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カラオケ屋さんのレッドちゃん  作者: 深田おざさ
15/18

再び海斗とレッドちゃん(1)

「お前はお母さん似だなぁ」

 この父親の言葉が嫌味へと変わったのはいつだったか。西山海斗にしやまかいとは深夜0時近く、バイクを走らせながら思った。バイクが地面の凹凸で揺れるたび、昨晩父親に殴られた箇所に痛みが走る。久々に殴られたこともあったからか、なかなか痛みが治まらない。


 一昨日、女性店員に絡んでいる輩に殴られた右頬は赤くなってしまった。それを昨日の晩、父親に見つかって左頬を殴られたのだった。あれほど喧嘩をするなと忠告したのに、父のいう事もまともに聞けんのか、と。そして今日、一昨日の店員に借りたタオルを返しに行くところである。結局傷増えちまったし、何か悪いな。そう思っていると、あっという間にカラオケ屋に着いた。

 いない。彼女はいなかった。その代わりに男が二人。海斗が取れる行動は、二人に聞くか、そのまま帰るか。しかし聞くとしても、二人が彼女のシフトを把握しているのか分からないし、こんな身なりの客にそんな質問をされたら、きっと怪しんで警察沙汰などになるかもしれない。かといってそのまま踵を返して帰るのは、気恥ずかしいと感じた。

「2時間でお願いします」

どちらもできないと判断した海斗は、そのまま店に入ることにした。そういえば一昨日、レッドと中途半端な別れ方したからな、ちょっと顔出すぐらいのノリで…。

「11号室でお願いしたいんすけど」


「どーしたのその顔の傷」二日ぶりに会った幽霊は、海斗の思った通りの反応をした。

「この前のやつに殴られたのと、おやじに殴られたのだ。ま、そんな重くないから大丈夫」

「なんかこぶとり爺さんみたいね」

 なんて言いようだよ。しかし海斗としては、深刻に心配してくれるよりも、こうしていじってくれるような人の方が一緒にいて楽だと感じていた。

「お父さんに殴られるって、お母さんとか大丈夫なの?」

「あー…」

これに答えるには、海斗の家庭環境についてレッドに話すことになる。海斗は今までで家庭の事を話したのは三谷冬彦みたにふゆひこや学校の教師だけだった。

「ま、話したくなかったら無理に話さなくてもいいわよ」レッドはそれを察したのか、一歩引いた。

「でも話して少し気分が楽になることもあるから。ちょうどこういう話って、あたしたちぐらいの関係がちょうどいいのよ」

 いやこいつ、一歩引いたように見せて実はめっちゃ知りたがってるな。海斗はそれをすぐに察した。しかし彼女のいう事も納得できる。深刻すぎる話は仲の良い友達よりも、友人関係ではない第三者にする方が話しやすい。海斗は思い切って話すことにした。

「うちでは完全におばさんとその子どもの姉妹が優先で、おやじはそれを率先してる。だからそれをしない俺にはあたり強いってだけ。だから、そっちは暴力とか受けてない」

「でもそしたらあんたが辛くない?」

「いや」誰にも言うことのなかった不満、というよりも怒りが、湧き出る。

「俺はあいつの事、クソヤローだって思ってるから。こいつはこういう奴なんだなっていう、諦めみたいなもんがある。だから別に対して傷ついてもない」

その怒りは昨晩の理不尽な暴力に対してではない。もっともっと深く、濃いものだ。

「母さんを裏切ったあいつを、俺は一生許すつもりはない」

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