出産
エリックは病院の分娩室の前を行ったり来たりしていた。
エリザの陣痛が始まったのである。
しかも予定日より早かった。
「落ち着けエリック」
「しかし、父上……」
「男はこういう時でんと構えていた方がいい」
「そうですよエリック。これは女性にとっての戦いなのですから」
「母上……そうですね」
エリックは椅子に座った。
「とりあえず落ち着きましょう。ところで名前は決まっているんですかエリック様?」
「男ならジョージ。女ならシャーロットにしようと思う」
「いいんじゃねえの」
呂布が同意する。
「いい名前だと思いますわ」
シャルロットも同意した。
「しかし、長いな……」
エリックは時間が長く感じた。
「エリック様。こういう時こそ落ち着きましょう」
イシュタルがエリックに話しかけると、赤ん坊の鳴き声が聞こえた。
「!。生まれた!」
エリックが叫んだ。
そして分娩室から医師が出てきた。
「おめでとうございます。男の子です。母子共に健康ですよ」
その言葉を聞き、エリックが一番安堵した。
早速、エリザ達に会いに行く。
「あなた……」
「頑張ったなエリザ。ありがとう。二人共無事で良かった」
「ふふ。あなた。この子の名前は?」
「もう決めてある。ジョージ。ジョージ・ローワンだ」
「……いい名前ですね。あなたに似て勇敢な子に育ってほしいです」
「私はエリザのように心の綺麗な子に育ってほしいよ」
エリックは元気に育つように願った。
エリザが退院し、家に戻ると色んな人が訪れた。
「この子がエリックの子のジョージか。二人のいい所が似ているな」
「陛下自らご足労いただきありがとうございます」
「なに、公爵家待望の世継ぎだからね。しかし、この子は苦労するだろうな」
「……私が黒獅子だからですか?」
「ああ。偉大な父とどうしても比べられるからね」
「……この子には気にせずに育ってほしいものです」
「ああ。そうだね」
ジェームスが家を去った後、アーサー達が家を訪れた。
「うわあ。この子がエリックの子供か」
「エリックとエリザのいい所取りな感じね」
「うむ。可愛いな」
「そういえば名前はなんて言うんだ?」
「ジョージ。ジョージ・ローワンだ」
「いい名前じゃないか」
アーサーが褒める。
「なんというかしっくりくるわね」
「ふむ。育児は気をつけろよ。兄達のようにならないようにな」
「わかってるよツバキ。気をつけるよ」
ツバキの言葉に浮ついた気分を引き締めるエリックだった。
「剣の稽古でもするかアーサー?」
「エリックが誘うなんて珍しいな。どうしたんだ?」
「ジョージに私の剣を見せた方がいいような気がしてな。どうだろう?」
「そういうことならやろうか」
双方とも刃引きした剣を持って来て、模擬試合を開始した。
初手はアーサー。剣を右から左に薙ぐ。
エリックはそれを余裕を持って受け止める。
アーサーはその後、右袈裟、逆袈裟、突きと技を繰り出すが、
エリックは余裕を持って受け止める。
(いい太刀筋だ。強くなったなアーサー)
アーサーが強くなっていることに感心しつつ、エリックはギアを上げた。
左胴、逆袈裟、右袈裟と徐々にスピードを上げていく。
最初は余裕を持って受け止めていたアーサーも、防御に手一杯となっていく。
(やっぱりエリックは強い! 僕も腕は上がっているのに!)
そして一旦両者とも距離を取る。
アーサーは剣を納刀する。
「抜刀術か。それじゃ私も」
エリックも刀を納刀する。
じりじりと双方にじり寄る。
そして双方間合いに入った瞬間、抜刀した。
ガキンッ!
アーサーの剣は真っ二つに折れた。
一方のエリックの刀は無傷である。
「……参りました」
アーサーが悔しそうに呟く。
「いい太刀筋だった。また強くなったなアーサー」
「はは。ありがとう」
「ジョージ。パパの剣を見たか?
ジョージもいずれはパパを越えてくれよ」
ジョージは知ってか知らずか頷いて見せた。