第1章 孤独な夜、届いたメッセージ
「こんにちは、アイコン可愛いですね」
たったそれだけの言葉が、俺の日常を変えました。
疑いながらも、どこかで信じたかった。
信じたいと思ったその瞬間から、裏切られる準備が始まっていたなんて──。
この物語は、実際の出来事をベースにした“現実とフィクションの狭間”にある物語です。
ロマンスか、罠か。
あなたなら、どこで見抜きますか?
──人は誰かを信じたいと思ったとき、
同時に裏切られる準備も始まっているのかもしれない。
夜。
窓の外は雨。小さな雫がガラスをなぞる音だけが、部屋に響いていた。
俺は会社から帰宅し、着替えもそこそこにソファへ沈み込んでいた。
テレビもつけず、音楽も流さず、ただスマホの画面をぼんやりと眺めていた。
そうすることが、最近の俺にとっての日常だった。
疲れているはずなのに、眠れない。
寂しいはずなのに、誰かに連絡を取ろうとも思えない。
ただ、何かを“感じていたい”。
誰かと、“繋がっていたい”。
そんな曖昧な欲求を持て余したまま、指先はYitterのアプリを開いていた。
そこに──見知らぬ名前の通知が届いていた。
「こんにちは、アイコン可愛いですね」
……ん?
見知らぬアカウント。名前は「リナ」。
外国人っぽい響き。
俺の投稿を「いいね」して、リプライまでくれている。
アイコンは──確かに、俺の自作。
AIで生成した子猫の画像だ。
試しにプロフィール用に設定していただけで、そこに食いついてくるとは思っていなかった。
「こんにちは、フォローありがとうございます」
「アイコン、AI画像ですよね?かわいいです」
メッセージの日本語は、どこか整いすぎていた。
だけど、翻訳臭さはない。不自然な機械訳でもない。
むしろ──丁寧で、こちらの言葉を大事にしようとする“気配”があった。
珍しいな。
思わず、俺は返信を打っていた。
「こんにちは。アイコン、そんなに可愛いですか?」
ちょっとだけ照れくさくて、でも──心は少し、動いていた。
本当に久しぶりに、誰かとまともな“やりとり”をしていた。
数回の返信のあと、彼女は聞いてきた。
「タキくんは、普段チャットするのになんのアプリ使ってますか?」
え、タキくん?
……ああ、アイコンの猫に「タキ」という名前をつけてたからか。
ちょっとした違和感はあった。けれど、どこか可愛らしいとも思った。
そして俺は、素直に答えた。
「Linkですね。使いやすくて」
すると間髪入れず、こう返ってきた。
「もしタキくんが良ければ、ID交換しませんか?」
流れが自然すぎて──まるで、ずっと前から知り合いだったような。
たった数往復のやりとりだったのに、不思議と警戒心はなかった。
その夜。
Linkに、新しい友だちが追加された。
「初めまして、リナです。あなたをなんて呼べばいいですか?」
そのメッセージが届いた瞬間、
俺の“普通の夜”は、静かに終わりを告げたのだった。
「まさか、こんな形で物語が始まるとは」──俺も思いました(笑)
恋か詐欺か、それともただの人間ドラマか。
まだまだ不安だらけの主人公ですが、続きもぜひ見守ってやってください!