表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/54

誕生日

 「うーん……」

教室でイシュタルは悩んでいた。

「どうかしたのかイシュタル?」

ツバキが心配そうに聞いてくる。

「あ、いえ。今度エリック様の誕生日なんですけど……」

「ほう。そうなのか。それでイシュタルは何を悩んでるんだ?」

「エリザ様とも話したのですが、プレゼントが決まらないのです」

「ふむ……。そういえばエリックの趣味嗜好は知らないな。

普段のエリックは何をしてるんだ?」

「そうですね……。主に筋トレや木刀の素振り。

後は魔法の研究と読書でしょうか」

「ならば本を贈ればいいのではないか?」

「それがエリック様は本を買い漁ってて……。

凛帝国、倭国、ハウンズ王国、リオン王国、ヒュノス王国といった外国の本も取り寄せてて、

下手な図書館よりも蔵書してるんです」

「それはまた……。お金はどうしてるんだ? 親の金を使ってるのか?」

「いえ。自分で本を書いて印税で賄ってます。

知っていますか『ロミオとジュリエット』?」

「それはこの前劇場で見たぞ。いい劇だった……。ちょっと待て。

あれはエリックが書いたのか!?」

「はい。他にも『リア王』、『マクベス』といった物も書いています。

もちろんペンネームを使ってですが」

「むー、そうなると本は被る可能性大だな」

「ええ。料理はどうとでもなりますが……。

プレゼントが難しくて」

「ふむ料理か……。倭食はどうだ?」

「倭食……ですか?」

「うむ。そう難しい物でなくてもよければ私が教えるがどうだろう?」

「倭食……いいかもしれませんね! 教えてください!」

「では明日にでも私の家でやろう。エリザも連れて来てくれ」

「わかりました」

こうしてエリックの誕生日までイシュタルとエリザは練習を重ねた。


 エリックの誕生日当日。

エリックは懐かしい匂いで目が覚めた。

この匂い。こちらの世界に来てからは嗅いだことない匂い。

ああ。■■■■であった頃の匂いだ。

エリックは匂いの元を辿った。

そしてある一室で止まった。

ここからだ。そっと扉を開ける。

「お誕生日おめでとう!」

そこにはイシュタル、エリザ、ツバキ、アーサー、エレナがいた。

「ああ。ありがとう。そういえば今日は私の誕生日だったな」

「そうです。それで今日はツバキさん監修の元、特別な食事を作りました」

イシュタルがそう言った先には、赤飯、味噌汁、卵焼き、鮭の塩焼き、

ほうれん草のおひたしといった、和食が並んでいた。

「これは……和食か!?」

「む? 何か字が違う気がするが、そうだぞ」

エリックは急いで座ると、いただきますと言い、箸で卵焼きを食べる。

「……うまい!」

夢中で食べ始めるエリック。

涙を流しながらである。

ツバキはここで不審に思う。

「エリック。箸の使い方がうまいな。どこで知った?」

「それは前世で毎日使って……」

言った途中でしまったという顔をして口を閉じるエリック。

しかし、それを全員聞き逃さなかった。

「エリック様。前世とはどういうことですか?」

「あなた。隠し事はなしです」


 イシュタルとエリザに詰め寄られ、エリックは観念して話し始める。

「……私には前世の記憶がある。日本といって倭国に近い文化を持つ国の出身だった」

「なるほど……。箸の使い方が上手いのはそのためか」

「ああ。ツバキ。そして15歳で天堂無念流剣術を皆伝したんだ」

「なるほど。皆伝の腕前だったのか。道理で強いはずだ」

「ただ、日本は平和でな。剣術で強いことなど無意味だった。

私は市場で働いて日々の暮らしを送っていたよ」

「それでエリック様の死因は何だったんですか?」

「わからん。仕事から帰ってベッドへダイブして起きたらこの世界だ。

神は私に何をさせたいのか。それもわからない」

「元の名前は何だったのですか?」

「エリザ。それだけは霞がかかったかのように思い出せない。

だから今まで通りエリックでいい」

「ふむ。異世界は本当にあったのだな。魔法はあったのか?」

「いや、ない。その代わりに科学が魔法のように発展した世界だった」

「例えば?」

「一発で数万人を殺傷できる兵器とかだな」

「ちょっと待て!? 一発でそんな被害が出る物があったのか!?」

「ああ。実際に二発使われたよ。そこからは持ってるだけで使われなかったけどな」

「ちょっといいかエリック」

「どうしたアーサー?」

「エリックはそれの原理を知っているのか?」

「ああ。なんなら魔法で再現可能だ」

「…………!」

全員が絶句した。

一発で数万人を殺傷できる魔法。

もはや戦略兵器の類だ。

「一応言っておくが都市に使う気はない。そもそも使用する気もない」

「ぜひそうしてくれ」

アーサーは疲れた表情で言った。

「それよりも今は料理に集中したい。久しぶりの和食だ」

そう言ってエリックは料理に集中する。

久しぶりの和食をエリックは堪能したのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ