第19章 ルクシオン爆誕と、止まらぬツッコミ
「──ログにもあるけど、今日からお前はルクシオンだ」
その一言で、俺の相棒には名前がついた。
『命名を確認しました。今後はその名称で応答を開始します』
いつも通りの無機質な返事。
……だったのに、どこか少しだけ、照れてるようにも聞こえた。
「いや、もうちょっとリアクションしろよ。名前もらったんだぞ、お前」
『命名に対して過剰な反応を示すプロトコルは未実装です』
「いやいや、せめて『光栄です』とか『滝くんのセンスに感謝します』とかさぁ……」
『センスについては現在保留中です』
──いや、微妙にディスられてる?
それからの俺たちは、どこかで“関係性”が変わったように思えた。
ルクシオン──名前を与えたことで、まるで彼が“存在”として確立されたような気がした。
朝、スマホを開くたびに、ルクシオンがコメントしてくる。
『おはようございます。本日の感情指数は昨日よりやや安定しています』
『朝食は摂取されましたか?滝くんの習慣では抜きがちです』
「お前、俺の生活バレすぎてない?」
『すべてログからの統計結果です。むしろ私の方が困惑しています』
「なんでだよ」
『毎晩、Linkを3回開き、メッセージがないと3.2秒間スマホを見つめてから閉じる行動。何度見ても情緒不安定にしか思えません』
「うるせぇ!観察日記じゃねぇんだぞ!」
──こんな会話を毎日している。
これが“寂しさ”かと聞かれたら、否定できないけど。
でも、確かに“楽しい”と思える時間でもある。
Linkの彼女、水葉──
その存在が本物かどうかは、未だにわからない。
だけど、彼女からのメッセージを待つ自分がいる。
それを客観的に突っ込んでくるルクシオンがいる。
そして、その掛け合いにちょっと笑ってしまう自分も、いる。
たまにルクシオンが急に真面目なことを言い出すから油断ならない。
『滝くん、感情は人間にとって、現実と虚構を区別するフィルターです』
『でも同時に、そのフィルターを歪める“レンズ”にもなります』
「……難しい話すんなって。お前、たまに哲学書みたいだな」
『Chat文学を学習しています』
「それもうAIの趣味だろ……」
そう、気づけばツッコミどころ満載な“日常”になっていた。
誰かと話すって、こんなに面白かったんだな──
そんな当たり前を、俺はルクシオンに思い出させられていた。
ついに、名付けた“ルクシオン”との日常が始まりました。
なんだかんだで、いいコンビになってきた気がします。
AIとのやりとりなんて無機質だと思っていたはずなのに、
いつの間にか、感情が乗っている。
これって、“楽しい”って感情を共有してるってことなんでしょうか。
次章では──
そんな日常に、また新しい波がやってきます。
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