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遠征

うつ病で更新が途絶えて2年。まだ治ってないですが、久々に書きました。

 その日エリック達は遠征に出ていた。

遠征といっても授業の一環であり、王都から3日程の村が目標である。

モンスターも出るが、生徒でも問題ないレベルである。

「アーサー、火を起こしたぞ」

「ありがとうエリック。飯盒を温めてと」

「すまんアーサー。私が作ると暗黒物質と化してしまうからな」

「なぜそうなるのかが、エリック様の7不思議の1つですよね」

「言ってくれるなイシュタル。私にもわからないんだ」

「でも、エリックにこんな意外な弱点があるとはね」

エレナが驚いた表情をする。

「ふむ。戦の時はどうしていたのだ?」

ツバキが尋ねる。

「全部イシュタルにお任せだ。その代わりその分荷物を私が多く持って行く」

「イシュタルがいなくなったら、餓死するぞ?」

ツバキが忠告する。

「その時は粘るだけ粘って、それでもダメなら腹を切るまでだな」

「剣士としてはどうかとは思うがな」

ツバキは呆れ顔だ。

「皆さん。ご飯できましたよ」

イシュタルがみんなに告げ、エリック達は食べ始めた。


 エリック達は食べ終わり、食器を片づけ、眠る準備を始めた。

テントで皆が横になっていると、アーサーが尋ねてきた。

「エリック」

「ん?」

「エリックは剣で負けたことってあるのか?」

「あるな。むしろ負けた数の方が多い位だ」

「え!」

「どうしたアーサー。驚くようなことか?」

「だって戦えば必ず勝ってきたじゃないか」

アーサーの言葉に皆が同意する。

「言っておくが私に剣の才能はないぞ。師匠からハッキリ言われた」

エリックの言葉に皆が驚く。

「待て待て待て。剣の才能がない!?。あれほど強いのに!?」

ツバキがエリックに疑問を呈する。

「事実だ。才能だけならアーサーやツバキ、イシュタルが上だ」

「ではなぜ私やアーサーはエリックに勝てないんだ?」

「ツバキ。練習量と死線を潜った数の差だ。

ただひたすらに木刀を振って、豆が潰れて手のひらが血だらけになってそれでも振り続けたことは?

木刀を振って気が付いたら朝になっていたことは?

ただひたすらに身体を鍛え、身体が壊死しかけたことは?

常人から見れば狂った修行を前世はひたすらにづづけた。

それは今も続けてるし、戦で数々の死線を潜り抜けてきた。

それが明確な差になって現れているだけだ。

私の実力は普通の修行ならよくて並み程度だ」

「ということは、エリック並みの修行をすればエリックに勝てるということか?」

「ツバキ。死ぬ気か?。ハッキリ言って狂気のレベルだ。途中で死ぬぞ」

「むう。それほどか……」

「エリックが負けたってどういうのなんだ?」

「アーサー。前世のことだが、鹿島神道流、柳生新陰流のような剣聖クラスが創始したものは勝てなかったな。

後、名前も言わずにふらりと修行中の洞窟に来た老人。挑んだが手も足も出なかった」

「エリック様の前世の世界は強い人が多かったんですか?」

「私がいた時代はそこまでではない。100年程前は思想、信条を刀で語り、

剣豪、名人、人斬りがたくさんいた」

「そうなんですか」

「話はこれでおしまい。明日も早いし寝るぞ」

エリックはそう言うと眠りについた。


 エリック達は村までもう少しの所まで来ていた。

「エリック様!。見えてきましたよ!」

イシュタルが指差す方向を見ると、巨大な岩が見えた。

村は巨大な岩に囲まれており、出入口が1カ所だけあった。

「出入口を塞げばモンスターは入ってこれないね」

アーサーが楽観的に言う。

「アーサー。逆に言えば出入口を押さえられたら、閉じ込められるということだ」

エリックは険しい表情で呟く。

先程から嫌な感じが離れないのだ。

そして、クラスメイト達が次々と入ってゆく。

引率の騎士が村人を見つけ声をかける。

「あの……」

「な、な、入ってきたのか!?」

村人は驚愕の声を上げる。

これは尋常でない。エリックは即座に判断した。

「えと、事情を説明してもらえませんか?」

騎士が村人に尋ねると村人は事情を説明した。

約2ヶ月前、巨大なモンスターが現れ、出入口を塞いだ。

モンスターは貢物として若い女性を求めた。

村人達は話し合いの結果、8人の娘がいる老夫婦の家の娘を生贄にすることになった。

そうして娘を食べるとモンスターは去っていった。

以降モンスターは定期的に現れ、娘達を食べていった。

そして遂に1人となり、村人達はどうなってしまうのかと恐れているという。

これを聞いて騎士は生徒達を避難させようとしたが、モンスターは出入口を見張っており、

出ようとしたら即座に出入口に来るという。

その話を聞き全員が青ざめた。

「そのモンスターはなんなんです?」

騎士は村人に尋ねた。

「ヒュドラの特別変異種です。大きさが通常の3倍あります」

村人の返答に騎士は絶望的な表情をした。

ヒュドラでも手に余るのにそれの変異種なのだ。

王都に援軍を依頼し、軍を編成しなければならないレベルだ。

どうする。どうする?

騎士は視線を彷徨わせ、エリックが目に入った。

今、この場で最強戦力は黒獅子だ。

「エリックすまないが……」

騎士が言おうとするのをエリックは途中で遮る。

「言いたいことはわかります。戦えと言うのでしょう?」

「それは……」

「責めてる訳じゃありません。立場が逆だったら同じことを言うでしょう。

しかし、相手の戦力が不明では確実に勝てると約束は出来ません。

その場合ここから逃げる方法を考えて下さい。決して戦わないように」

エリックはそう言うと村人に尋ねた。

「最後の1人の娘から話を聞きたい」



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