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新しい相棒

 退院したエリックは、違法奴隷にされていたドワーフの店を訪れた。

第六天魔王波旬との戦いで、橘花と桜花を破損したためである。

最低でも橘花程度の刀が欲しかったため、倭国から刀が流れてきていないか見に来たのである。

「店主。失礼する」

「これはエリック様。一体何のご用で?」

「実はこれを見てくれ。これ以上の刀はこの店にあるか?」

エリックは破損した橘花を主人に見せる。

「これは……修復は不可能ですね」

「そうか。これ以上の刀はあるか? もちろん代金は支払う」

すると店主はちょっとお待ちをと言い、店の奥に入る。

そして、一振りの刀を持って戻ってきた。

「最近倭国から流れてきた代物です。名を秋水。私がお勧めできる一品です」

エリックは秋水を抜く。

刀身は黒であり、波打つ波紋は美しさと力強さが同居していた。

エリックの目から見ても、橘花を上回る刀だと理解できた。

「主人。この刀はいくらだ?」

「いえ。お代は受け取れません」

「しかし、主人の生活もあるだろう。これほどの一品、それ相応の代金が必要のはずだ」

「エリック様。私はあなたに助けられました。ですのでそのお礼として受けとって下さい」

「そうか……。すまない。感謝する」

エリックは主人に頭を下げる。

「エリック様の益々のご活躍を期待しています」

主人はそうエリックに言ってくれた。

エリックはここに新しい相棒を得たのである。


 エリックは家に帰って早速秋水を試した。

秋水は今まで使ってきた橘花と違い、剛剣の類の為、最初は違和感を感じた。

しかし、流石はエリックというべきか。

徐々に慣れ始め、1時間もする頃には完璧に使い方をマスターした。

これならばそうそう破損はしないだろう。

凛帝国との戦争も予想される以上、心強い相棒を得たことに感謝した。


 「む。エリック。刀を変えたのか?」

「ああ、ツバキ。橘花と桜花が波旬との戦いで壊れてな。

新しい刀を手に入れたんだ」

「ふむ。見せてもらってもいいか?」

「どうぞ」

エリックは秋水をツバキに渡す。

「む。これは秋水ではないか! どこで手に入れたんだ!?」

「ドワーフがやってるお店で。倭国から流れて来たんだとか」

「エリック! 秋水は倭国の有名な刀匠が作刀した名刀だぞ!」

「そうなのか? いい刀だとは思っていたが」

「エリック。なんでこんないい刀を求めた?」

「……私がいい刀を求めるのは当たり前だと思うが?」

「少し間があったな。どこかと戦争でも始まるのか?」

ツバキの言葉にアーサー達が反応する。

「悪いが軍事機密に関する質問には答えられない」

「その言葉は戦争があると同義だぞ?」

「何度も言うようだが軍事機密には答えられない。話は以上だ」

その後エリックはこの質問に関して、だんまりを貫いた。


 「ふう……」

「あなた。何かあったのですか?」

「凛帝国との戦争のことを思うとちょっとね」

「私がヒュノス王国にいた時からヒュノス王国は、凛帝国から常に脅威に晒されていました」

「そうか……」

「あなた。呂布奉先とは戦わないで下さい」

「呂布奉先?」

エリックの言葉にエリザが頷く。

「私は一度戦場で見ました。あれは人間ではありません。暴龍です」

「エリザが言うほどの人物か?」

「頭のてっぺんから足のつま先まで武でパンパンの女傑でした。

一対一で戦うのは絶対にやめて下さい」

「私は集団でかかるのは構わないが、他の武人が言うことを聞くかどうか……」

「私からの情報として報告してもらうのはどうでしょう?」

「ジェームス皇太子は聞くだろうが、他の国の連中はわからないな」

エリックは首をかしげざるを得なかった。

戦士や騎士という人種は誇り高いものだ。

彼らにすれば、エリザの言葉は侮辱に聞こえるだろう。

エリックは剣でも魔法でも使える物は何でも使う。

卑怯? 誇りなどというものは犬に食わせてしまえがエリックの考えだ。

「まあ、凛帝国との戦争もいずれの話だ。それよりも……」

エリックはエリザを抱き寄せる。

「あ、あなた……」

「今はエリザとこの平和な時間を大切にしたい」

それはエリックの本心であった。


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