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サクラ

 「せいっ!」

アーサーの打ち込みをエリックは防ぐ。

「いやっ!」

ツバキの死角からの打ち込みをエリックは難なく躱した。

エリックは剣道部の指導に来ていた。

マイケル先生からお願いされたのである。

エリックはそれを了承。

そして現在、アーサーとツバキの二人を相手にしていた。


 「あの、すいません」

剣道部のドアが開き、そこからたおやかな妙齢の女性が姿を現した。

和装をしており、手には薙刀を持っていた。

「忙しいところ申し訳ありません。私、武者修行中でして、一手の指南を受けたいのですが」

エリックはマイケル先生を見る。

マイケル先生も困惑していた。

「すいません。ここは生徒が練習する場所なので、武者修行には向かないと……」

「ああ、すいません。こちらにエリック・ローワンさんが時々お見えになるというので来たのですが」

なるほどと皆が納得する。

「私がエリック・ローワンです。武者修行ですか……」

「はい。ぜひ一手の指南をお願いします」

参ったなとエリックは思った。

こうも丁寧に頼まれると断りづらい。

「わかりました。お相手しましょう」

「ありがとうございます。サクラ・フジワラと申します」

サクラは深くお辞儀をした。


 両者とも得物を構え、試合が始まった。

エリックはこの時、サクラの薙刀からうっすらと白い煙が出ているのが見えた。

(何だ?)

エリックは慎重に間合いを取る。

初手はサクラ。

薙刀を横に薙ぐ。

(速い!)

今まで戦ってきた敵の中では、五指に入る速さだ。

回避しきれず服に掠る。

すると掠った部分が凍った。

「魔法を薙刀に纏わせるか、魔法の武器か……」

「正解は前者ですよ。初見で躱した上で武器を推測するとはさすがですね」

サクラは微笑み返す。

「厄介な……」

そう言ってエリックは迅雷の如く一気にサクラの間合いに踏み込む。

(は、速い!)

「上下分離だ!」

「なんの!」

エリックの横薙ぎをサクラは防御する。

「ちっ!」

エリックは一旦距離を取る。

「正統派ですね」

「?」

「エリックさんの剣ですよ。先程の打ち込みでわかりました」

「何が言いたい?」

「私は我流です。戦場でひたすらに腕を磨いてきました」

「それで?」

「エリックさんは才能があり、努力もしているのでしょう。

剣をしっかり学んだエリートです。だから……」

その時サクラの顔が変わった。

「気に入りません。我流がエリートを倒してやります」

サクラはそう言うと、一気にエリックの間合いに踏み込んだ。

唐竹割の一撃を秋水で受け止める。

そこからサクラの連続攻撃が始まった。

エリックはそれを時に受け、時に躱す。


 「なあ、イシュタル。このままだとエリックが負けるんじゃ」

アーサーがイシュタルに問う。

「大丈夫です。サクラさんは勘違いをしています」

「勘違い?」

「見ていればわかります」

イシュタルはそう言って試合に目を戻した。


 「粘りますね……さすがは本流のエリートです」

「……サクラ。お前は勘違いをしている」

「何ですって?」

「お前は地べたを這いずり、手が血に染まる程の努力をしたか?

剣を振って気が付いたら朝日が昇っていたことはあるか?

剣を振れば振るほど己の才能の無さに絶望し、それでも剣を振ったことは?

あきらめの悪い愚直な男が振るう剣。それが私の剣だ。

断じてエリートの剣などと言うものではない」

エリックは刀を鞘に納め、抜刀術の構えをとる。

「そしてこれに至った私の奥義だ。来るがいい」

「……私は勘違いをしていたようですね。

ならば私も奥義でいきます」

サクラも薙刀を構える。

一瞬の静寂の後、双方仕掛けた。

「轟雷一閃!」

「氷雪月華!」

カラン!

サクラの薙刀が切断された。

「私の負けです。ありがとうございました」

「こちらこそ。いい勝負だった」

双方握手を交わした。


 「ところで家に仕官しないか?」

「仕官ですか?」

「正直なところ戦争があるとみている。

その時の為に戦力を強化したいんだ」

「……お受けいたします。これからよろしくお願いいたします」

こうしてエリックは新たな戦力を得た。


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