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私、メリーさん。今、警察に追われてるの

作者: 黒髪

 良い子は皆様グッスリ眠る深夜二時。

 ぶーぶーと鳴り響くスマホに表示されるのは知らない電話番号からの着信。

 電話に出るか出ないか迷いながらも、俺は鳴り止まない電子音に耐えきれなかった。


「私、メリーさん。今、あなたが通う大学の前にいるの」


 一度は誰もが聞いたことがある都市伝説。

 その代表格ともいっていい、メリーさんからの電話だ。

 知らない人のために、物語の内容を簡単に説明すると——。

 メリーさんと名乗る少女(または女性)から連絡が届き、彼女の現在地が教えられる。

 それが徐々に自分の元へと近づいてきて、最終的には「私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」と言われ、気付いたときには包丁で刺されるってのが定石らしい。


 で、だよ。

 それが現在——最近一人暮らしを始めた大学生の俺の元に届いたのであった。

 ていうか、激安のオンボロアパートだから、電話音が近隣住民に迷惑じゃないか不安だ。

 特に、隣の家に住んでいる金髪巨乳な女性に嫌われることだけは避けたい。


「何だよ、メリーさんって——」


 俺の返事など無視して、メリーさんと名乗る少女は電話を切りやがった。

 それから数十秒後、俺の元にまたしても、同じ電話番号から着信が!!


「私、メリーさん。今、あなたがいつも使う24時間ATMの前にいるの」


 それだけを伝えると、またしても電話が切れた。

 ていうか、どんなマニアックな場所から電話を掛けてるんだよ。


 そして、数分後——。


「私、メリーさん。今、警察に追われてるの」

「何があった!! 何があったんだよ、何があったんだ!!」

「私、メリーさん。私も知らないの。警察、とっても怖いの」

「アンタは都市伝説上の存在だろうが!! ていうか、人間怖くなってどうするんだよ!」


 俺のツッコミが冴え渡る頃合い、またしても電話が切れやがった。

 で、またしても、ぶーぶーと連絡が。


「私、メリーさん。はぁはぁ……はぁはぁ……今、やっと警察から逃げきれたの」

「警察を撒くって凄いな。どんな身体能力を持ってるんだよ」

「私、メリーさん。これでも昔から影が薄いと評判なの」

「どうでもいい情報をありがとう」


 メリーさんって、そもそも幽霊だよな……?

 普通の人に見えるって、何かおかしい気がするんだけど……?

 まぁ、目に見える幽霊だっているよな、世の中にはさ。


 で、数十分後——。


「私、メリーさん。今、交番にいるの」

「どんな状況だよ!!」

「私、メリーさん。撒いたと思ったのは、警察の罠だったの」

「マンマと泳がされたわけか」

「私、メリーさん。カツ丼出てこないの!!」


 メリーさんはお怒りらしく、テーブルをドンドン叩いている。

 とりあえず、電話越しにでも宥める必要があるな。


「カツ丼は有料なんだよ、メリーさん!」


 電話が途切れた。

 その後、十分後——。


「私、メリーさん。公安の人たちは怖いの……」

「何があったんだよ!! 声が震えてるよ」

「私、メリーさん。もう泣きそうなの。物に当たるのは悪いことなの」

「警察に怒られたんだね、メリーさん」


 電話が切れる。

 その後、三十分後。


「私、メリーさん。迎えに来て欲しいの」

「イキナリだな、おい」

「私、メリーさん。もう悪いことはしないと誓うの」

「どんな悪いことしたんだよ?」

「罪状がこれ以上重くなるのは困るの」

「……残念だが、俺は明日も1限から大学があるんだよ」

「私、メリーさん。それは困るの。保護者がいないと、私帰れないの」


 えっ……………????


「見受け引取人がいないと、私家に帰れないの。もう眠たいのに」

「家族に相談しろよ」

「それはできないの。もう誰にも頼らないと決めたの」

「その志しは高いけど、俺にはガッツリ頼ってるけどな」

「山田は嘘つきなの。もっと俺を頼れと言っていたのに」


 山田ってのは、俺の名前な。

 ていうか、もっと俺を頼れとか言った記憶が……。


「もしかして、メリーさん……?」

「私、メリーさん。そう何度も言ってるの」


 メリーさん。

 俺の家の真隣に住む金髪巨乳な留学生。

 アニメや漫画などのサブカル文化を勉強するために、日本に来日。

 で、現在も必死に日本語を勉強中の超絶可愛い美少女なのである。

 ちなみに、飛び級で大学進学しているため、年齢はまだ十七歳と若い。


◇◆◇◆◇◆


 俺は自転車に乗って、メリーさんの元へと向かった。ペコペコと警察官の方々に頭を下げ、どうにかこうにかことなきを得ることに成功した。

 で、メリーさんはと言いますと……。


「もう警察は懲り懲りなの」


 自転車の後方。

 荷台の後ろに乗って、ギュッと俺を握りしめている。

 背中に当たる彼女の柔らかい二つの果実にドギマギしているのは内緒。


「夜道の一人歩きは危険だって言っただろ?」

「それは知ってるの。でも、深夜のコンビニスナックはやめられないの」

「体重太るぞって……言っても、メリーさんは変わらないか」

「食べれば食べるほどに、おっぱいのほうに栄養がいくの。都合がいいカラダなの」

「女性陣には絶対に言うなよ。お前、嫌われるかもしれないから」

「安心していいの。私は、山田さえいてくれればいいの。山田大好きなの」


 そう呟きながら、メリーさんは俺の背中に自分の体重をかけてくる。

 その結果、自転車のバランスが上手く取れなくなってしまう。

 慌てて、俺は減速して、無事に体勢を取り戻すことができたのだが——。


「ったく……お姫様みたいな容姿だよな、メリーさん」


 二次元の世界から飛び出してきた。

 そんな比喩が通じるのか分からないけど、その言葉通りの容姿だ。

 長くて美しい金髪頭に、男性全員を虜にしてしまうほどの巨乳。

 そんな彼女は眠ってしまったようだ。さっきも眠たいとか言ってたしな。

 それにしても、心底幸せそうな表情を浮かべてやがる


「……山田、大好きなの」

「……俺もだよ」

「コンビニスナックの次に」


 メリーさん。

 絶対、いつの日か、俺はメリーさんを振り向かせてみせるからな!!!!


【完結】

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― 新着の感想 ―
[良い点] メリーさんがとても可愛らしかったです。 「振り向かせてみせる」というオチもとてもいいですね。
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