クイズ
なぜ暇なときって暇なんだろうな?
などという、とにかく生産性のない思考を巡らせていた日曜日の夜。
夏子と二人ソファに並んでビールを飲んでいる時だった。
クイズバラエティ番組が始まった。
最近多いよな、こういうの。
やれ頭の体操だ、やれIQがなんだって、実にくだらない。
なんでも、解答者の芸能人が10問連続正解したら300万円もらえるとか。
で、司会のお笑い芸人が訊ねるわけですよー「もしも賞金獲ったらどうしますか?」ってさ。
「ちなみに夏子、お前さ、もしも300万円貰えるとしたらどうする?」
「え、ふつうに貯金するケド?」
「だよな、訓練された貧乏人の発想で安心したよ」
「えっとなに、まさか私けなされてる?」
「ご想像にお任せする」
「ふんだ。そういう雄介はどうするの?」
「え、普通に貯金するぞ?」
「自分でだって貧乏人の発想じゃない」
「未来への投資だと言って頂きたいね」
「カッコつけんなー」
「へいへい。まぁでも、もしもいきなり300万なんて手に入るわきゃねーしなー」
と、俺はチャンネルを変えようとリモコンへ手を伸ばしたのだが。
「ちょっと待って」
夏子に腕を掴まれた。
「なんだよ夏子」
「チャンネル、変えるの?」
「変えるよ。別に楽しくないだろ、こんなん見ても」
「でも、案外面白いかも」
「あのな夏子、憶測だけで喋るな。そんなふわっとした感覚で1時間を無駄にする気かよ」
「どうせ大した1時間じゃないくせに」
「なに、そんなに観たいの?」
「いや、べつにそこまでじゃないけど……」
「じゃあ変えるぞー」
「わっ、違うっ! やっぱ観たし!」
「ならはじめからそう言えよな~」
「な、なんかウザっ!」
結局、クイズ番組を見ることになりました。
【では、第1問──こちらは、小学一年生レベルの問題です。美味しいのに、「くさい」と言われている野菜はなに?】
「『山菜』だな」「『白菜』ね」
「……」
「……」
「えっと夏子、知ってるか?」
「なによ」
「白菜はな、山菜なんだよ」
「いやだからなに」
「だから、菜物いうカテゴリー枠で同じなんだよ。つまり、俺の答えも『白菜』ということにある」
「いやいや、なにしれっと答え訂正してんのっ!?」
「してない。俺も気持ちは『はくさい』だったから。『はくさい』の気分だったからな! ずばり、答えは『白菜』だっ!」
【答えは──『白菜』です】
「っっしゃぁああああ! 一問目くりあー。よゆー」
「……ず、ずるっ」
「いやいやちゃんと答えが出る前に言い直したし? 訂正したし? えーなになに、一文字一句まちがったらダメなんですかーっ!? えーうそうそ、そんなルール僕しらなーい!?」
その後すぐチャンネルを変えられそうになったから、必死に阻止した。
クイズ番組って、意外と面白い。




