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017.スギウラの為に社長と上手くやってくれ!(無理すぎる)

 私が社長と付き合っていなかったらこんな事にならなかった・・・・とか思われていないだろうか。ああ、引き受ける時にもっとこういうリスクがあるという事を理解しておかなきゃいけなかったのに・・・・。考えが及ばず、下手を打ってしまった事が悔やまれる。しかしあの場は、浅岡専務や藤並社長からの見合いさせちゃう猛攻撃を回避する事しか考え付かなかったから。


 あらゆるリスクも、これからは考えよう。

 そして、出来る限り早く偽恋人関係の契約を終了させなければ。


 別の悩み事に半分全員でがん首揃えて考えたが、一万足の受注キャンセルに代わる良い案なんかある訳も無く。

 昼休みが過ぎて、社長の別スケジュールを開始させるためにこのミーティングはお開きになった。





 あああ・・・・胃が痛い。





 取りあえずキャンセルを社長が受けてしまったからには、材料手配のストップを掛けなければならない。今からのキャンセル・・・・出来るかな。しかし、やるしかない。

 海外の材料屋類とスギウラと・・・・それから別の日本国内のパーツを生産する工場、インソールを請け負ってくれている、フクシが懇意にしている会社。とりあえず片っ端から連絡を入れた。

 しかし既にこのオーダーは稼働しているので、一万足分の受注アイテムの用意に入っていた上、オーダーメイドや取り寄せが殆どなので、手配した材料のキャンセルをする事は出来なかった。唯一キャンセルできたのは、スニーカーの紐くらい。材料屋が買い付けるものだけで、正直仕入れ値も安いものだ。他の特殊ソールを始めその他は、全くキャンセルができなかった。


 あとは生地屋。買い付けだから交渉中とのことで、こちらはまだ何とかなりそうだが、一万足分の別の生地を補填で購入しなくてはならないだろうという見解だ。ただのキャンセルはできないと思う。どのみち新商品で利用するから、スニーカーの生地ではどうにもならないけれど、せめて合成皮革フェイクレザーにチェンジできれば、ブーツやパンプスを作る事も出来るし。

 でもなぁ。特注でお願いしたインソールはキャンセル不可だし・・・・。



 あああーもうーどうすんのよおおおー。

 何でキャンセル受けちゃうかなぁ!

 しかも私のせいみたいだし! 最悪だあああー。



 責任を感じる。非常に難しいが、難条件で新商品開発をするしかないだろう。仕方がない。

 本日の業務を終えて社長を会食へ送り出した後、実家スギウラに帰って父に相談を入れた。

 

「受注一万足キャンセルなんて、ふざけた女だな」昼間にかいつまんで説明したが、私から更に詳しい話を聞いて父が怒りの声を上げた。「紗那をバカにするなんざ、絶対赦せんなぁ! しかし一万足キャンセルなんて、福士社長も思い切ったな。よっぽどお前に惚れているんだな」



 そうだ。遂に実家の父の耳にも社長が私と付き合っている事が届いたのだ。



 というより、先日工場に来た時、父に話があるとか言っていた社長が、これ幸いと父に伝えたのだろう。その辺りから、父の機嫌がニコニコ良くなったのだ。そして私が社長に対して冷たい態度を取っている意味に合点が付いたらしく、何でもっと早く言わなかった、とりあえずめでたいのだから、祝いをしよう、という事で、私に初カレが出来た事について、勝手に祝われた。


 もうこうなったら、今更偽装と言い出せない。どうしたものか。


 当面はこのまま付き合っているフリをして、その後、面白みのない女だから、浮気されて別れた、と言うしかないだろう。とりあえずの計画は立てたが、ずさんすぎて果たして使えるのかどうか。



「紗那。く・れ・ぐ・れ・も、福士社長と上手くやるんだぞ! スギウラの為にも!!」



 私の幸せよりスギウラかーい。


 まあ、スギウラが安泰=私の幸せなんだけどさ。



「あのしゃちょうの話はもういいから、新商品の開発、どうしたらいいの? スギウラだって、靴底の材料手配もしちゃったんでしょ? だったらスニーカーよりブーツなら何とかなりそう? ムートンブーツとか」


「バカ言え。スギウラで手配した底の大幅変更も無茶だけど、ムートンブーツをどこで縫製するんだ。だったらまだスニーカーで考える方がいいだろうな」


「無理かぁ。ムートンブーツなら、何とか一万足分ハケさせられるかと思ったけど」


 インソールクッションの入ったムートンブーツは、今でこそ入手しやすくなったが、初めてシークレットソールやらインソールクッションが入ったムートンブーツが販売された時は、それこそ飛ぶように売れたのだ。しかし今は珍しくも何ともないから、そんなに売れない。


 ああ、新しい商品がどしどし発売されて、靴がいっぱい売れていた時代が懐かしい。


 足元のお洒落を気にする人が減ってしまい、量産型の安い靴が主流となった今では、自社ブランドの商品を売るのは、非常に難しい時代となった。



 しかしムートンブーツは冬の鉄板。毎年買い替えるお客様に、フクシの新しいインソールムートンを提案できれば良かったんだけどなぁ。

 確かにお父さんの言う通り、フクシはスニーカーには強いが、ブーツ方面となるとめっぽう弱くなる。しかもムートンブーツの縫製工場は、フクシの取引先に無い。海外に手配するとなると・・・・工場探しから始めなきゃならない。工場に視察に行って、サンプル作って・・・・新規の取引となると、秋の展示会へのサンプル仕上げでさえ納期が厳しい。

数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


評価・ブックマーク等で応援頂けると幸いですm(__)m


次の更新は、8/27 12時です。

毎日0時・12時・18時更新を必ず行います! よろしくお願いいたします。

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