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021.格差婚は辛いと思いますが、何か?(私には関係ない)

 



「これだっ!!」




 急に閃いた。新商品はカラフルパンプス。つま先はエレガントにシャープなものにして、そこに可愛らしさをプラスできる、アクセサリーで別途、魅力を作りだす。

 これを全部、浅草で揃えよう。老舗のメーカーが少しでも活気づくような、そんなアイテムを作りたい。

 箱・デザイン・靴底・ヒール型・裁縫・・・・。材料は流石に日本製なんて無理だけれど、せめて工程作業は全て浅草でまかないたい。材料を海外から仕入れれば、一万足の材料補填になる!


 昼休み返上で誰も居ない会議室に籠っていた私は、早速社長室に向かった。何時も冷静な私でも、新商品開発の兆しが見えたのだから、心が躍る。福士社長は喜んでくれるだろうか。紗那、良くやったな、とあの満面の笑顔で私を見てくれるだろうか。



 ん。

 何故だ。

 私は何を期待している?



 社長が笑おうが困ろうが、私には何も関係が無い筈。

 おかしい。

 そしてそれを意識した途端、急に体温が上がった。



 絵コンテと資料を抱きかかえたまま、近くのレストルームへ身を滑らせた。

 鏡を見ると、赤い顔をした私が映り込んでいる。


 まずい。まずいぞ。心頭滅却、心頭滅却。


 このまま外に出る訳にはいかないので、その場でルージュでも引き直そうかと思っていたら、二、三人の声が近づいてきた。こんな顔を誰かに見られるのは嫌なので、そのまま奥の個室へ逃げ込んだ。


 しまったなぁ。今やってきたのは、きっと化粧直しをする連中だろう。長くなりそうだ。このままでは昼休みが終わってしまう。



「――どうする? 次の会社」


「えー、やっぱり辞めちゃうのぉ?」


「あんな根暗の黒子みたいな女に福士社長を盗られるなんて、世も末だよぉー」



 どうやら私の事を噂している様だ。

 受付辺りの女性社員のやっかみだろう。

 根暗の黒子は当たっているけどさ。世も末まで言わなくてもいいんじゃ?


 それより、フクシを辞めるつもりなのか?

 たったそんな事で?

 社長が手付になっただけで?(本当は手付になってないし!)

 一万足もの受注キャンセルしやがった鈴木野さんも、色恋沙汰しか考えていない女性社員共も、本当にどうかしている。

 少し前、何かの記事で読んだ。本当にハイスペックな男というのは、色眼鏡でしかものを見られないお飾り女は選ばないのだ、と。

 当然ハイスペックになれば、お金を出せば身の回りの世話はやってもらえるのだ。しかも完璧に。そんな身の回りの世話を、お飾り女には誰も求めていない。それよりも自立し、自力で自分と同等に稼ぐ力=ハイスペックな女子を理想にしているのだ、と。

 言われて納得した。凄い経歴の持ち主の頭のキレる男が、一般の女性をよほどの理由が無い限り(その人自身が好きとか、そういう理由以外で)選んだりしない。ハイスペックは、よりハイスペックなものを選び、更に高みを目指すから。


 いい女というのは、常に外見だけを磨くものではなく、内面を磨く女性の事を言うのだ。勿論最低限の身だしなみの女磨きは当然だが、それだけに頼るのではなく、常に自身が輝くポジションで、自身の課題にチャレンジできるかどうか、だ。

 それは主婦であっても、キャリアウーマンであっても、学生であっても、どんな女性でもだ。自分の立っている立場で、どれだけ最高に輝けるか、それが鍵。



 格差婚は背伸びをしたらした分、自分が辛い思いをするのだ、と。

 若さを失った時、取り残されてしまうのでは、遅い。

 今、私の悪口を吹聴しているのは誰だか知らないが、福士社長が手付になったから(何度も言うが本当は手付ではない)といって、会社を辞めるような女性社員では、次の行先も同じような末路を辿るのだろう。自身という名の飛行機を操縦し、どこぞの御曹司という地点の下に上手く着陸できればいいが。


 とりあえず今の会話で、女性社員の殆どが私を良く思っていない事、更に繁忙期に向けて、誰かしら辞めるかもしれないという情報を入手した訳だが・・・・。新商品開発中に、針のむしろはキツイな。全員の協力体制が必要な時に、ホント、浅岡専務の見合い話のせいだっ!




 しかし、考えても仕方がない。やるしかないのだ。




 何せ、一万足分の受注キャンセルの痛手の上に、材料が一万足分もある状態なのだから。

 たとえ一人になってもやるし、もし私がいる事でこの会社に迷惑がかかるなら、すぐにでも辞めるつもりだ。何処へでも行って、働く事は出来る。スギウラを支える仕事だけが、何も私の仕事ではない。勿論、ずっと携わっていたいというのは本音だけれど。




 それから暫く、レストルームの個室内で散々な私の悪口を聞いた。

 根暗で黒子は恋する価値も無いってか。

 いや、別にあなた達みたいに、私は色恋沙汰よりも新商品開発の方に全精力と命を掛けたいので、社長を堕としたいのなら、どうぞご自由に。

 でも、福士社長はそんな小手先の誘惑に引っかかるような男じゃない。

 それは一年間、彼の傍で仕事ぶりや付き合う相手を見て思う事だ。

 社長がドMだからとか、そういうのじゃなくて。


数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


評価・ブックマーク等で応援頂けると幸いですm(__)m


次の更新は、8/28 18時です。

毎日0時・12時・18時更新を必ず行います! よろしくお願いいたします。

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