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カラオケ屋さんのレッドちゃん  作者: 深田おざさ
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西山海斗とレッドちゃん(1)

 街灯に照らされた静かな大通りを、一台のバイクが走っていく。8月が近づき、蒸し暑い空気が全身にのしかかってくるような毎日の中で、バイクに乗っているこの時だけはそれを忘れることができる。西山海斗にしやまかいとはある場所に向かっていた。10分ほど走り、目的の場所に着いたのは0時近く。日付が変わる直前だった。彼はバイクをパーキングに止めると、エレベーターに乗る。目的の場所は、幽霊が出ると噂のカラオケ屋だった。


「あっつ」エレベーターの中で海斗はつぶやいた。足を動かして閉じこもった空気を流動させようとする。

 4階についてドアが開くと、広いカウンターがあった。女性店員が一人でぼーっとしている。海斗に気付くと少し強張った顔になったが、すぐに切り替えたのが分かった。確かにこんな時間にこんな奴来たらビビるよな。心の中で謝る。

「2時間でお願いします」なんか、カラオケ来たのめっちゃ久しぶりな気がするわ。高校の初めぐらいに行ったのが最後だっけか。いろいろと考えながら、耳の裏を触る。

「お部屋の方ですが…」

「あ、そのことなんすけど…」

 部屋を勝手に決められる前に遮り、近所の子に勧められた部屋の番号を言おうとする。が、忘れてしまった。うわー、なんだっけ。あ、そーだ。まだ0時過ぎたところだし、起きてるか。その結論に達し、店員に謝って電話をかける。2コールで出た。

『もしもし海斗兄?』

「もしもーし。あれさ、この前言ってたのってどの部屋だっけ」

『11号室ね。忘れないでよー』

「すまんすまん、ありがとな。じゃ、おやすみ」

『ばいばーい。レッドによろしく言っといて』

「へーい」そのまま電話を切り、11号室で、と頼む。

「あ、あの、あそこには…」店員が海斗に何かを言いかける。海斗は何となく想像できた。

「あー、知ってますよ。心配しなくて平気っす」適当に会話を終わらせ、11号室へ向かった。


「よーっす。誰かいますかー?」なんの警戒もなしに、海斗は11号室に入った。冷房とはまた違った冷気が漂っていることに気付く。なんかいるな。海斗には霊感がなかったが、それをすぐに悟った。大丈夫なのかよこれ。

 耳鳴り。何の前触れもなくそれが始まる。金縛り。不格好のまま体が硬直する。すると、視界の前方に赤黒いものがあらわれる。目が合う。左目がやたら充血しているように見えた。

「あら、あんた…」急に女性の声が聞こえる。先ほどの店員のものではない。この幽霊のものだ。海斗は身構えた。何を言われるのか。

「あんたが噂のヤマダくんね」

「いや誰だよ」見当違いのことを言われ、とっさにつっこむ。それと同時に耳鳴りも金縛りもなくなっていることに気が付いた。

「え、違った?じゃああんた誰よ」なぜか少しあたりが強い。

「西山海斗。あんたがレッドだよね」海斗は一応確認する。幽霊にここまで普通に話しかけられる俺ってちょっとヤバいか?

「なんで知ってるの?」どうやらレッドで間違いないようだ。

上原舞夏うえはらまいかってわかる?その子が、レッドってやつ暇そうだから、話し相手になってやれってさ」

「あー!なるほどね!マイカの!」レッドは知り合いの名前が出た途端に声のトーンが上がる。しかしすぐに眉間にしわを寄せて海斗を見る。まさか「あの問題」を舞夏から聞いて敵意持ってんのか…。海斗はつばを飲み込んだ。

「…彼氏?」

「ちげーわ」一瞬だけビビったあの感じ返せよ。海斗は緊張のほぐれと想像と全く違っていた一種の期待外れから大きなため息をした。

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