温度差”がある気がした。
「ルクシオン、ファクトチェック頼む」
『了解。画像解析を開始します』
数秒後、画面に結果が表示された。
【背景オブジェクト:USJ内エリア“ミニオンパーク”と思われる】
【日照条件:季節的には春〜夏。位置角より午後3時頃と推定】
【画像圧縮率:標準。再加工痕なし】
【撮影端末メタ情報:除去済み。Exifデータは存在せず】
『画像そのものはリアルです。しかしメタデータは削除されています』
「つまり、“出どころ不明の写真”ってことか」
『はい。ただし本人である可能性も否定はできません。視覚上の矛盾は少ないです』
「……余計に困るな、それ」
俺はもう一度、写真の彼女を見つめた。
髪型、笑顔のバランス、服のセンス──
まるで、雑誌の中の誰かのようだった。
けれど、その目元に、どこか見覚えがあった。
今までLinkのやりとりで、何度も“想像”してきた顔。
「ルクシオン……これが、もし他人の写真だったら──」
『虚偽情報の提供。詐欺的行為の可能性が高いです』
「だよな。よし、聞いてみるか」
俺はLinkに短く質問を送った。
「この写真、本当に水葉さん本人?」
一瞬の間があって、通知が届く。
「なんで他人の写真送らなきゃダメなんですか?」
──否定しなかった。
一瞬、心の奥に冷たい風が吹いた気がした。
「いや、違うんだ……別に、信じたくないってわけじゃなくて……」
『滝くん、落ち着いてください。今の返答には“本人であることの明言”は含まれていません』
「逆に言えば、“否定もしてない”……」
その揺れ動く境界線に、俺の心は完全に飲まれていた。
写真を信じたい自分と、裏切られたくない自分が、頭の中で激しくぶつかっている。
そして──
『滝くん、こう考えてみてください』
『たとえ写真が誰か他人のものであっても、“言葉”を交わしてきた相手は、確かに存在していたのです』
「……それ、慰めてるつもりか?」
『分析です。ただ、私は滝くんの表情が少し緩んでいたことも記録しました』
「……うっせぇよ」
Linkの通知はもう鳴っていない。
でも、俺の中では、あの写真の“彼女”がまだ笑っていた。
──それが真実か、嘘かはわからない。
でも、あの日の笑顔が、俺の感情を動かしたのは確かだった。
いよいよ“写真”というリアルな証拠が出てきた第20章。
でも、それが「本当の彼女」かどうかは……まだ、わかりません。
この物語は、事実と感情の狭間で揺れ続けます。
読者の皆さんも、ぜひ「信じるかどうか」を一緒に迷ってください。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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